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Stage INTERVIEW

『マイ フレンド ジキル』に挑む柚希礼音。「探せば人には見せていない自分がいる」

ロバート・ルイス・スティーヴンソン著『ジキル博士とハイド氏』をモチーフにした、“語り”と“踊り”が交差するダンス演劇『マイ フレンド ジキル』が、12月に東京と大阪で上演される。元星組トップスターの湖月わたるさんと柚希礼音さんが、回替わりで二役に挑戦。宝塚歌劇団退団後、本格的な初共演となるおふたりの深い関係性がうかがえるエピソードや、温かく見守ってきた“星を継ぐ者”、礼真琴さん・暁千星さんへの想いなど、さまざまなお話を柚希礼音さんに聞いた。
(取材・文/小野寺亜紀、撮影/吉原朱美)

星組トップ時代「わたるさんの教えが大きかった」

――柚希さんは宝塚歌劇団の新人公演で、湖月さんのお役を4回演じてらっしゃいますね。

わたるさんのトップお披露目公演(2003年『王家に捧ぐ歌』)で、私が新人公演の初主演をさせていただき、そのあともずっと湖月さんの役をさせていただいて。当時ピヨピヨな私はたくさんお世話になり、育てていただきました。わたるさんは人間味溢れるトップスターさんで、兵士役など大勢の人に、ご自分から毎日芝居を掛けられていたんですよ。すると下級生も「次はきちんと返せるように」と思って、ぼんやりしていたところから立ち上がり出す。トップに立つ方のそういう舞台に向かう姿勢や、組のまとめ方など、わたるさんが大切にされてきたものすべてを、私がトップになったときも大切にしていました。当時星組がひとつになれたのは、わたるさんの教えが大きかったです。

――ダンススキルの高いおふたりですが、ダンサーとして学ばれたことは?

私は下級生の頃、バレリーナとしての踊りは踊れましたが、男役として格好いい踊りは踊れず、そこをわたるさんからたくさん教えていただきました。ファンの方が「カッコいい!」と思う手の出し方すらわからなかったので、一つひとつ真似をしていくところから始めました。

――そんな湖月さんと本作に臨む心境を教えてください。

満を持しての共演がふたりだけの舞台だなんて、とても幸せで、めちゃくちゃ楽しみです! わたるさんときちんと共演するのは19年ぶり。『REON JACK 4』にゲスト出演していただいたことはあったのですが、そのとき「共演は1週間ぶり?」というほどの感覚になりました。ふたりとも前を見ながら踊っていても、お互い横にいる相手が見えていて、すごく踊りが合うんです。それは宝塚の教えで、ラインダンスのとき、前を見ているふりをしながら横を見なければいけない練習をするから。そのとき、私以上にわたるさんが私を見てくださって、とても感動しました。今回、ふたりで踊るところがたくさんあります。本番は回替わりで演じますが、両方の役をふたりで作っていくので、お稽古からとてもいい時間になるだろうなと思っています。

――2021年、s**t kingz の shoji(持田将史)さん・Oguri(小栗基裕)さんの『マイ フレンド ジキル』を拝見しましたが、長年一緒に活動しているふたりの信頼関係が漂う、素敵な舞台になっていたのを覚えています。

そうですよね。『マイ フレンド ジキル』というタイトルの通り、アタスンもジキルもお互いを想い合っているからこその行動がたくさんあるので。“ジキルとハイドの物語”と聞き、少し怖いイメージもあったのですが、とても心温まる作品です。ひとりはジキルとハイドになって踊りで表現し、もうひとりはアタスンとして語り手となり5役をやるという、新しい形の演劇ですよね。

――今回も瀬戸山美咲さんの演出のもと、湖月さん、柚希さんならではのものになりそうです。

私とわたるさんも何十年かけての関係があります。『REON JACK 4』で少し一緒に踊っただけでも、いろいろなことが走馬灯のように思い出されて感動するのに、アタスンやジキルを通して、どんな気持ちになるのか! 友達役とはまた違う絆があるから、そのあたりを活かしてやっていきたいなと思います。

――語り手のメインは弁護士のアタスンになりますが、この役はご自身に寄り添って演じられそうですか?

アタスンは、ハイドがジキルにとって危険な人物と感じ、ジキルには内緒でハイドを探そうとしますが、それはジキルが大切だからこそ。そこは、わたるさんに対しての私の想いに通じます。また、稽古場で「わたるさんが語り手としてこの役をこう読むのか」というのがわかりますし、そのへんも理解し合いきちんと作っていきたいね、とわたるさんと話しました。お互い「こう読む」というのを確認しながら、進めていけたらと思っています。

――前回は舞台上にいる演奏者とキャストふたりとの即興シーンもありましたが……。

そうなんです! s**t kingzさんは(普段から)振付もされますが、私は即興のダンスはやったことがなくて、そういうのはやめてほしいです(苦笑)。もしそんなシーンがあったら、謎のこんな感じ(手を上げてユラユラ揺らす)しかできないです(笑)。

――(一同笑)。善と悪の二面性をもつジキルとハイドという役について感じることも、お聞かせください。

やはり人はみんな、いろいろな面がありますよね。私は宝塚の下級生のとき、“明るいお人好しキャラ”で通っていたのですが、『THE SCARLET PIMPERNEL』のショーヴラン役がまわってきて、「そのキャラクターでは絶対できない」「そのキャラクター以外の自分もいるでしょ?」と言われ、自分では「え、いない……」と思いましたが、探せば人には見せていない自分がいる、と気づきました。職場で見せている顔、家族にしか見せていない顔、本当の自分しか知らない顔。人間にはみんなあるんですよね。

――そういうことを感じさせてくれる作品ですね。

きっとジキルがいい子でいようと頑張り、我慢して育ったがゆえに、ハイドが生まれたのではないでしょうか。ジキルはかわいそうで辛いけれど、ハイドもかわいそうなところがありますよね。善と悪、というように簡単に分け切れないと思います。これからさらに小説や映画なども勉強して、人間味溢れるジキルとハイドを表現していきたいです。

日の出を見るのが好きになった『マタ・ハリ』公演

――語りもされる舞台ですが、これまで朗読作品へのご出演は?

