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Stage INTERVIEW

関西弁の掛け合いが楽しい『一富士茄子牛焦げルギー』河原雅彦×岡﨑彪太郎

リーディングアクト『一富士茄子牛焦げルギー』が、12月に大阪と東京で再々演される。原作は画家・絵本作家のたなかしんさんによる同名小説で、第53回日本児童文学者協会新人賞受賞作。夢で“おとん”が突拍子もない願いをしたことから展開する、笑いと涙に満ちた家族の物語だ。演出の河原雅彦さん、今回初めて“ぼく”役に挑む岡﨑彪太郎さんに本作について語ってもらった。
(取材・文/小野寺亜紀、撮影/須佐一心)

「橋本さんも羽野さんも関西の方で親近感もあり、安心してできそうな気がします」(岡﨑)

「プレッシャーをかけるわけじゃないけど、彪太郎くんにかかっている(笑)(河原)

――2021年の初演、2022年の再演では小柴陸さん(AmBitious)が“ぼく”を演じられましたが、今回は岡﨑彪太郎さん(Lilかんさい(りとるかんさい))が“ぼく”役に初挑戦されます。岡﨑さんにとって所属事務所の先輩が演じられていた役ですが、今のお気持ちは?

岡﨑:お手本にできるものがあるのはすごくいいことですが、逆に真似になってしまうのではという不安もあるので、自分のものにできるように頑張れたらと思います。僕自身、同じ事務所ではない方と演技をする経験はなかったので緊張しますが、得られるものも大きいのかなと、ワクワクした気持ちでいっぱいです。

――河原さんからご覧になって、岡﨑さんの現時点での印象などをお聞かせください。

河原:今日、代役の方に“おとん”“おかん”として入ってもらい、初めて読み合わせをしたんだよね。

岡﨑:はい!

河原:彪太郎くんとは今日が初対面なのだけど、受け答えとかとてもしっかりしている印象です。外部の役者さんと仕事をするのは初めてで緊張している感じもあるけど、(共演の)羽野さんやさとしさんは、「緊張するだけ損した」と思うような、あったかいゆるりとした方々だし(笑)、伸び伸びやってくれたらいいなと思っています。

岡﨑:お二人との共演はすごく嬉しいです。いつもテレビで拝見している、僕にとっては“すごい人たち”という印象。橋本さんの声なんて、めちゃくちゃ格好いいじゃないですか! 置いていかれへんようにしないと、というプレッシャーがありますが、お二人とも関西の方で親近感もあり、安心してできそうな気がします。

――河原さんはこの作品が初の朗読劇の演出でしたが、初演からどのように作っていかれたのでしょうか?

河原:朗読劇って何かルールがあるのかさえ分からなかったのですが、どうやらルールはないらしいと。それで自分なりに自由度を高めようと思いました。初演で“おとん”を演じた生瀬(勝久)さんもそうですが、舞台俳優さんはどうしても動きたくなるんですよ。だから朗読と芝居の“いいところ取り”にしようと思いました。“リーディングアクト”という言葉からもイメージが湧きましたね。

――絵本作家・たなかしんさんの絵(映像)も舞台にたくさん登場していましたね。

河原:この作品で恵まれていたのが、作家さんが絵も描けるということ。ぜひ舞台にも使いたいと思い、しんさんに「こういう絵を描いて、あんな絵も描いて……」と、東京から大阪へ連絡すると、翌日には僕が望んだものを描いてくれたりして。しんさんがとてもいい方で、公演にすごく協力してくださったんです。本当に豊かな現場で、豊かな作品になったなと思います。

――今回新たにブラッシュアップしようと思われている部分は?

河原:演出上の見せ方はたぶんそのままになると思います。やはり俳優が代わることで、十分昨年とは違うものになるはず。演じる方の個性によって、アプローチが自然と変わってくるので。プレッシャーをかけるわけじゃないけど、彪太郎くんにかかっている(笑)。

岡﨑:(笑)。僕自身朗読劇は観たこともなかったので、本を読みながらどういう表情を作っていくのだろうとか、初めてのことばかりですが、頑張らなければと思っています! 今は昨年の舞台の映像を観たり、原作本を読んだり、15歳の役なので髪色を落ち着いた感じにしてみたりしました。

僕自身15歳のときを振り返ると、芸能活動を始めて3年目ぐらいで、ちょうど「Lilかんさい」というグループができたタイミング。夢しか見ていない時期でした。反抗期がなく穏やかだったのですが、今もそのときからいい意味で変わっていないかなと思います。

――この作品の“ぼく”は、おとんとの生活、おかんや友人たちとの交流などを通して変化していきます。本格的な稽古に入る前ですが、今の時点での“ぼく”役の印象や意気込みを教えてください。

岡﨑:親がいなくなる、友達の作り方が分からないといった、僕自身が経験したことのないことが多く難しさも感じますが、なんとか成功させたいです。もう僕は19歳なんですけど、15歳だった思春期の自分を思い出し、河原さんの言葉を聞きながら頑張っていきたいです。また、今まで僕の演技を観たことがある方には、今回で明らかに変わった、成長したなと思ってもらいたいですし、初めての方にはこんな演技をする子なんだと、名前と顔を覚えていただけたら嬉しいです。

――改めて、作品の魅力はどういったところに感じますか?

岡﨑:初めて読んだときから大好きになり、「自分の身にこういうことが起きたらどんな気持ちになるんやろう」と、すごく考えさせられる本だなと思いました。最初は「一富士茄子牛焦げルギー」という文字に、「なんだこれは!?」と思ったのですが、読み終わったときには「全部そういう意味だったんだ!」と、忘れられない言葉になったのが印象に残っています。物語としてとても素敵なので、お客さまにも楽しんでいただけたらと思います。

河原:関西弁の親子の掛け合いが、音で聞いていてもすごく生き生きとしていて、朗読劇というスタイルでも退屈せずに観ていただけると思います。途中でファンタジーが入ってきて、「そういう物語の転び方をするんだ!」と、絵本作家のたなかしんさんらしいオリジナリティーが存分に発揮されています。コンパクトな時間で観やすく、楽しくて深い部分もある物語で、本当に笑って泣ける作品かと。俳優さんの魅力も存分に出ていると思うので、朗読劇だからと身構えず、ぜひ劇場で気軽に触れてください。ほんわか心温まる年越しを迎えられるんじゃないかと思います。

リーディングアクト『一富士茄子牛焦げルギー』

大阪公演/2023年12月21日(木)~12月24日(日) 松下IMPホール
東京公演/2023年12月26日(火)~12月28日(木) 草月ホール

原作:たなかしん
演出:河原雅彦
脚本:野上絹代
音楽:瓜生明希葉
出演:岡﨑彪太郎 羽野晶紀 橋本さとし

公式HP https://www.ricomotion.com/1fuji2023/

 

 

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