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Stage INTERVIEW

味方良介、1年ぶりの舞台は演出家・小沢道成の最新作『わたしの書、頁を図る』

新進気鋭の脚本・演出家、小沢道成の最新作『わたしの書、頁を図る』が7月に東京・紀伊國屋ホールにて上演される。図書館職員の町子が自主映画を撮っている青年・慶太との出会いをきっかけに、常連利用客たちの想像とは違う姿を知って、葛藤し、変化していくユーモアもあふれる物語だ。慶太役を務めるのは味方良介。舞台をきっかけに俳優になり、近年はテレビでも活躍目覚ましい味方に、本作への意気込みとこれまでの俳優人生を語ってもらった。(取材・文/臼井祥子)

きっかけは『エリザベート』。今では舞台だけでなく映像の世界でも大活躍

――味方さんが俳優を目指したきっかけを教えてください。

小学生のころ、『エリザベート』を見に行ったことです。まったく興味がなかったのですが、行けなくなった兄の代わりに、観劇後においしいものを食べさせてくれるという約束でついて行きました。ところが、そこで完全に心を掴まれてしまって。「ごはんはいらないから『エリザベート』のCDを買ってほしい」とお願いすることに。

そこから舞台を観る機会が増えて、自分もこの世界に入りたいと考えるようになりました。でも、どうすれば俳優になれるのかわからない。CDで楽曲は頭に入っていたので、帝劇の地下の楽屋口に通って、出待ちをしながら何かきっかけが生まれないかと考えていました(笑)。夏休みには旅行も兼ねて地方公演にも足を運びました。

男の子が制服で出待ちをしていたから、やっぱり目立っていたんでしょうね。中学一年生の時にとある方に声をかけていただいて、その方が俳優さんにサインを頂けるよう頼んでくださいました。サインを書いてくださったのが岡幸二郎さんで、夢を伝えるとたくさんの助言をくださいました。あるとき「コンサートの企画があるから出てみないか」と誘っていただいたことが、最初のきっかけでした。

――2011年に初舞台を踏んで、数多くの舞台に出演されてきました。ご自身にとって特に大きな作品は?

もちろん全ての作品が大切なんですが、あえて挙げるなら初舞台の『恋するブロードウェイ』。そしてミュージカル『テニスの王子様』です。あの作品がなければ、多くの方の目に触れることはなかったです。岡村俊一さん演出の『熱海殺人事件』や『新・幕末純情伝』にも大きな影響を受けましたし、『グランドホテル』では、自分がこの世界に入るきっかけになった大劇場のミュージカルに、ようやく出演することができた。「自分が想像していたものだけでは足りない」と痛感した経験は、とても大きかったです。そこから、さらに多くの演出家の方々と仕事がしたいと思うようになりました。

スズカツさん(鈴木勝秀)に「味方はそんなに歌わなくていいから芝居を磨け」って言われたことがありました。「ずっと頑張ったら、いつかお前で 1本作ってやるから」と。その言葉のあとに『ウエアハウス~Small Room~』という三人芝居に出演させていただきました。名前を挙げればきりがないですが、和田憲明さんには俳優の呼吸を教わりましたし、藤田俊太郎さんには『Take me out』で翻訳劇の台本の読み方や空間の掌握の仕方を教わりました。映像の仕事を始めるまでの数年間で、そうした出会いから得たものは非常に大きかったです。自分にとって、表現の武器を増やしていく時間だったと感じています。

――2020年にドラマ『教場』をきっかけに、映像の世界で活躍されるようになりますが、舞台とは違いますか?

まったく別物です。手法が違いますし、届け方も違う。映像はお客さんが画面越しに作品を見るので、そこに届くまでに監督がいて、カメラマンさんをはじめとするスタッフがいて、編集があって、総力戦で出来上がるんです。しかも舞台のように稽古期間がないので、撮影の瞬間に自分の役を提示しなければいけない。

もちろん現場に入る前に自分の中で役を組み立てますし、リハーサルもあります。ただ、カメラ前で数回リハーサルをして、用意してきたものを見せて、監督から「こう変えてほしい」と言われたら、その場で応えなければいけない。照明や画角の都合で動きの制限もありますし、台本順に撮影するわけでもない。事前に全体を整理して、相手役の動きまで想定しながら演じる必要があります。瞬時に判断して、対応していく作業の連続です。
 
しかも一話からではなく、いきなり三話から撮影することもある。だからこそ準備が重要です。どんな状況にも対応できるよう、自分の軸を保ち続ける必要があるのが映像の現場です。

――稽古もないのに、用意してきたものと違うものをいきなり出せるものですか?

そこなんですよね。自分の心や脳みそ、経験の中から探しに探して、引き出しに切り札をできるだけ多く用意しておく。AがだめならB、BがだめならCと切り替えていく感覚です。もちろん、わからないことも多いですし、もがきながら進んでいます。ただ、周囲の方の意見を大事にして、独りよがりにならないことは常に意識しています。

――舞台で学んだことが、映像の仕事で手札になっているのですね。逆に映像の仕事で学んだことは?

