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Stage INTERVIEW

望海風斗「諦めない気持ちが一番大切」。マリア・カラス役でストレートプレイに初挑戦

20世紀最高のオペラ歌手と謳われたマリア・カラス。彼女を敬愛するテレンス・マクナリー(『ラグタイム』『アナスタシア』などの劇作家)が、愛を求め芸術を追求し、挫折を乗り越えたマリア・カラスの人生を浮かび上がらせる舞台『マスタークラス』が、26年ぶりに日本で上演される。主演の望海風斗さんに、初のストレートプレイに挑む意気込み、宝塚退団後の心境の変化、2025年の目標などさまざまな話を聞いた。
(取材・文・撮影/小野寺亜紀)

宝塚を退団して4年、「自分らしく、呼吸がしやすくなりました」

――今年の4月で宝塚歌劇団を退団されてから丸4年となりますね。第48回菊田一夫演劇賞を受賞されるなど素晴らしいご活躍ですが、この4年どのような思いで歩んでこられたのでしょうか。

目の前のことに必死に向き合い、走ってきた感じがします。ちょうど退団して3年経ったあたりから、自分らしく、呼吸がしやすくなりましたね。いろいろな挑戦をさせてもらい、中身の濃い時間を過ごすことができて幸せでした。

――呼吸がしやすくなる前は、大変なことも多かったのですか?

はい。なんて言ったらいいのでしょう、自分らしく芝居ができないというか、どこか居心地が悪く、違和感があるというか……。宝塚や男役というフィルターがなくなったなかで、リアルさを表現するのに時間がかかりました。

――昨年から今年にかけてのミュージカル『next to normal』や、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』など、同じ作品に二度挑戦されることもありましたが、見えてくるものは違いましたか?

全然違いました。2022年の『next to normal』の際は、必死過ぎて理解しきれていない部分もあったように思うのですが、再び挑戦できて、作品のことも周りの人のことももっと俯瞰して、より深く見られるようになりました。そうしてようやく落ち着いてきたかな、と思った矢先に『マスタークラス』というだいぶ大きな挑戦をすることに!

――以前、野田秀樹さんとの対談で、「ストレートプレイも怖いけどやってみたい」と仰っていましたね。いつかチャンスがくれば、と思われていたのでしょうか。

そうですね。挑戦しなければ、ずっと同じ自分のままかなと思っていたので。ただ、マリア・カラスはオペラ歌手なので、私が彼女の内側を理解できるのか。そこはすごく難しいのではないかと思いました。

――『マスタークラス』は黒柳徹子さんが主演されてから、日本では26年ぶりの上演となります。

きっと難しい作品なので、皆さんなかなか挑戦できなかったのかなと思うと、「やってしまった……」と(苦笑)。

――いえいえ! 望海さんといえば“歌”そして“音楽”というイメージがあるので、十分説得力があると思うのですが、歌手の役でありながら劇中では全く歌わないのですよね。

はい、マリア・カラスさんの役で歌があったら、きっと演じる勇気がなかなか出ませんでした(笑)。でも歌で感情表現をしてきた方が、今度は歌について、人生について、言葉で伝えていくという役柄は新たな挑戦だなと思っています。

――これからお稽古が始まるとのことですが、今の時点でマリア・カラスの印象は?

本当に“生き抜いた方”だなと思いますね。素晴らしい才能があるのはもちろん、その才能を開花させ、活かせたのは努力があるからこそ。その努力の積み重ねが彼女自身の強さに繋がっていると感じます。きっとそうならざるを得ない背景もあったのだろうけど、闘い抜いてきた強さがすごくあると思います。

――世界的な歌姫になった後、いろいろな挫折も経験した彼女が、ジュリアード音楽院で若きオペラ歌手たちにマスタークラス(公開授業)を行うという内容で、彼女ならではの言葉がたくさん溢れているようですね。

すごく厳しいことを言っているようで、とても大切な言葉、ハッとさせられる言葉が多いです。やはり寝て起きたらすぐ一流になれるわけではなく、一流と言われる方たちは、それだけの厳しさのなかで闘っていかなければいけないのだなと教えられます。

――特に印象的な言葉はありますか?

いろいろあります。きっと人によってそれぞれに響く言葉や感じるところがあると思います。この作品は“言葉”がすごくキーとなっている舞台。歌だけではなく、人生についての言葉にもハッとさせられますし、舞台劇術にかかわらず、さまざまなお仕事に携わる方にも通じるところがあるはずです。マリア・カラスの言葉がひとつでも今の皆さんの心に刺さればうれしいですし、そうなれるように、言葉一つひとつをきちんと掘り下げていきたいです。

(次ページにつづく)

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