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Stage INTERVIEW

『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』で奥深いテーマに挑む!ノゾエ征爾×竜星涼×藤井隆

青年と老婆の出会いに始まる、ユーモアを交えた人間賛歌の物語

「ノゾエ作品にはハナと、笑いと、切なさがある」と松尾スズキさんの信頼も厚い、劇団はえぎわ主宰のノゾエ征爾さん。彼の代表作『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』に、竜星涼さんと藤井隆さんが出演している。派遣会社でピエロとして働く青年と、ある老婆の共同生活を通して描かれる“老い”と“進化”。竜星さん、藤井さん、ノゾエさんが奥深いテーマが潜む本作について語った。
(取材・文/小野寺亜紀、撮影/小野寺亜紀、西木義和(ノゾエ氏が写っている写真))

――今回4度目の上演となる本作の内容について、改めて伺えますか?

ノゾエ:高齢者施設でお芝居をしていた時、ご利用者の方と触れ合うなかで発想した物語です。竜星さん演じる太郎は、派遣でピエロの仕事をして懸命に生きていますが、どうにもうまくいかない。ある日道端のおばあちゃんに手品の花束を渡すとおばあちゃんが家までついてきて……。実は彼女は施設から抜け出してきていたのですが、彼は寂しそうなおばあちゃんを放っておけず、彼の家で不思議な共同生活が始まります。藤井さん演じる太郎のお兄さんは、その状況を心配。おばあちゃんを探す家族、太郎の職場の同僚などいろんな人々が巻き込まれ、ぐるぐると関係が渦巻いていくなか、老いや進化というテーマに触れていく、人間賛歌の物語です。

――竜星さんと藤井さんにオファーされた理由は?

ノゾエ:太郎はコミュニケーションが苦手な青年で、これまではそういうのがはまりそうな方に演じてもらっていたのですが、作品が新しい境地へ行くために、この役とは遠い、とても健やかな明るいイメージのある竜星さんにお声掛けしました。藤井さんの役は今まで僕が演じていたのですが、これもまた、僕ではたどり着けなかった領域があり、藤井さんの突飛なエネルギーや瞬発力、普段持ってらっしゃる優しさが必要だと思ったからです。

竜星:僕は信じられないくらい自己肯定感が高いタイプなので、太郎とは正直正反対なのかなと思うのですが、ノゾエさんが想像のつかない人にこの役を託されたということで、僕が演じる良さ、化学反応をどう見せられるかを課題に取り組んでいきたいです。

藤井:僕はノゾエさんが演じていた兄の役ということで、絶対ノゾエさんの思い入れがあるはずですし、「藤井がこの役で良かった」と思っていただけるよう、命を懸けてやろうと思います。

――竜星さんと藤井さんが感じられた、ノゾエさんの脚本の印象を教えてください。

竜星:ノゾエさんご自身、太郎に近いのではという感じがしました。また、脚本からノゾエさんはとてもユーモアに溢れた方なのを感じて。施設で演劇をされる中で発見されたものを活かそうと作られたという点でもぐっと熱くなり、どんどん本にのめり込んでいきました。

藤井:ノゾエさんご自身が人に対する想いや優しさに溢れている方で、それが台詞にも出ていて、「こういう優しさを忘れていた」とノゾエさんから教えていただけるような気がします。

――稽古場ではいかがですか?

ノゾエ:すでに「僕はここが好きで竜星さんに声を掛けたんだ」というのを実感できる瞬間がありまして。とても嘘がなく、気持ちいいし、理屈抜きで届いてくるので良かったなと思っています。

藤井:竜星くんとは2020年の舞台『大地』で共演しましたが、楽屋で2個入りのパンの1個を、自然に「どうぞ」とくれました。

竜星:そんなことありました!?

藤井:僕がひもじい顔をしてたのか、20歳も年下の子から「おじさん、パン」って(笑)。

一同:爆笑

藤井:竜星くんはそうやってヒョイと飛び越えてくる可愛い人で、その飾らないところが大きな魅力。太郎の抱えているものは非常に難しいから、きっとお稽古で格闘すると思うけど、お兄ちゃん役なので、何かできることがあればしてあげたいなと思います!

――竜星さんはこの作品の魅力をどこに感じますか?

竜星:生きていくなかでは社会に馴染んで進化しなければいけない、とかテーマはものすごく大きい。でもこの作品では、みんなが生きていればぶつかるであろうことを、ユーモアを交えながら描かれているので、最後皆さんがどのように感じ取ってくれるのか楽しみです。黒板とチョークでお芝居を展開していくというのも僕は初めて見ましたし、面白いです。

ノゾエ:例えば電球が登場する時、電球を描き示したりします。感情が描かれることもあります。それは言葉を描くのではなくて、思い自体が身体を通り、壁に痕跡を残し、どんどん積み上がっていくというもの。最終的にこの舞台の世界に何が残って、何が消えていくのか。そういったものが視覚的に広がるというところを目指して、チョークというものを使っています。

藤井:ぜひいろいろな年代の方に観ていただきたい舞台です。年を重ねると体の調子が悪くなりますよね。それはこういうことなのでは?というひとつの仮説を、物語の中でノゾエさんが出してらっしゃるんです。僕はそんなふうに考えたことがなかったので、非常に面白いと思いました。

――最後に、新たなキャストで届ける2023年版の舞台への意気込みをお聞かせください。

ノゾエ:2010年に書いた脚本ですが、テーマは何ひとつ止まることなく、ずっと生き続ける作品だなと思います。これだけ面白い俳優さんたちが集まってくださったなかで、「まずまずでしたね」という評価では許されませんので(笑)、夢中で頑張ろうと思います!

COCOON PRODUCTION 2023
『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』

東京公演/2023年9月10日(日)~9月24日(日) 世田谷パブリックシアター
京都公演/2023年9月30日(土)・10月1日(日) 京都劇場
岡山公演/2023年10月11日(水)・12日(木) 岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場
新潟公演/2023年10月21日(土)・22日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場

作・演出:ノゾエ征爾
出演:竜星涼 藤井隆 青柳翔 瀬戸さおり 芋生悠
駒木根隆介 山本圭祐 山口航太 中井千聖 柴田鷹雄
ノゾエ征爾 家納ジュンコ 山田真歩 菅原永二 高橋惠子

公式サイト https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/23_galapacospacos/
京都公演サイト https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/6584
岡山公演サイト https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/7149
新潟公演サイト https://www.kyodo-hokuriku.co.jp/artist/10336

あのときの感動を、お手元に。
オモシィプレスVOL.3& VOL.17 バックナンバー
京本大我 舞台掲載号

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