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Stage INTERVIEW

『ブラッド・ブラザーズ』母親役で初共演! 安蘭けい×瀬奈じゅん 宝塚同世代ほっこり対談

2026年3月から上演のミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』に出演する安蘭けいさんと瀬奈じゅんさん。宝塚で同時代を駆け抜けたお二人が母親役を演じる。宝塚時代、『ベルサイユのばら』で特別出演として別日程で同じ役を演じたことはあったけれど、舞台上で真正面から共演するのはこれが初めて。
ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』は、双子の兄弟の物語でありつつ、母としての愛と運命、そして再会の物語でもある。笑いの絶えないインタビューの中、お二人の舞台人としての信頼と情熱が垣間見えた。(取材・文/小柳照久、撮影/増田慶)

「やっと同じ舞台に立てる!」初共演で響き合う運命のハーモニー

――お二人の共演は意外にも初めてですね。
安蘭 そうなんですよね。宝塚時代は雪組公演の「ベルばら」で二人ともアンドレを演ったけど、あさこ(瀬奈じゅん)とは絡みゼロ。やっと一緒にお芝居できるって思ったよね。
瀬奈 私も同じです。お稽古場から一緒なのも初めてで、とうこさん(安蘭けい)は稽古場ではどんなふうに取り組まれるのかなぁって今からドキドキです。
安蘭 『ブラッド・ブラザーズ』でようやく共演できるってなったら、すぐに夏に『ディア・エヴァン・ハンセン』でも共演することになって、いきなり続くけど(笑)。
瀬奈 退団してから何年もご一緒することがなかったのに、急に(笑)。私ね、この役のオファーの時にとうこさんのお名前を見つけて、“これは絶対やりたい!”って思ったの(笑)。まずは『ブラッド・ブラザーズ』の稽古場でしっかり観察します!
安蘭 (笑)、太字でお願いします!

――安蘭さんの役は、庶民の母・ミセス・ジョンストン。宝塚時代は華やかなキラキラスターだった安蘭さんが、等身大の母に挑むのが見どころです。一方、瀬奈さんが演じるのは、上流階級の母・ミセス・ライオンズ。宝塚のトップスターをはじめ、多くの女優が演じてきた人気の役どころとなっています
安蘭 『ブラッド・ブラザーズ』は初演が1983年で、イギリスでは24年間もロングラン。それだけ人の心を動かし続けてきた作品なんですよね。
瀬奈 “格差”とか“運命”というテーマが根底にあるけれど、とても人間的で、母親の愛や選択の物語だと思います。
安蘭 宝塚時代は華やかな衣裳の役が多かったけど、退団してからは私、真逆の役が増えたかな。今はミセス・ジョンストンみたいな生活感のある役は落ち着くし、“貧しさの中の強さ”を出したいですね。
瀬奈 私は逆なんですよね。宝塚時代は庶民的な役が多かったのに、今はお金持ちマダム的な役が多い(笑)。とうこさんと役どころが逆転してます(笑)。
安蘭 ホントだね(笑)。でも、退団後しばらくは娘役でもなく母親役にもまだ早い…そんな“中間期”を経てきたけど、今は二人とも、“母親役”って言葉が自然に馴染む年代になったよね。人生の厚みがそのまま芝居ににじむ感じかな。
瀬奈 昔の私たちなら想像もできなかった役を、今は自然に楽しんで演じられるのが面白いですよね。

ブロードウェイのシリアス路線も楽しむ二人

――本作は80年代のミュージカルのなかでも、シリアス路線の作品です。
瀬奈 昔のブロードウェイって、夢いっぱいのハッピー・ミュージカルが盛んで、観てるだけでワクワクしませんでした?
安蘭 そうそう! キラキラで目が痛くなるくらいだった(笑)。でもその後『RENT』が出てきて、ロックで社会派、骨太の作品が増えたよね。確実に流れを変えたと思う。そう考えると、『ブラッド・ブラザーズ』は初演1983年なのに、社会派な作品だから、時代を先取りしているよね。
瀬奈 でも80年代の作品だから、重すぎず、笑いもある。考えさせられるけど、肩が凝らないというか。
安蘭 リアルだけど観やすいんだよね。このバランスが絶妙で。なかなかないタイプだから、テンションが上がる!
瀬奈 社会派なのに重くない。そこが大事なんですよね。あ〜、早く稽古が始まらないかな。早くとうこさんと一緒に稽古場で過ごしたい! 
安蘭 私も。楽しみすぎて、夜眠れなくなっちゃうかも(笑)。

