(撮影/増田 慶 取材・文/臼井祥子 ヘアメイク/奥山信次(barrel)(早乙女)、奥平正芳(塩野) スタイリスト/Motoki Ogata(早乙女)能城 匠(TRON)(塩野))
衣装(早乙女)/ジャケット ¥207,900、パンツ ¥119,900 /ともにDRESSEDUNDRESSED(DRESSEDUNDRESSED 03-6379-1214)
その他 スタイリスト私物
あの日、心を奪われた舞台へ。憧れを超えて、二人が挑む最後の『髑髏城』。
――初めてご覧になった『髑髏城の七人』はなんでしたか?
早乙女 僕は「アオドクロ」(2004年)です。衝撃でした。当時13歳だったんですが、大衆演劇以外の舞台を観たのが初めてだったんです。脳を打ち抜かれたようなショックを受けました。カキン!ってやったらスポットライトがパッと違う場所に移動したり、見得を切ったら照明がバーンと入って「照明ってこんなに動くんだ?」と思いましたし、音楽も「時代劇にロックをかけてもいいんだ?」と。すべてが衝撃で何回鳥肌がたったかわからないです。髑髏城そのものにも憧れましたし、捨之介と天魔王の二役をやっていた(市川)染五郎さん(現・松本幸四郎)が本当にカッコよくて憧れました。
塩野 僕は17、8歳の時にゲキ×シネで観た「ワカドクロ」(2011年)が最初。当時、撮影で東映スタジオに通い詰めていたときに、近くの映画館でゲキ×シネをやっているからちょっと観てみようかなと思って、ふらっと立ち寄ったんです。僕も本当に衝撃を受けました。役者というものの面白さをまざまざと見せつけられて「僕は役者になりたいんだ」と強く思いました。
――「ワカドクロ」では太一さんが蘭兵衛役でした。
塩野 そうなんですよ。映画館で2、3回観たので、合計10時間以上観まして。
早乙女 すごいね(笑)。
塩野 そこからです。その後DVDを買って何回も観ました。地元の友達が「塩野のうちに行くと『髑髏城』観せられるぞ」って噂するくらいには観ていました(笑)。
早乙女 (笑)
塩野 Season花、鳥、風、月、極(2017年〜2018年)も全部観ました。いつか自分も『髑髏城』に出たいと思って、そこを目標にこの仕事を頑張ってきたところもあります。

――太一さんは「ワカドクロ」と「鳥」で同じ蘭兵衛役を演じられましたが、ご覧になっていかがでしたか?
塩野 同じ役なのに違っていて、どちらも素晴らしすぎて頭を抱えました。捨之介(ワカドクロでは小栗旬、鳥では阿部サダヲが演じた)も、特に「鳥」の捨之介はだいぶ違うキャラクターだったので、それも踏まえてすごく楽しみながら拝見しました。
――太一さんはその後「月」で天魔王役を務め、今回初めて捨之介役を演じられます。役が変わっていくのは、ご自分の中ではどんなお気持ちなのでしょうか?
早乙女 それはよく聞かれるのですが、同じ作品でも公演ごとにキャラクターが変わるんです。蘭兵衛を2回やったけど、それぞれ全然別の過程を経て作られている。だからこれまで蘭兵衛や天魔王を演じてきたことが、捨之介役を演じる上で生きるかというと、あまり意識するところはないです。
――「ワカドクロ」の時の蘭兵衛と「鳥」の時の蘭兵衛は、変えようとして変わったのですか?
早乙女 いのうえさんや(中島)かずきさんが稽古中にキャラクターを作って広げていくんです。僕がやる前はもっと大人の蘭兵衛だったんですけど、「ワカドクロ」の時、僕は19歳だったから、針で一差し刺せばバーンと壊れてしまうようなギリギリな感じ、すごく強いようですごく脆い、そういう蘭兵衛になりました。どうしても殿の夢、過去に追った夢を抱えていて、首に十字をかけて「変わった変わった」と言っているけど何も変われていなかった。そこから「鳥」の時はもうちょっと変わろうとしている蘭兵衛になりました。果たせなかった思い、侍として死ねなかった、死に場所を自分で決められなかったという無念さや彷徨う気持ちを抱えつつも、極楽太夫と一緒に、生きる場所を失ってしまった人たちの居場所を作っていこうと思ってる。ちょっと大人になったというか、複雑になったのかな。だから結構軸が変わってるんですよ。僕にできる表現が変わったところもあるし、共演者のキャラクター設定で変わるところもあります。

