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Stage REVIEW

『M.クンツェ&S.リーヴァイの世界 ~3rd Season~』シアタークリエ・ミュージカルコンサート 公演レポ~千穐楽編~

『M.クンツェ&S.リーヴァイの世界 ~3rd Season~』シアタークリエ・ミュージカルコンサートが、9月10日から26日まで日比谷・シアタークリエで上演された。日本でも深く愛されるミヒャエル・クンツェ氏&シルヴェスター・リーヴァイ氏の作品より40曲以上セレクト。素晴らしい実力を持つスターたちが歌い上げるたびに拍手や歓声で沸いた千穐楽の模様をレポートする。
(取材・文/小野寺亜紀、写真/東宝演劇部)

涼風トート降臨! 夢のデュエット、心打つナンバーの連続

「清らか」「神秘的」「心ゆする」「魔術的」「悦楽」――。これはミュージカル『モーツァルト!』のナンバー「モーツァルト!モーツァルト!」の歌詞の一部だが、その言葉を本コンサートで聴きながら、まさにミヒャエル・クンツェ氏&シルヴェスター・リーヴァイ氏の生み出す音楽もその通りだ、とかみしめた。

『エリザベート』『モーツァルト!』『レベッカ』『マリー・アントワネット』『レディ・ベス』と、これまで日本で上演された両氏の作品から、珠玉のナンバーを豪華スターが歌い上げる『M.クンツェ&S.リーヴァイの世界 ~3rd Season~』。開場15周年を迎えたシアタークリエという約600席の濃密な空間に、5つの作品がギュッと詰まった贅沢な時間が流れ、観客は全身喜びで満たされたのではないだろうか。9月10日に開幕し、AからDグループまでキャストやセットリストを変えながら公演が行われ、9月26日に千穐楽の幕を下ろした。そのラストデイより感動の一部を届けよう。

涼風真世
花總まり
昆夏美
城田優
上口耕平

 

この日はLE VELVETSの4人から宮原浩暢さんと佐藤隆紀さん(佐賀龍彦さんと日野真一郎さんは体調不良で休演)、小野田龍之介さん、MCも務める原田優一さんが初日からのレギュラーキャストとして出演。さらに涼風真世さん、花總まりさん、昆夏美さん、城田優さん、上口耕平さん、休演者に代わって急遽出演となった和音美桜さんたちがステージに登場した。

まず冒頭、実力あるアンサンブルの重厚な歌唱と生演奏で、一気にクンツェ&リーヴァイの世界へと誘う。そして5作品すべてに出演している涼風真世さんが、宝塚歌劇団在団中も演じることがなかった『エリザベート』のトートとして降臨(トップ画像)。長髪のウィッグ・黒いクールな衣装を身に着け「最後のダンス」を披露した。鋭い視線、艶のある低音ヴォイスからパワフルな歌唱へと昇りつめていく姿は、男役時代を彷彿とさせる格好良さで、いきなり観客を興奮へと導く。続いて花總まりさんが白い衣装で瞳を潤ませながら「私だけに」を情感たっぷりに歌い、シアタークリエにあのエリザベートが舞い降りる。最後は「愛のテーマ」で声を重ね、二人の視線が優しく絡み合うさまに心が洗われた。MCの原田さんは二人を前に「まぶしい! 一挙手一投足が完璧!」と絶賛。涼風さんは「花ちゃんとこうして歌えて幸せ。時よ、止まれ!」と喜び、涼風さんがトップスターを務めた月組公演で初舞台を踏んだという花總さんも「雲の上の方だった。幸せです!」と満面の笑顔を見せた。

このような夢の組み合わせは本コンサートならではで、新鮮なデュエットや、自身が演じた役の歌ではないナンバーで、新たな魅力を開花させるキャストも多かった。例えば『レベッカ』では、宮原浩暢さんと佐藤隆紀さんが男性ハーモニーならではの陰影で「何者にも負けない」を届け、上口耕平さんはダンス力も活かして「持ちつ持たれつ」を軽やかに届ける。上口さんは『レディ・ベス』の「クール・ヘッド」も王子的な華やかさと歌の巧さで魅了した。

小野田さんは1幕のラストを飾った「影を逃れて」で、孤独と不安におびえるように舞台上を動きながら、血がにじみ出るような絶唱を聴かせ圧巻。また『エリザベート』の「ミルク」の煽り方とシャウトも絶妙で、ぜひいつか彼のルキーニを観てみたいと思った。

昆夏美さんは『モーツァルト!』の出演経験がないとは思えないほど、コンスタンツェの心情が痛いほど伝わってくる歌声を披露した。小野田さんとの幸せな「愛していれば分かり合える」から、やりきれない思いを吐き出す「ダンスはやめられない」へと瞬時にシフト。金髪に赤いルージュ。その声はもちろん瞳からも訴えてくるものがたくさんあって、文字通り釘付けに。昆さんは『マリー・アントワネット』の「100万のキャンドル」「もう許さない」でも拍手喝采を浴びていた。