――お二人は初めての作品の時には、どのように役や歌に取り組まれるのでしょうか。
安蘭 私の場合は、稽古でまず芝居の感情を丁寧に積み重ねてから歌に入ります。舞台全体の流れを感じながら歌うと、セリフも歌も自然につながるんです。本読みで形を決めちゃうと共演者とのリズムが合わなくなる。一緒に作りながら生まれる瞬間を大切にしたいと思っています。
瀬奈 台本や演出を信じて、最初から歌で頑張ろうとしすぎないことが大事ですね。無理に伝えようとすると、かえって届かなくなる。
安蘭 今回、作品ラストの大ナンバーを担当するんだけど、譜面にはすでに感情が書き込まれているから、その通りに歌うだけで自然に心が動く。最後まで丁寧に積み上げたいですね。
瀬奈 歌詞を伝えようとしすぎると歌えなくなるけど、譜面通りに歌えば自然にその感情になるんです。音符がそのまま心の抑揚になると『エリザベート』出演時に教わったんですが、そのことを今も大切にしています。
安蘭 歌も芝居も、シンプルに“心で”向き合うのが大切よね。作り込みすぎない、余白を残す感覚。
瀬奈 そうそう。舞台上の瞬間、瞬間で生まれる空気を大事にしたいですね。

次に演じるのはミッキーとエディ!?

――「ブラッド・ブラザーズ」でお二人が、自分自身の役以外をやるとしたら、どの役をやりたいですか? 逆の立場の母親役? それとも元男役として、やっぱりミッキーとエディ?
安蘭 (笑)。もしミッキーとエディを演じるなら…私がエディで、あさこがミッキーかな。
瀬奈 うんうん、男役だったら絶対そっち(笑)。
安蘭 兄弟役って、母親として感情が揺さぶられるのよ。血のつながりとか、運命の皮肉とか…舞台上でドキドキしちゃう。
瀬奈 そうそう! 母親として、兄弟の葛藤がリアルすぎてハラハラするのよね。でも、役者として演じるとまた違う角度で楽しめる。
安蘭 この作品って、どの役を演じても見どころがいっぱいだから妄想が止まらないの(笑)。次はどの役をやろうかとか、つい考えちゃう。
瀬奈 観客としても、役者としても楽しめる…そこが『ブラッド・ブラザーズ』の魅力です。私たちもまだまだ妄想で盛り上がれそう(笑)。
安蘭 還暦を迎えたら、本当にミッキーとエディで出てみようか、なんて妄想もしたり(笑)。
瀬奈 どっちの還暦? とうこさん?
安蘭 私かな? 子役時代の兄弟を演じるのは…さすがに無理かな。
瀬奈 宝塚出身だと、子役が上手な人は多いですけどね。とうこさんもそうでしたよね。
安蘭 うん、なぜか子役が多かった。
瀬奈 本編では無理でも、特別企画でなら案外夢がかなうかも(笑)。
安蘭 お客様も私たちも楽しめるしね。
瀬奈 未来の妄想は尽きないですね。でもこういう遊び心も舞台の魅力のひとつかも(笑)。

――最後に、お客様に向けてメッセージをお願いいたします。
安蘭 深刻なテーマだけど、作る過程は楽しい。新しい“令和のブラッド・ブラザーズ”をお届けしたいです。
瀬奈 若いキャストたちからも刺激を受けられるでしょうし、再演を重ねていける作品にしたいです。
安蘭 大変な稽古も、あさこと昔一緒に過ごした時間を思い出しながらなら、楽しく乗り越えられる。そうやって一緒に作る時間が、舞台の厚みになっていくんです。
瀬奈 とうこさんとやるのももちろん楽しみだし、若手のフレッシュな力も楽しみです。令和の新しい『ブラッド・ブラザーズ』が、次の世代へバトンを渡せる作品になったら嬉しいです。

ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』東京公演は2026年3月9日~4月2日シアタークリエにて、大阪公演は4月10日~12日サンケイホールブリーゼにて上演されます。
詳しくは公式WEBサイトをご覧ください。
https://www.tohostage.com/blood_brothers/

 

 

 

 

 

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