――今作では塩野さんがその蘭兵衛を演じられます。今の時点で演技プランはありますか?
塩野 こう演じられたら魅力的だなと考えていないわけではないのですが、そこまではまだ深追いをしないようにしています。今はまだ自分の中で固めないほうがいいのかなと思っています。脚本を読んだ時にどうしても僕の中でこれまでに蘭兵衛を演じられてきた方の声が響いてしまうんですが、それを一旦抜き去って、フラットに脚本と向き合いたい。(藤岡真威人と)Wキャストだということもあります。僕と真威人くんとは年齢も違うので、例えば極楽太夫とのバランスも変わってくるはず。これはまだ決定事項ではないと思うんですが、蘭兵衛はWキャストでミザンスが変わるかもしれないという話も聞きました。今は僕が持っているものをいのうえさんにお見せしている段階です。脚本(ホン)読みで「僕ってこういう人です」というのは良くも悪くも伝わったんじゃないかと思うので、それを踏まえて演出をつけてくださるはず。いのうえさんが僕の印象をどう持たれたのか、ちょっと楽しみにしています。
――太一さんは捨之介をどんなふうに演じたいと思っていますか?
早乙女 そうですね。これまでの捨之介とは全然違うものを作るか、日替わりでそれぞれのモノマネをしていくか。今日は小栗捨バージョン、明日は古田捨バージョン。
塩野 (笑)
早乙女 かもしれない。
塩野 それ、阿部さんバージョンが出てきたらどうするんですか?
――塩野さんとしては、それが一番観てみたい?
塩野 いやいやいや(笑)。いや確かに観たいっちゃ観たいですが、どうやってやるんだろうって(笑)。
早乙女 憑依してるかもしれない。
塩野 阿部さんバージョンだけ極端に違うじゃないですか。
早乙女 うつけなんだよね。言葉を発さないですからね。
――それが日替わりでやってきたら、周りの方が。
早乙女 大迷惑ですね(笑)。もちろん冗談ですが。

――ちょっと観てみたかったです。稽古場の雰囲気はいかがでしょうか?
早乙女 いつもどおり、まずいのうえさんが段取りを決めていきます。いのうえさんが作るものはどれだけ広い劇場にいても、後ろのほうにいる人には顔が見えなくても、フォーカスが今どこに当たっているかわかるように、立ち位置と動きを決めていくんです。そうしてお客様の目線を作る。その段取りをまずバーっと作っていくので、慣れていない方はあたふたしながら、そのスピード感についていっています。
――経験している人と初めての人で、余裕が違うんですね。
早乙女 慣れている我々もあたふたしてます。
塩野 僕は初めてで、まだ脚本(ホン)読みしかしていないのですが(取材は9月下旬)、覚悟はしています。太一さんには脚本(ホン)読みの初日にごはんに誘っていただきました。実は稽古に入る前に予行練習として、太一さんからもし近寄りがたい雰囲気を出されても「教えてください」と自分から積極的に関わっていこうとシミュレーションをしていたんですが、すごく柔らかく接していただいてうれしかったです。
早乙女 塩野くんは表面的にはすごく柔らかくてソフトで明白な澄んだ空気感があります。それで、内側にすごくしっかりしたものがある。それが何かはわからないけど、すごく強いものがあって、燃えているような感じが伝わってくるので、それが心地よくて、安心感や信頼感があります。 僕、全然ポンコツだったりするので、これからそういう一面も見られてしまうと思いますが、そこも含めて、お近づきになれたらと思っています。

――今回は「LAST STAND」ということで、新感線で作る最後の『髑髏城』になります。
塩野 「LAST STAND」とうかがったときは「セーフ」という気持ちでした。なかば諦めていた部分もあったので、間に合ったなと。僕のアプローチが合っているかわからないですが、自分の「仁」っていうもの、もともと持っている俳優としての器だからこそ出る表現みたいなものを、大事にする現場かなと、僕は勝手に考えています。自分の心を開け放って丸裸になって臨みたいと思っています。
早乙女 最後の『髑髏城』に立たせてもらえることへの感謝の気持ちが、今は大きいかもしれません。それを受けてしっかりと「良かったな」って思える、「これが集大成だ」と言えるような舞台にできるよう、しっかりと挑みたいです。
『髑髏城の七人 LAST STAND』は、東京・新橋演舞場にて11月14日(土)に開幕し、12月25日(金)まで上演。その後、長野、金沢、大阪で上演される。
詳細は公式サイトにてご確認ください。
https://www.vi-shinkansen.co.jp/dokuro2026/

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