(取材・文・インタビュー写真/小野寺亜紀)
「これからも“人間のリアルさ”を追求していきたい」
1900年にオーストリアの劇作家アルトゥル・シュニッツラーが発行した『輪舞』(La Ronde)。人間の普遍的な関係性と欲望を描いた作品は、『ブルールーム』(サム・メンデス演出)というタイトルで、ニコール・キッドマンとイアン・グレンが演じたことでも話題を呼んだ。男女の情事前後の会話をリレー形式で描くこの問題作を、今の東京を舞台に翻案。第66 回岸田國士戯曲賞を受賞した山本卓卓さんの台本、多彩な舞台を手掛ける杉原邦生さんの演出・美術で上演される。
「やっぱり現代に置き換えるなら東京なのかなと。東京にはいろんなものが集まっているので、“今”を見せるにはリアルだと思います」と新たな試みの翻案について分析。これまで福田雄一さん、三浦大輔さんなど様々な演出家と組んできた髙木さんに、杉原さんの作品の印象を聞くと、「時代物にラップを盛り込むなど、あまり観たことのない演出が作品の刺激になっていて面白かった。この舞台もどうなっていくのか楽しみです」と話す。
当初は髙木さん、清水さんがそれぞれ5役演じると聞いていたそうだが、稽古が始まると、髙木さんが8役、清水さんが6役に増えていた。
「Hey! Say! JUMPの東京ドームコンサートを杉原さんが観に来てくださった時、挨拶の帰り際に『あ、そういえばひと役増えるかも』と言われて、『え!?』と思っていたら、さらにもう二役増えていました(笑)。でも8役の挑戦でも大丈夫!という気持ちはできています」。
今は読み合わせの段階だそうだが、「杉原さん、山本さん、清水さんと話し合いながら稽古を進めていて、悩みを少しずつ解消し、楽しみは大きくなっています。杉原さんはステージ上で色々な役を見せる仕掛けを構想中のようで、もしかしたら着替えなどステージ上で行われるかも。まだどうなるのか分からないのですが……」と打ち明ける。
配達員、夫、インフルエンサーなどを演じ分ける難しい舞台だが、「挑戦しないで後悔するより、努力することを選んだ方が自分のためになる」というスタンスの髙木さん。「(8役の)年齢幅が広く、自分が今まで通ってきた年齢の役はそこに寄せられますが、自分自身より年上の役は、しっかり考えないといけないなと思っています。夫(役)はそもそも、僕がまだ結婚していないので、女性に対して付き合っているときと言葉の重みとか違うのかな、と思って難しい。不倫や浮気みたいな感情が恋愛のときとはどう違うのか、結婚している友達に訊いてみたいです」と笑う。
また“情事”については、「人間だけではなく、命をもって生まれたら起こり得ることなのですごく大切」と捉える。「『東京輪舞』は東京のリアルとエロス、10の情事の前後の物語。でもその情事の描写はたぶん作品に出てこないからこそ、すごく言葉が大切になってくると思います。僕は“人間のリアルさ”というのをこれからも追求していきたいと思っていて、この作品でしっかりそれを表現できたら、この先もどんどんチャレンジできるようになるかなと思っています。ぜひ人間のリアル、会話のリアルをこの作品で楽しんでください」。
PARCO PRODUCE 2024『東京輪舞』
東京公演/2024年3月10日(日)~3月28日(木) PARCO劇場
福岡公演/2024年4月5日(金)~4月6日(土) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
大阪公演/2024年4月12日(金)~4月15日(月) 森ノ宮ピロティホール
広島公演/2024年4月19日(金) 広島上野学園ホール
原作:アルトゥル・シュニッツラー
作:山本卓卓
演出・美術:杉原邦生
出演:髙木雄也 清水くるみ