(取材・文/小野寺亜紀)
「読んでいてとても楽しい、スッと入ってくるセリフ」
――まずおふたりの最初の出会いから教えてください。
鈴木保奈美(以下、鈴木):私がいろいろな舞台を観劇するなかで、冨坂さん主宰のアガリスクエンターテイメントの公演を観て、「なんて面白いことをやってる人たちがいるんだろう!」と、そこで初めて知ったんです。「いつか一緒に舞台に出られたらいいな」と思うようになりました。
冨坂友(以下、冨坂):東京の100席もないぐらいの小劇場でやっていたときに、保奈美さんが突然いらしたので「嘘だろ!」と思いました。
鈴木:(笑)。
冨坂:それが2018年で、そのあと一緒に演劇の練習みたいなことをやり始めたんですよね。
鈴木:共通の知り合いの方もいて、少しずつお話をさせていただくようになりました。
冨坂:でも2018年から2、3年と、結構年数が経っていました。皆さんでいろんな台本を読んだりと、少しずつご一緒させていただくようになって。
――それは鈴木さんが俳優仲間とワークショップなどをされている「部活」でしょうか?
鈴木:そうです。冨坂さんはそこで、いつも淡々としていて(笑)。
冨坂:みんなこんな感じではないですか!?
鈴木:作家さんって個性の強い方もいらっしゃるけど、冨坂さんは「クラスの中ではおとなしく座っているようなタイプ」の方ではないかなと。ただ、黙っていらしても、すごい見られてるんだろうなとは感じます。
冨坂:そういう、ボーっと見てるときは、だいたい何も考えてないです。
鈴木:そうなんだ(笑)。
――おふたりはその後、『生ドラ! 東京は24時-シンガロング-』で本格的に組まれ、2024年の『逃奔政走-嘘つきは政治家のはじまり?-』が、念願の舞台初タッグとなりました。鈴木さんが感じられる、冨坂さんの作品の魅力は?
鈴木:まず冨坂さんがお書きになるセリフ、言葉遣いが本当に好きです。読んでいてとても楽しいですし、スッと入ってくるセリフなんです。長くて量も多いのですが、不思議と覚えやすくて。
冨坂:僕はそんなに、自分の文章やセリフに特徴があるとは思っていなかったです。面倒くさい理屈を、なるべくウケるように書いたら自然とこうなった、という感じです。

「手作りすぎる」稽古場と、無茶ぶりの行方
――舞台『逃奔政走』は、家族や政治の話などが盛り込まれていたコメディでしたが、振り返るといかがですか。
鈴木:冨坂さんがこういう視点で地方の自治体の政治を見てらっしゃるんだな、ということ自体が面白かったです。作っていく過程が非常にアクティブで、出演者みんなで意見を出し合って。手作り感があり、楽しかったです。
冨坂:あの規模の興行とは思えないぐらい、「劇団すぎる、手作りすぎる」制作過程になってしまいました。
鈴木:(笑)。
――どんなところが「手作り」でしたか?
冨坂:稽古場が、一般的な脚本家・演出家と主演女優という関係の感じじゃないんですよね。
鈴木:みんなで意見を出し合ってました。
冨坂:自由に「こうした方がいいんじゃない?」と、役のことも全体のことも言い合って。で、便宜上僕がどれかを選ぶ。そして保奈美さんにその決定した無茶ぶりが降りかかる、というような感じでした。
鈴木:稽古の半ばで相島(一之)さんが、「僕はこれ、ちょっと違うと思う」とおっしゃって、かなりガラッと大きな変更がありましたよね。冨坂さんは「そうですね」とやっぱり柔軟に対応されるので、「そこ変えるんだ!」とびっくりしました。
――舞台を拝見しましたが、冒頭、県知事を演じる鈴木さんがスッと幕前に現れ、観客に話しかける演出から始まるのにも驚きました。
鈴木:あー、よかったです! 作戦にはまっていただいて、ありがとうございます(笑)。
――(笑)。そこから観客の集中力が続いた感じで、最後はスタンディングオベーションでしたね。
冨坂:やっぱり舞台の第一声を何かの音楽や前説ではなく、保奈美さんの声で始めるべきだと思っていました。政治家の話をやる以上、演説から始まって演説で終わらないと嘘だよな、と。それで頭と終わりに演説を配置しました。
――いろいろな面で鈴木さんの頼もしさを感じましたか?
冨坂:そうですね。長い演説部分、たぶん最初に台本をご覧になったときは、「これで楽しい展開に着地するんだろうか」と、不安に思われたと思うんです。
鈴木:うんうん。
冨坂:でもコメディと言っているからには笑いを取ってもらいたい。僕や長年コメディをやっている相島さんが、「これはスタンダップコメディ的な笑いも取れるのではないか」と、うっすら思っていることをご説明すると、すんなりチャレンジしていただけたので、僕は保奈美さんこそ柔軟な方だと思っています。いろんな無茶な取り組みに応えてくださるので、じゃあ今回はもうちょっと無茶なことをお願いしてみようと。
鈴木:アハハハ!
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