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Stage INTERVIEW

『リア王』で初舞台に挑む鈴鹿央士。「やるからにはいいものにしないといけない」

気鋭のイギリス人演出家、フィリップ・ブリーン氏が上演台本・演出を手掛け、大竹しのぶさんが初の成人男性役であるタイトルロールを演じる『リア王』。シェイクスピアの戯曲を現代的な視点を取り入れて舞台化する注目作で、鈴鹿央士さんが初舞台を踏む。俳優デビューとなった映画『蜜蜂と遠雷』(2019年)で型破りなピアニストを演じ、多くの映画賞で新人賞を受賞。ドラマ『silent』など映像作品での活躍が続く彼が、初舞台にのぞむ想いや、弟の陰謀に巻き込まれる今回のエドガー役、家族についてなど、明るく語ってくれた。
(取材・文・撮影/小野寺亜紀、ヘアメイク/宮本愛(yosine.) 、スタイリスト/朝倉豊)

「生でお芝居をしている俳優さんたちは、自由でのびのびしている」

――本作が初舞台ですが、オファーを受けたときのお気持ちは?

僕と同じ事務所に鈴木杏さんや勝地涼さん、劇作家で映像作品の監督もされている加藤拓也さんなど、舞台で活躍されている先輩方がいて、舞台を観る機会も多かったので、ばくぜんと「いつか自分も舞台に立ってみたいな」という思いがありました。だから「いよいよ来たか!」というのと同時に、まさか最初にシェイクスピアをやるとは思っていなかったので、大丈夫かなという不安もありました。でも大竹しのぶさん、宮沢りえさん、成田凌さんなど、共演者の方のお名前を見て、この方々と一度きりしかない初舞台を経験できるなんて、こんなに幸せなことはないなと思いました。

――お稽古はこれからとのことですが、リア王を演じられる大竹しのぶさんの現時点での印象は?

映像作品もたくさん拝見していますが、すごくエネルギーのある方だなと思います。一度、知り合いの監督さんのところに挨拶へ行ったとき、同じスタジオで大竹さんが撮影をされていて、監督が「大竹さんのお芝居を見ていきな」と誘ってくれたんです。その演技を拝見したら、本当にすごくて! 監督が「それまで普通に喋っていても、スタートとなったら、あんなすごいお芝居をするんだよ」とおっしゃっていて、その瞬発力みたいなものに驚きました。今回、僕が演じるエドガーとリア王とのシーンもありますし、「やるからにはいいものにしないといけない。頑張ろう!」という気持ちです。

――リア王の娘である三姉妹は、宮沢りえさん、生田絵梨花さん、安藤玉恵さんが演じられます。

とても楽しみです。宮沢さんは最近、舞台『昭和から騒ぎ』でも拝見しました。今回のお芝居とはまた違う雰囲気ですが、その舞台を観ていて、生でお芝居されている俳優さんたちは、すごくのびのびしているなと感じました。台詞とか決まりごとがあるのに、その中で自由にのびのびとされている。ワンカットずつ撮っていく映像と違って、舞台はひとつなぎでずっと時間が経過していくからなのか……。今回、僕自身もお芝居をしながら俳優さんたちのそういう空気感を、目の前で感じられるのがとても楽しみだし、自分もそうありたいなと思います。

――現代に通じる戯曲になっているそうですが、どのあたりが心に響きましたか?

『リア王』は人間の裏切りの話でもあるじゃないですか。どの言葉を信じ、どういう人を疑うべきか――。甘い言葉をくれる人がいい人かというと、そうではないし、今の時代でも言葉はすごく大事なコミュニケーションツールだなと思います。対面だけでなく、SNSでの言葉のやり取りもある。文字だけを見て、相手のすべてを信用できるのか、というところを考えないといけないですよね。

――そうですね。

この作品は人間の本質や闇の部分も描かれていて、生身で演じるお芝居だとさらに、観る人によって感じ方が変わってきそうな気がします。人を信じる信じないより、もっと深いテーマがあり、人生経験によって浮かんでくる景色や受け取る情景が違うから、現代までこうして演じ続けられているのだと思います。そういうところを見つけるのも楽しみです。今はまだ、足の親指の爪の先ぐらいしか入りこめていないですが、きちんと両足がついたときに見える景色があるだろうなと。

――鈴鹿さんご自身、“言葉”がらみで思い出すことは何かありますか?

僕は上京して3ヵ月ぐらいで、デビュー作の映画『蜜蜂と遠雷』のオーディションに受かったのですが、そのときの事務所の社長さんの言葉です。プレッシャーをかけられたなと(笑)。今考えるとすごく大きな作品の素敵な役を、お芝居が初めての新人に任せるってチャレンジングなことだとわかるのですが、当時僕は何も考えていなくて、「オーディション受かった、ヤッター!」と思っていたら、社長さんに「あなたにこの役をさせるって、相当な賭けだからね」と言われて。“おめでとう”と同時に、“賭けなんだからちゃんとやりなさいね”みたいに言われて、「はい」と答えたものの、「そんな、知ったこっちゃないよ」と思いました(一同笑)。

――そのとき、何歳だったのですか?

18歳です。今は社長さんの言うとおりだと思うし、いろいろな言葉を掛けてもらったおかげで成長できました。また、ほかの作品では、演技をした後に監督が小走りで駆け寄ってきて、「へたくそ。今の演技はオッケーだけど、オッケーじゃないオッケーだからな」と言われて。悔しさみたいなものも芽生えたし、そういう言葉は心に残るけど、今に繋がっているので大切ですよね。

(次ページへつづく)

 

 

 

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