城田優さんは『モーツァルト!』の「僕こそ音楽」を、階段に座ったリラックスした状態で歌い出し、音を楽しそうに操る様がまさにヴォルフガングで、まるで鍵盤の上を軽やかに舞っているような歌声。2幕の『エリザベート』コーナーは大活躍で、「愛と死の輪舞」、上口さんとの「闇が広がる」、花總さんとの「私が踊る時」と大ナンバーが続いた。凍りつきそうになる冷たい視線、ミステリアスゆえ引き込まれる城田トートは、本公演でトートを演じていた7年前より凄みが増し、深化した歌声で黄泉の世界へといざなった。

歌唱力&表現力に優れたキャストたちのパフォーマンスは圧巻

そして日本のクンツェ&リーヴァイの歴史のスタートに彼女のエリザベートがあり、その後も両氏の作品に縁が深い花總まりさんは、『レディ・ベス』の「秘めた想い」や、原田優一さんとのデュエットでマリー・アントワネットの曲「明日は幸せ」をしっとりと聴かせる。彼女の歌には心に一点の曇りもない、真っ直ぐに届いてくるものがあり、劇場を温かなオーラで包み込む。城田トートとの「私が踊る時」では、信念に満ちた声がどの音にもスパッとはまり、二人の間に漂う緊張感と、勝ち誇ったような笑みが忘れられない。

和音美桜さんは、『レディ・ベス』の「あなたは一人じゃない」や、佐藤さん&宮原さんのハーモニーに呼応して歌った「あなたに続く道」(『マリー・アントワネット』)でクリスタルヴォイスを披露。聖母のような包容力と温もりある音色は彼女ならではだ。宮原さんはクンツェ&リーヴァイ作品には出演経験がないそうだが、彼のバリトンはリーヴァイ氏の旋律に心地よく馴染んでいた。

MCとして作品や曲解説はもちろん、キャストや観客目線に立った絶妙なコメントをはさみ、笑いもとる原田優一さんは、昆さんとの「終わりのない音楽」でレオポルトにもなれば、涼風さん&アンサンブルとの「モーツァルト!モーツァルト!」では、コロレド大司教として壮大な歌声を響かせる。『マリー・アントワネット』でルイ16世をともに演じた佐藤さんとの「もしも鍛冶屋なら」は、誠実さがダブルで迫ってくる貴重なデュエットに。

その佐藤さんは小野田ヴォルフガングとの「破滅への道」で、コロレド大司教の威圧的な存在感を抜群の喉で聞かせた。涼風さんとの「夜のボート」での真摯かつ静かな情熱を秘めた歌唱も心に残る。2008年~2009年にエリザベートを演じた涼風さんは、佐藤フランツと視線を合わせず、孤独なシシィの心情を美しい高音で切なく丁寧に表現し涙を誘う。悲劇の皇后の人生が凝縮しているようなドラマ性があった。

涼風さんは太く低く響き渡るその声にぴたりとはまる「レベッカⅠ・Ⅱ」も存分に聴かせ、ダンヴァース夫人の情念が劇場を覆いつくすような圧倒的声量で魅了した。さらに「星から降る金」では優しく語り聞かせるように、王様などの声色も乗せて表現。サプライズ的な「マダム・ヴォルフのコレクション」は、妖しくパンチのある歌唱で原田ルキーニと絡むなど、終始その振り幅で観客を驚かせた。

全42曲のラストに選ばれたのは、『レディ・ベス』の「晴れやかな日」。暗闇に光がさすような希望に満ちたナンバーをキャスト全員で歌い上げ、涙をぬぐう観客も。カーテンコールで城田さんが「トートの曲をまたいつか歌えれば!」と言うと客席から歓声があがるなど、最後まで盛り上がり熱気は増すばかり。クンツェ&リーヴァイ作品がこれからも末永く愛されることを確信する、情熱と感謝に溢れたコンサートとなった。

小野田龍之介
佐藤隆紀 原田優一

★『M.クンツェ&S.リーヴァイの世界 ~3rd Season~』公演レポ~初日編~はこちら

『M.クンツェ&S.リーヴァイの世界 ~3rd Season~』シアタークリエ・ミュージカルコンサート

2023年9月10日(日)~26日(火) 日比谷・シアタークリエ

脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
構成・演出:岡本義次 末永陽一
出演:
全公演/LE VELVETS(宮原浩暢、佐賀龍彦、日野真一郎、佐藤隆紀) 小野田龍之介 原田優一
9月10~18日/一路真輝 愛希れいか 和音美桜(10・11日) 新妻聖子(12~18日) 古川雄大(10・11日)
9月20~26日/涼風真世 花總まり 昆夏美 城田優 田代万里生(20~22日) 上口耕平(23~26日)

彩花まり 岩﨑亜希子 樺島麻美 島田彩 吉田萌美 安部誠司 後藤晋彦 武内耕 中山昇 横沢健司

公式HP https://www.tohostage.com/crea_musical/

この美しさを、ずっとお手元に。
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