総合エンタメ・マガジン[エンタプレス]

Stage INTERVIEW

二人ミュージカル『ジョン&ジェン』に挑戦する森崎ウィン

「裸で舞台上に立つ感覚に近いです」

『ジェイミー』『ピピン』『SPY×FAMILY』など数々のミュージカルで実力を発揮してきた森崎ウィンさんが、初めて“二人ミュージカル”に挑戦する。1幕は姉と弟、2幕は母と息子という、二人の男女で織りなす『ジョン&ジェン』。ジョン役は森崎さんと田代万里生さん、ジェン役は新妻聖子さんと濱田めぐみさんのダブルキャスト。1幕と2幕で異なる“ジョン”を演じる森崎さんに、これまでの舞台との違いや、稽古を進めるなかでの想いを伺った。(取材・文/小野寺亜紀、撮影/源賀津己)

1995年にオフ・ブロードウェイで初演された『ジョン&ジェン』の日本初演に、ミュージカル界の精鋭4人が集まった。森崎さんは本作のオファーを聞き、「舞台を二人で作るというのは、俳優としてやりがいしかない」と、喜んで引き受けたという。

「今まで僕がやってきたミュージカルは、大きなセットが組まれ、小道具や大道具がたくさんあるなかで見せるものでした。今回は役者二人で、世界観をお客様に想像していただきながら提示していく舞台。そこがとても新鮮です。セットはシンプルですし、裸で舞台上に立っているような感覚に近いです」

演出・翻訳・訳詞・ムーブメントを手掛けるのは、音楽座や劇団四季を経て海外に留学し、国際的に活躍している市川洋二郎。ピアノ、チェロ、パーカッションの生演奏のもと、「ほぼ出ずっぱりで、舞台袖にはけるタイミングがない」という濃密なミュージカルだが、市川の丁寧なリードで充実した稽古期間を過ごしている。

「洋二郎さんはご自分がプレイヤーでもあるので、『こういう気持ちがあるから、こう動きたくなると思うんだよね。だからそこで動いて、ここで止まって。照明が当たるようにするから』というように、一つひとつの動きに芝居の理由をつけてくださるのがすごい。とても丁寧な作り方をしてくださるので、俳優陣は助かっていると思います」

物語の舞台は1985年から現代にかけてのアメリカ。暴力をふるう父親から弟のジョンを守ろうとする姉ジェン。二人の幼少期から青春期までを描く1幕の後、2幕では弟の面影を重ねながら子育てする母ジェンと息子ジョン、親子のすれ違いや人生の問題などが描かれる。

「アメリカの話ではあるけれど、親子や姉弟など家族の問題は普遍的で、万国共通だなと思います。僕も弟がいるのですが、歳を重ねていくと、親や家に対して二人で話すこともあるんですよね。冒頭の姉弟のシーンはすごく共感できるし、2幕の親に気を遣っているジョンも、僕自身外国で暮らし、長男だからと我慢することもあったので、すごく気持ちが分かります。ただ、自分のバックボーンを重ねすぎるとしんどいので、そこはうまく調理できたらいいなと思っています」

また、5歳の幼少期から演じるという新たな挑戦については、「子どもに見えること、が果たしてそこまで重要なのか」と模索中。特に意識しているのは、「キャラクターが持つリズム感をしっかり捉える」こと。「見た目的なもの、台詞の言い回しとかではなく、人間の奥底に持つリズム、生きている理由や悩み、何が好きで嫌いなのかといったポイントを捉えていきたいです。1幕のジョンは活発に動くから、彼の中で刻んでいるビートは速いんだろうなとか、今少しずつ見えてきています」。

ジェン役の新妻聖子さん、濱田めぐみさん、ダブルキャストでジョンを演じる田代万里生さんについては、「歌が素敵と言うのもおこがましいレベルの方々なので、そこは割愛しますね」と笑顔。「新妻さんと濱田さんの違いと言うと……うまくまだ言葉が見つかりませんが、新妻さんはNetflixの映画に出てきそうな“洋”の雰囲気、濱田さんは映画館でしか観れない邦画に出てきそうな“和”という感じです」。

田代さんとは別々に稽古していることも多いそうだが、お互い役へのアプローチが違うのは実感している。ジョンは歌も多く、クラシックがベースで難しいと言い、「万里生くんはクラシックの知識があり、今回の作品は彼の歌がぴったり。年代の移り変わりなども、彼の台詞の音を聞いているだけで伝わってくるのがすごいなと思いました。声の使い方のレンジが広く、あの(喉の)筋肉はどうなってるんだ!って思います(笑)」と、良い刺激を受けている。

あらためて作品の見どころをたずねると、「この作品はジェンが自分と向き合い、自分のふがいなさ、足りないところと向き合って、どう生きていくのか、という物語であると感じています。でも決して観劇後にドーンと落ち込むほど、重苦しい作品ではありません。最後にすごくいい曲を歌うし、本当に泣けて、スッキリすると思います! 『人は欠点があってもいいのかもしれない。一歩踏み出し、ゆっくり始めてみよう』と勇気を与えられる作品になればうれしいです」。

PARCO PRODUCE 2023 ミュージカル『ジョン&ジェン』

東京公演/2023年12月9日(土)~24日(日) よみうり大手町ホール
大阪公演/2023年12月26日(火)~28日(木) 新歌舞伎座

音楽:アンドリュー・リッパ
歌詞:トム・グリーンウォルド
脚本:トム・グリーンウォルド、アンドリュー・リッパ
演出・翻訳・訳詞・ムーブメント:市川洋二郎
出演:森崎ウィン 田代万里生(Wキャスト)/ 新妻聖子 濱田めぐみ(Wキャスト)

東京公演公式HP https://stage.parco.jp/program/johnandjen
大阪公演公式HP https://www.shinkabukiza.co.jp/perf_info/20231226.html

https://www.youtube.com/watch?v=x3FUD8y-RME

 

RECOMMEND

RANKING

DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3

RELATED

いま見ている記事と関連したオススメ記事です

PAGE TOP