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Stage INTERVIEW

小日向文世が三たび挑むスリリングなクリスマスファンタジー  『海をゆく者』

2009年の初演、2014年の再演を経て3度目の上演となるPARCO劇場開場50周年記念シリーズ『海をゆく者』。アイルランドの劇作家コナー・マクファーソンの代表作として「21世紀のクリスマス・キャロル」と評された今作に、日本演劇界を牽引する5人の名バイプレイヤーが挑みます。
キーマンとなる謎多き男、ロックハートを演じる小日向文世さんに、作品の魅力や初演時の思い出、70歳を前に向き合う舞台と人生についてうかがいました。(取材・文/栗原晶子 撮影/増田慶)

「70歳の俳優が揃う芝居なんて、若い頃は想像もしませんでした」

―― 12月から上演される『海をゆく者』の、初演時、再演時の思い出をお聞かせください。

初演時は、とにかくポーカーのシーンが大変でした。実際にカードをしながら進める丁々発止のやりとりがなかなか憶えられなくて……。演出の栗山さんは稽古時間がとても短い方なので、僕らは台詞と格闘しながら皆でよく自主稽古をしましたね。
2009年の初演から5年後の再演は、ある程度それぞれの役が体に沁み込んでいたので台詞の面ではあまり苦労はありませんでした。印象的だったのは、酔っ払っている芝居をしていて、本番中に舞台ツラからすべり落ちてしまったこと。衣装のおかけですり傷で済みましたが、とにかく芝居を続けなくちゃとすぐに舞台に上がったので、お客様には演出に見えたようでした。

―― さらに9年の時を経ての再々演を迎える今はどのような思いですか?

再々演のお話が来た時には、「これをまた演れるの!」と嬉しかったですね。評判が良かったのでまた出来たらいいなという思いはありました。でももし次やることになったとしてもこの芝居は1日2回公演は絶対にやらないからね! とプロデューサーに言ってたんだけど、蓋を開けてみたら1日2回公演が5日間もあるんですよ(笑)。
でもこの年齢になってもう一度同じメンバーで(リチャード役のみ高橋克実さんに変更)、しかも次々と古希を迎える俳優たちで出来るとは……。稽古中の11月にシャーキー役の平田(満)さんが、年が明けて1月の旅公演中に僕、公演が終わった2月にアイヴァン役の浅野(和之)が、その翌3月にニッキ―役の大谷が70歳になるんです。この年齢の俳優が揃う芝居なんて若い時には想像もしなかったですよ。

―― 初演から14年、作品へのアプローチに変化はありそうですか?

いろいろなことを実感するんだろうなと思います。台詞のやりとりをしながら「ああ、歳とったな、こいつ」とかね。だって大谷なんて同じ劇団の同期で、20代の頃に知り合ってますから。皆と再会したら、体の変化や老いをどう感じているか、ざっくばらんに話したいですね。きっと『海をゆく者』の登場人物たちのように人生を考えながら稽古を進めていくんだと思います。

(次ページにつづく)

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