「出会いを大切にしてほしい」、その言葉がずっと僕の中に残っている。
――東島さんはお若いながら歌に定評がある俳優さんですが、ルーツをうかがいたいです。
ちゃんと習いはじめたのは中学一年生からで地元大阪のダンスボーカルスクールでしたが、小さい頃から歌うのが好きでした。僕は「産声がハミング」だったんです! ちなみに、これ、僕のキャッチコピーです(笑)。実は小学四年生頃までは音痴だったんです。好きだから気にせず歌っていて「好きこそものの上手なれ」という感じで、歌っているうちに少しずつ「素敵な声だね」と言ってもらえるようになってきました。
――歌が好きで歌手になりたいと思う方もいると思うのですが、舞台を目指したきっかけは?
初めてミュージカルを観たのは、小学四年生の時、母に連れていってもらった劇団四季の『ライオンキング』です。幕が開いて動物たちが登場した途端に目の前にサバンナの世界がブワッと広がって、演者と観客がどちらも「ここはサバンナだ」と信じられる空間にものすごい魅力を感じました。いつか自分もやってやるぞと思いました。
それから、スクールで歌もダンスもお芝居も経験させていただきました。歌もポップスやR&B、コーラス、ゴスペルといろいろ学べて、歌も好きだけどお芝居も好きだな、ダンスもやりたいな、どうしようって考えてて「あ!ミュージカルだったら全部できる!」と気がつきまして、本格的にミュージカルをやろうと決めました。そうしたらスクールの代表の方がいろいろな事務所の方に声をかけてくださって、僕の歌を聞いていただくことができて、今の事務所に入りました。
高校二年生の時に『GALAXY TRAIN』で初舞台を踏みました。リーディング公演でしたが高校を卒業するタイミングで同作が『GALAXY TRAIN-A New Musical』としてロンドンのウエストエンドにて全編英語で上演されることになり、現地キャストと一緒に出演させていただきました。その後、ミュージカル『春のめざめ』に出演、ストレートプレイの『最高の家出』、それからミュージカル『SONG WRITERS』にも出演して、いつも素晴らしい皆さんと共演させていただいて、僕はなんて未熟なんだろうと痛感しながら、たくさんのことを吸収していると思います。毎度毎度挫折と成長を繰り返す毎日です。
――実は東島さんには、今年2月に『ワイルド・グレイ』のインタビュー(https://entapress.com/2025/02/1984/)でエンタプレスにご登場いただいています。『ワイルド・グレイ』に出演が決まったのは『SONG WRITERS』の公演期間中だったとか。
急遽お話をいただきました。『SONG WRITERS』の大阪と名古屋の公演中はホテルでずっと台本を覚えていました。3人芝居も初めて、ロンドンの詩的な普通あまり使わないような言い回しが多かったのでどう自分に落とし込むか悩みました。…時間があまりなかったのがかえってよかったかもしれません。集中力が途切れないようにドーンと創り上げていった記憶があります。
――その経験を経ての『チョコレート・アンダーグラウンド』。石丸さち子さんの演出作は初めてだそうですが、稽古場はいかがですか?
とにかく充実しています。(石丸)さち子さんもそうですが、キャストの方々が(岡田)浩暉さん、(平野)綾さん、(土居)裕子さんなどなど錚々たる顔ぶれで、しかも進むのがすごく早いんです。まず大枠を作ったほうがいいというさち子さんの考えで、2週間で全体を一通り作りますと。だからとにかくスピードが早くて、油断すると置いて行かれてしまうので、毎日ずっと集中しているんです。
さち子さんはずっとご一緒したいと思っていた演出家さんのひとりです。周りのいろいろな方から熱い人だよと聞いていましたし、去年『翼の創世記』を拝見したときに、すごく会話を大切にされる方だなと思いました。このタイミングで出演が叶ったことに感謝しています。
稽古場で(北川)拓実(スマッジャー役)くんと初めて軽く読み合わせをした時にさち子さんに「出会いを大切にしてほしい」と言われました。それがずっと僕の中に残っていて。自分とハントリーという役との出会いという意味でもあるだろうし、ハントリーと周囲の人々との出会いという意味でもあるだろうなと。
ハントリーは、スマッジャーより大人で、一歩後ろに下がって俯瞰してるような人間なのですが、チョコレートへの愛はスマッジャーと同じだから、これで行こうと決めた時にハントリーのほうが一歩前に出ていることもあります。そういうふたりの関係性も大切にしたいです。稽古の中で常に感じているのは、ハントリーは大人と子どもの中間にいる感じで、自分がこれからどうあるべきか、どうなりたいかを考えている途中なんだろうなって。
浩暉さんの演じるブレイズさんや裕子さん演じるバビおばさんなど大人ひとりひとりと話す時にも、「この人のようになりたい」という思いがあったり、「この人がどう自分を変えてくれるかな」と救いを求めていたりとか、いろいろあるんじゃないか、そこをうまく表現できないかと、ものすごいスピードで進んでいく稽古の中でも感じながら考えながら、精いっぱい役を生きようとしている毎日です!
(次ページへ続く)
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