朗読劇は2年前『ラヴ・レターズ』に一度出演したのですが、そのときすごく感動したんです! 思ってもみない感情が、本番にウワッと出てきてびっくりしました。演出の藤田俊太郎さんには「いろいろ作りこんだりしないでね」と、何度もお稽古で言われて。「目を通したい!」と思うけど「次に読むのは本番だよ」と。でも本にパワーがあると、声色を変えたりせず素直に読むだけで、舞台ができていくんだなと朗読劇で学びました。今回も心を大切に取り組みたいです。

――本作の前にはミュージカル『マタ・ハリ』に3度目の主演を果たされ、素晴らしい踊りも披露されました。マタ・ハリを演じることで、踊りへの向き合い方や想いに変化などありましたか?

(しみじみ)踊りが好きだな~と(笑)。私は幼い頃、恥ずかしがり屋だったのでバレエをすることになりましたが、踊っているときは恥ずかしくなかった。でも全幕もののバレエでお芝居をしなければいけないパートになると、急にまた恥ずかしくなって……。テクニックを見せる場面は好きだけれど、お芝居は絶対したくないと思っていたんです。それが宝塚歌劇団に入団すると、むしろお芝居を学んだほうが、踊りが楽しくなってきて。結局歌もそうですし、宝塚で学んだ日舞やタップ、すべての表現が「心なんだ」と繋がっていきました。

――今も心を大切に踊っているのですね。そんな柚希さんが最近特に大きな影響を受けているものや、刺激になっているものはありますか?

私、夕日を見るのが好きなのですが、『マタ・ハリ』公演中は、日の出を見るのが好きになりました。

――“マタハリ”はインドネシア語で“日の出”という意味だと、舞台でおっしゃっていましたね。

そうなんです! 今日も日の出ではないですけれど、朝日を見ながら髪の毛を乾かしていました(笑)。もともと夕日を好きになったきっかけは、ハワイで見た夕日。みんなハワイでは夕日を見ようとしますし、「今日も一日ありがとう!」と思えるのに、日本に帰るとビルに囲まれているし、忙しい夕方の時間だからか、夕日をゆっくり見ないですよね。でも日本でも夕日を見て「今日もいい一日だったな」と思いたい、と心がけるようになりました。

――素敵ですね。湖月さんと柚希さんは元星組トップスターということでお聞きしたいのですが、今年宝塚を退団された元星組トップスターの礼真琴さんと、星組の新トップスター・暁千星さんは、名曲「星を継ぐ者」ではないですが、柚希さんの背中を見つめてきたおふたりかと思います。今、どのような想いがありますか

まこっつあん(礼)の卒業は感動でした。本当に大輪の花を咲かせて、素晴らしい! あの宝塚音楽学校受験前にお手紙をくれていた子が、「宝塚音楽学校に受かった!」となり、星組にやってきた!と思ったら、私の役を新人公演でするようになり、こ~んなに大スターさんになって。「もう私の感動は、どうすれば伝わるんだろう!」というぐらい感動しました。公演も欠かさず観に行きました。卒業した後は、とにかく一度ゆっくり身体を休めてほしいなと。きっとお仕事がいっぱいあるだろうけど、「一度ポケーッと休むんやで」と言いました(笑)。

――暁さんはこの秋、トッププレお披露目の全国ツアー公演をされていましたね。

その『ダンサ セレナータ』は私もさせていただいた作品でしたし、当時のメンバーと富山まで観に行きました。ありちゃん(暁)は私たちの時代の星組をすごい観てくれていたようなので、うれしいです。月組から組替えしてきて、星組のことをいっぱい学びたいと言ってくれたので、いっぱい教えてきました(笑)。星組の良さと、月組から来た良さの両方があると思うので、そのありちゃんが率いる新しい素敵な組を作ってほしいですね。

――最後に『マイ フレンド ジキル』への意気込みをあらためてお願いします。

2025年は私にとってすごくいい1年で、いろいろなことに挑戦し、自分自身とても変化できた1年でした。その締めくくりが『マイ フレンド ジキル』というのがとてもうれしいです。『マタ・ハリ』でかなりいろいろなことを経験できたと思っていますが、そこからまたひとつ、湖月わたるさんとふたりの念願の舞台で終われるなんて最高です。精一杯頑張りますので(笑)、年末の皆さまお忙しい時期になりますが、ぜひ両パターン観ていただけたらうれしいです。

 

『マイ フレンド ジキル』

東京公演/2025年12月16日(火)~12月22日(月) よみうり大手町ホール
大阪公演/2025年12月27日(土)~12月29日(月) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

上演台本・演出:瀬戸山美咲
出演:湖月わたる 柚希礼音
ギター:jin tanaka(back drop bomb)飛田雅弘

公式HP https://myfriendjekyll2025.com

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