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Stage INTERVIEW

伊藤英明が『橋からの眺め』で13年ぶりの舞台出演を果たす

「30年の間に点で散らばっていたものが、線で繋がり出した」

ピュリッツァー賞も受賞した20世紀を代表するアメリカの劇作家、アーサー・ミラーの傑作戯曲を、英国内外で評価の高いジョー・ヒル=ギビンズ氏が演出する『橋からの眺め』が、9月2日に「東京芸術劇場 プレイハウス」で開幕する(北九州・広島・京都でも上演)。ニューヨークの貧民街で暮らす人々を生々しく描いたスリリングな物語に主演する伊藤英明さんに、13年ぶりの舞台に挑む思いや、50歳を目前にしての心境、稽古の様子などを伺った。
(取材・文/小野寺亜紀 撮影/源賀津己)

『セールスマンの死』『るつぼ』などで有名なアーサー・ミラーの『橋からの眺め』は、違法移民の従兄弟家族を受け入れたことで一家に巻き起こる悲劇を描いた名作。近年ウエストエンドでリバイバル上演され、ローレンス・オリヴィエ賞やトニー賞にも輝いた。イタリア系アメリカ人の港湾労働者である主人公エディを演じるのが伊藤英明さん。舞台出演は『MIDSUMMER CAROL~ガマ王子VSザリガニ魔人~』(2004年)、『ジャンヌ・ダルク』(2010年)に続き3度目となる。

「最初の舞台の本番で台詞を忘れてしまったことがあり、舞台は怖さしか残ってなかったんです。これまで自信が持てるような芝居をできていなかったこともあり、48歳の今、50歳までの2年間でしっかり芝居に向き合いたい、演技を学びたいと思っていた時にこのお話を頂きました。50って、なかなか新しいものを生み出すのは難しくなってくる年代。でも40代は例えば結婚したり、大切な人が亡くなったりと、人生が一番大きく動く時だと思うのですが、そんな時にイギリスから素晴らしい演出家の方が来られて芝居を教えてもらえる、こんな幸せなことはないな、というのが始まりでした」

日本で初演出するジョー・ヒル=ギビンズさんのもと、6名だけで紡ぐ本作の稽古はどのように進んでいるのだろうか。「喜怒哀楽、感情を色濃く出す舞台ですが、その感情のコントロールなど、ジョーさんによって引き出されるものが大きく、彼の言葉を一言一句逃したくないという気持ちで取り組んでいます。毎日約8時間稽古をしていますが、楽しくて仕方がなくて、あと1年ぐらい稽古をやりたいです(笑)」。

物語は弁護士アルフィエーリ(高橋克実)によって語られる。エディは妻ビアトリス(坂井真紀)と姪キャサリン(福地桃子)と暮らし、姪の幸せをひたすら願っている。そこへビアトリスの従兄弟マルコ(和田正人)とロドルフォ(松島庄汰)が、シチリアからアメリカへ密入国。最初は二人を歓迎していたエディだったが、キャサリンがロドルフォに惹かれていくと態度が豹変する。伊藤さんが感じる作品の魅力とは?

「誰にでも起こりうることでシンプル。それが負の連鎖によって、負の着地点にたどり着くんです。アーサー・ミラーのこの戯曲の時代は、働いて家族を守り、シンプルに生きて死んでいくものだという考えがどこかにありますが、その考えや、死に対しての観点が日本人と違うのが興味深いです。日本人はどこか死に関して悲観的だなと思います」

本作では特に、エディのキャサリンへの複雑な想いも含め、彼の言動や感情に引き込まれる。伊藤さんは「二人の間にはシンプルに“愛”しかない」と捉えている。「愛から始まり、自分の思考による掛け違いから崩れていく。エディには“人間の見たくない部分、隠したい部分”を感じます。その感情は誰しも持っているもので、それについて考えて眠れないという方もいるだろうし、俺もそういう時がありました。でもそこに向き合い、表現することで、何か皆さんの人生にタッチできるものになればいいなと思っています」。

稽古では毎日「気づき」があり、充実しているという。「やっぱり自分の人生をしっかり生きることが、役に跳ね返ってくるんだなと。30年ぐらい芸能界にいますが、点で散らばっていたものが、線で繋がり出したような感覚です。舞台は自分のこれまでの無知な捉え方では、大きな声で相手に届け、身振りも大きくする演技だと思い、苦手意識があったのですが、舞台こそ細かい表現で伝わるんだなと気づきました。これまで固まって緊張して演じていたのが、感情に向き合い、さらけ出し、それを役にうまく落とし込むという芝居をジョーさんが引き出してくれるので、日々幸せを感じています」。俳優として新たな境地にたどり着いた伊藤さんのエディをどうか見逃さずに!

PARCO PRODUCE 2023『橋からの眺め』

東京公演/2023年9月2日(土)~9月24日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
北九州公演/2023年10月1日(日) J:COM北九州芸術劇場 大ホール
広島公演/2023年10月4日(水) JMSアステールプラザ 大ホール
京都公演/2023年10月14日(土)・15日(日) 京都劇場

作:アーサー・ミラー
翻訳:広田敦郎
演出:ジョー・ヒル=ギビンズ
出演:伊藤英明 坂井真紀 福地桃子 松島庄汰 和田正人 高橋克実

公式サイト https://stage.parco.jp/program/aviewfromthebridge

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