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「5度目にして最高到達点にきている」と実感。

5度目のトバイアス役で、初のダブルキャスト。「稽古の半分は見学になるので、役としての発見はもちろん、出演していると観れなかった部分が見えてきて面白いです。この作品は死んでいく人が多いのですが、死ぬ場面の感想を稽古場のあちこちで伝えています。役作りって人それぞれ、ナイーブなものだけど、『見え方としてこういうほうがいいんじゃないか』というのは案外言いやすくて。恨みをもって殺されるので、もっとその断末魔があっても面白いんじゃないかなど、死ぬ役の方とはだいたい話しました!(笑)」と、ディスカッションしやすいカンパニーであることを、ユーモラスに打ち明ける。

トバイアスは大竹しのぶさん演じるパイ屋のミセス・ラヴェットを慕う純粋な青年。「30代前半で初めて挑んだとき、すれ違うすべての人におびえるような、ネズミみたいなトバイアスを僕が稽古でうまく演じられなくて、亞門さんが包帯を持ってきたんです。それを靴の上からぐるぐると巻き、血のりをつけて、足をひきずる少年という、まさに役を演じるうえでの“足かせ”を作ってくれた。それが僕の役作りで功を奏し、舞台を観た方から『どこに武田が出ているかわからなかった』とまで言っていただけました」。

2度目の上演では宮本亞門さんから「好きにやっていいよ」と言われてこの設定を一度なくしたが、3度目、4度目では初演と同じ演出に。「個人的にやっている筋トレのせいでどんどん元気になっちゃいまして(笑)、やっぱり僕にはこの演出、“足かせ”が必要でした。今回もそれを使わせていただいています。実は2022年に同じ右足を骨折して、僕自身世の中の見え方が変わったんです。長い信号だな、と思っていたところが、渡り切れないとか、人の親切に頼らないといけない瞬間があることを知って。この人生経験もまた、きちんと役に活かしたいです」。

スウィーニー・トッド役の市村正親さん、ミセス・ラヴェット役の大竹しのぶさん、ふたりを中心とする熱のこもった稽古から、「5度目にして最高到達点にきている」と実感。「しがない理髪師のトッドが、階級の違う人に復讐をする。それも機転を利かせて、復讐の対象であるターピン判事をおびきよせるんです。そのトリックや人間ドラマの部分が実はとても見応えがあり、そういうところを今回は丁寧に丁寧に、市村さんはじめみんなで訳詞の行間さえも共有して稽古を進めています」。驚愕の結末に驚くとともに、実力派キャストたちの快演に胸がすく、不思議な余韻のスリラーミュージカル。貴重な再演をぜひ見届けて。

ミュージカル『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』

東京公演/2024年3月9日(土)~2024年3月30日(土) 東京建物 Brillia HALL
宮城公演/2024年4月12日(金)~2024年4月14日(日) 東京エレクトロンホール宮城
埼玉公演/2024年4月19日(金)~2024年4月21日(日) ウェスタ川越 大ホール
大阪公演/2024年4月27日(土)~2024年4月29日(月・祝) 梅田芸術劇場メインホール

作詞・作曲:スティーヴン・ソンドハイム
脚本:ヒュー・ホイラー
演出・振付:宮本亞門
出演:市村正親 大竹しのぶ
マルシア 山崎大輝・糸川耀士郎(Wキャスト) 唯月ふうか・熊谷彩春(Wキャスト)
安崎求・上原理生(Wキャスト) こがけん 武田真治・加藤諒(Wキャスト) ほか
※大阪公演は糸川耀士郎の出演はございません。
公式HP https://horipro-stage.jp/stage/sweeneytodd2024/

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古川雄大 表紙号

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