映像で得たものを舞台に持ち込んだらどうなるんだろう、と考えることはあります。「呼吸」や「距離感のつめ方」とかですね。映像ならカメラが拾ってくれるから成立する芝居でも、舞台だと客席まで届かないことがある。だから少し大きくしたり、逆に距離を取ったり、意図的に近づいたりする。その感覚を、よりリアルな形で舞台に落とし込んだらどうなるのか、興味があります。

今回、1年ぶりの舞台なのですが、脚本を読んで、非常に自然な言葉で書かれていると感じました。いわゆる演劇的な台詞ではなく、日常会話の延長線上にある言葉が多い。だからこそ、映像のようなリアルな芝居を舞台で成立させたいと考えています。ただ、実際に立つと絶対に「演じる」が入ってくる。どうすれば「演じない」状態に近づけるのか、今はそのことを考えています。稽古場に入ったら、どうしても何かを足したくなる。でも、今回は「やらない」ほうが面白くなる作品だと感じています。

――味方さんの役は、人からはうらやまれるような部分にコンプレックスを持っている男性です。

傍から見たらうらやましい悩みに映るかもしれない。でも誰しも、自分の一部分だけで判断されたくない感覚はあるんじゃないでしょうか。歌がうまいとか、勉強ができるとか、お金持ちだとか、そういう表面的なことだけじゃなく、自分の中身を見てほしいという感覚は。彼はそれを嫌味なく、自然に口にできる。その人物像は非常に面白いですね。

――味方さんご自身にもそういう悩みはありますか?

第一印象はどうしても見た目から入るので、そこで固定されたイメージにもどかしさを感じることはあります。ただ、じゃあ自分がそう見られる努力をどれだけしているのかと言われたら、それまでなんですよね(笑)。

――小沢道成さん(作・演出・美術)は初めてですか?

まだお会いしていなくて、稽古もこれからなので、今お話ししていることは、脚本を読んだ印象と想像だけです。言葉選びが本当に魅力的なので、「どういう感覚でこの台詞を書いたんだろう」とか、「これをどう立ち上げていくんだろう」とか考えている時間がすごく楽しい。
 
最近は舞台出演そのものが年に一、二本になっているので、稽古の感覚も少し曖昧になっていて。今回は新人のつもりで稽古場に入ろうと思っています。
 
ただ、去年久しぶりに舞台に立たせていただいて、「やっぱり舞台っていいな」とあらためて実感したんです。同じ空間にいるのに、舞台上と客席では流れている時間が違う。でも確かに共有している。共犯関係になれるというか、物語を目撃する側と、目撃させる側になれる。その時間はやっぱり特別だな、と。俳優として、その感覚を忘れてはいけないと感じています。だから舞台は続けていきたいです。

――図書館の話なので、図書館の思い出を聞かせてください。

僕は静かな空間が苦手な、かなり活発な子どもだったんですよ。本を読むより外でドッジボールをしているタイプでした。図書館に通うようになったのは舞台を好きになってからです。舞台に夢中になると、知りたいことが次々に増えていく。この時代にはこういう出来事があったんだとか、史実はこうだったんだとか。それを知った上でまた舞台を観ると、「ここは史実とは違うんだ」と気づける。それが面白かった。今はAIで情報を整理してもらえる時代ですけど、そういうことこそ、本を読んで、自分の頭で考えながら調べたい感覚があります。

――昔の話ですが、味方さんがテニミュに出ていたころ、複数のマスコミが入って現場レポをとる機会があって、味方さんがめちゃくちゃアピールしてくれたんですよ。そうしたらスタッフさんに「集中できないから今はカメラを向けないで」と言われたことがあって。

僕、そんなことしてましたか(笑)。

――そういうところも魅力的でした。

今はさすがに場はわきまえるようになったというか、多少は大人になれたかな、と。でも根本は変わっていない気がします。せっかく時間を割いて取材に来てくださるなら、「いつも通りだったね」ではなく、「面白かったね」と記憶に残れたらうれしい。その感覚は昔から変わらないです。だから脱線するにしても、その責任は自分で取れるようになりたい。勢いだけではなく、ちゃんと意志を持ってやっていると言える状態でいたいですね。

――最後に、舞台で注目を集め、映像の仕事でも活躍されている味方さんは、今、舞台に立っている若い俳優さんたちにとって、一つの理想の道を歩いている存在だと思うのですが、そういう実感はありますか?
 
あまりないです。ありがたいことに仕事を頂けているので、一つ一つを確実に積み重ねていくだけだな、と。もちろん飛び級のように進めたら理想ですけど、それは本当に限られたことです。それよりも、自分に求められていること以上を返していく。そのためにもがいたり、学び続けたりすることのほうが大事だと感じています。
 
僕が映像の仕事をやらせていただいている理由の一つに、自分を知ってもらうことで、舞台に興味を持ってくれる人が増えるんじゃないか、という感覚があるんです。作品を通して興味を持っていただいて、その方が劇場に足を運んでくださる。そうやって舞台がもっと盛り上がっていったらうれしい。
 
そのためには、舞台を観た時にがっかりされないよう、常に技術を磨き続けなければいけない。どんな作品や役が誰かの心に届くかわからないからこそ、固定観念に縛られず挑戦していきたいです。
 
舞台だけに立っていたころの自分には、まだその視点がなかった。今、ありがたいことに映像の仕事も頂けている。その環境を前向きに生かしながら、演劇界全体が盛り上がる力になれたらと思っています。そのために、中途半端では終わらせたくないです。

『わたしの書、頁を図る』は7月3日(金)〜19日(日)、東京・紀伊國屋ホールにて上演される。詳細は下記公式サイトにてご確認を。
https://www.watashinosho.jp

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