歴代キャストが絶妙に交錯しながら物語を紡ぐ贅沢さ
1992年のウィーン初演以降、世界各国で上演されてきた大ヒットミュージカル『エリザベート』。日本では1996年に宝塚歌劇団雪組が初めて上演し、小池修一郎氏の潤色・演出によって、死を象徴する「黄泉の帝王」トートと、オーストリア皇后エリザベートの愛の物語として構築され、そのロマンティシズムと美しく豊かな楽曲が、観客の心を深くとらえた。宝塚歌劇団ではこれまで5組で計10回上演。今年8年ぶりに上演(花組)されることが、初演の初日に合わせたように2月16日に発表され、大いに沸いたのは記憶に新しい。
『エリザベート』の節目節目で上演を続けてきたガラ・コンサート。近年では5年に一度、宝塚OGたちが集う豪華なイベントとして定着している。出演者全員が扮装して本編をコンサート形式で上演する「フルコスチュームバージョン」、メインキャストが役のイメージに合った衣裳を着用し、本編をコンサート形式で届ける「アニヴァーサリーバージョン」。さらに今年は、初演メンバーで綴る30周年記念プレミアムトーク&ライブ「モニュメントバージョン」(2月16日)も用意された。
麻路さき
舞台上には3つの不均衡な階段。そのセットの中で生演奏が行われ、不協和音の旋律が場内に響き渡ると、一気に『エリザベート』の世界へ導かれる。「コンサート」と銘打ってはいるけれど、第1場からエピローグまで本編の流れのまま、台詞も交えて展開するので、ミュージカルそのものを観ているような感覚に。唯一、ハンドマイクを手にしている点が「コンサート」らしいところではあるが、キャストたちはマイクを持たないもう片方の手も含め、全身から放たれる感情、歩き方や佇まいによって、物語への深い没入感を生み出していく。
3月4日に行われた「アニヴァーサリー 30周年ver.」には、3人のトートが登場。麻路さきさん、彩輝なおさん、姿月あさとさんが順番に「黄泉の帝王=死」を演じ、大鳥れいさん(1幕)・白羽ゆりさん(2幕)というふたりのエリザベートと絡みながら、楽曲を紡いでいった。第1場の「私を燃やす愛」だけは、3人のトートが舞台奥の上段に並んで次々と歌い継ぎ、最後は歌声を重ねる。やはりスペシャル感をひときわ感じる演出シーンだ。
姿月あさと
世界を支配するどっしりとした帝王感に満ち、手の指先まで豊かに感情を語る麻路さん。ビブラートを効かせた魅惑的な歌声から、「ミルク」の場面の力強いロングトーンまで、その妖しさで魅了する彩輝さん。2幕途中からの登場ながら一気にエンジン全開、「闇が広がる」を含め、エピローグまでトートの狂おしい感情を歌に乗せる姿月さん。それぞれのトートがエリザベートやルドルフと絡んだ後にふと見せる、驚きや愛憎といったさまざまな表情に物語性を感じ、違いが垣間見えるのもおもしろい。
「闇が広がる」で、姿月トートと繊細な感性が響き合うようなセッションを見せたのが、凰稀かなめさんが扮するルドルフ。元宙組トップスター同士の世代を超えた共演が叶い、もろい少年のように怯えた眼差しの凰稀さんに、硬質に迫っていく姿月さんの鋭さが際立った。
彩輝なお
そのすぐ後、新たにルドルフとして登場したのは、初演の雪組でこの役を演じたレジェンドのひとり、香寿たつきさん。「僕はママの鏡だから」を白羽さんとデュエットしたときの、切ない叫びのような感情を帯びた伸びやかな歌声。ハンガリー独立運動での明るい未来を信じ、遠くを見つめる清廉な笑み。その一つひとつが、まさに初演を思い起こさせる感動のパフォーマンスだった。
今コンサートの「アニヴァーサリー ’05月組ver.」ではエリザベートに扮する月影瞳さんは、少年ルドルフとして透明感あふれる歌声を披露。同期である彩輝トートの神秘的な眼差しを受けながら、澄んだ声色を響かせるこのシーンも、長年のファンにとっては見逃せない瞬間となったはず。
