（取材・文／小野寺亜紀）
JR大阪駅直結のエバーグリーンな新劇場
大阪の表玄関、JR大阪駅直結の新しい大型複合ビル「JPタワー大阪」内の西側5～8階を占める「ＳｋｙシアターＭＢＳ」。商業施設「ＫＩＴＴＥ大阪」や大阪ステーションホテルの夏開業に先駆け、3月27日に、オープニングシリーズ第１弾 Ｓｋｙ presents 舞台『中村仲蔵 ～歌舞伎王国 下剋上異聞～』にてスタートする。
1985年、劇団四季『キャッツ』の専用劇場を大阪駅前に誘致したのに始まり、長く劇場運営に携わってきたMBSグループが、2016年に閉館した「シアターＢＲＡＶＡ！」（大阪市中央区）の後継として、時間をかけて進めてきた劇場だけに、ライブエンターテインメントへの情熱が詰め込まれている。テーマは「エバーグリーンな劇場」。常に若々しく、長年愛されることを目指した空間は、劇場に一歩入った瞬間からグリーンを基調とした開放的なロビーが目に飛び込んでくる。壁一面の大きな窓からは、鉄道ファンが思わずシャッターを切りたくなるような眺望や、北梅田の街並みを見渡せる。
ロビーにはモノ作りの町・東大阪の工場に特注したという、丸くてカワイイ椅子が並ぶ。思ったより硬めの座り心地が逆に快適で、見晴らし抜群。ここは1階席とつながるフロアで、奥には100円リターン式のコインロッカーが、大型18個・小型30個並んでいる。
トイレの数にもこだわったそうで、1階席フロアには女性トイレの個室が27室あり、ロビーの階段を上がった2階席には、両サイドに女性トイレが計15室ある。男性トイレも1階席フロアは下手、2階席フロアは上手にあり。もちろんエレベーターやバリアフリートイレも備わっている。
客席は2層式で、1階席が26列、2階席が11列、全1289席。センターブロックは千鳥配置になっていて、どの席からも観やすい劇場空間となっている。実際、2階席の最後列に座っても舞台との一体感を感じる近さで、間口も広すぎず狭すぎない印象。残響時間は空席時約1.3秒、満席時約1.2秒だそうで、音響のクオリティにも妥協がない。客席の階段の歩幅に差をつけず、同じリズムで歩けるようにしたのは、観客に配慮したのはもちろん、客席降りで演者が通路を駆け抜けることも考慮してとのこと。
客席の前後幅は、客席と舞台の距離が遠くなりすぎるのを避けるために標準サイズを選択。ただ様々な工夫が施されていて、あとから着席する人が自分の前を通るとき、深くえぐっているひざ掛けに自分の足を少し曲げてすべりこませると、いちいち立たなくてもいいように設計。背もたれは腰のあたりを包み込むような膨らみがあるので、腰クッションをしているようなフィット感。座面は先がスリムな造りになっており、膝裏を圧迫しないので長時間座っても足が疲れにくいという。
舞台はプロセニアム形式で、脇花道がありこれが結構な広さ。オーケストラピットを設置する場合は、客席前方列を92席減らして対応する。舞台床は束立て式床で、全面どこでも取り外すことが可能。奈落は3.1メートルあり、舞台面の好きな位置に床下からの階段や盆、セリを設置できるという自由度が魅力だ。
バックヤードも十分な広さで、舞台袖からビルの1階に直通の巨大な搬入用エレベーターも備えている。劇場設計にあたり、舞台監督や照明スタッフなど幅広い人々に要望を聞き、会議を重ねた結果が細部に反映されているそうだ。
楽屋はすべて舞台と同じフロアにすることにこだわり、大小9部屋を用意。大部屋は大きな鏡張りで、稽古もできる広さだ。「楽屋１」「楽屋２」はトイレ＆シャワーが完備されていて、ホテルの一室のようなプライベート感のある雰囲気。これならゆっくり寛げそう。
楽屋が並ぶ廊下幅は広くとられ、ラウンジスペースもあり、着到板は特注したというこだわり。衣裳・床山部屋は下手舞台袖すぐに位置し、広々としている。あらゆる面で、出演者にとっても使い勝手抜群の劇場なのではないだろうか。
「まずは（劇場として）離陸することが大切。今後は自主公演にも力を入れ、ジャンルにこだわらない演目を発信していきたい」と語った村田元支配人。オープニングシリーズには『カム フロム アウェイ』（4月4日～14日）、『リア王』（4月18日～21日）など話題作が並び、遠方からの観客を含め、大勢の人々が集まるホットな劇場となるだろう。
「ＳｋｙシアターＭＢＳ」
大阪市北区梅田3-2-2 JPタワー大阪6F
問い合わせ：06-6676-8466（平日10:00～18:00）
※7月の「ＫＩＴＴＥ大阪」開業までは来場ルートが限られるので、時間に余裕をもって訪れて。
◆オープニングシリーズ第1弾
Ｓｋｙ presents 舞台『中村仲蔵 〜歌舞伎王国 下剋上異聞～』
2024年3月27日（水）～3月31日（日）
劇場公式HP https://stm-mle.jp/