柚香さんの出演決定に「そういう作品をやれと、お芝居の神様が言っているのだと思いました」(いのうえ)
旗揚げ45周年を迎える劇団☆新感線の記念興行第1弾は、『ミナト町純情オセロ〜月がとっても慕情篇〜』(2023年)以来の新感線登場となる、青木豪さんの書き下ろし。鬼が棲む平安の世を舞台にお伽噺のようなファンタジーが誕生する。
いのうえひでのりさんは、かねてより民話伝承を題材にした作品をやりたいと希望。青木さんがもともと民話を元にした鬼の物語をあたためていたのと、元宝塚歌劇団花組トップスター・柚香光さんの出演が決まったことで、「これはそういう作品をやれと、お芝居の神様が言っているのだと思いました」といのうえさんは打ち明ける。「民話は実際の事件のメタファーだったりするから、生々しいところがあるけど、そこをきちんとやりたいなと思っている。まあ、ファンタジーですけどね」(いのうえ)。
2024年5月に宝塚歌劇団を退団後も、ソロコンサート『TABLEAU』、宝塚OGたちによる『RUNWAY』、『マチュー・ガニオ スペシャル・ガラ ニューイヤーコンサート』など、次々とステージに立ち続けてきた柚香光さんは、本作が退団後初の芝居となる。紅子(べにこ)役という役柄にちなんでか、紅色のワンピーススタイルで現れた柚香さん。「私が演じます紅子は鬼でございます。平安時代の人間界に生きる鬼、そして人の妻であり、子の母であります」と、これまで演じたことがない役柄に挑むという。
「男性とお芝居をするのは初めてで、そういった意味でもすごく新鮮ですし、お稽古が始まって数日経ちましたが、いのうえさんに色々なことを教えてもらっています。皆様とお芝居をすることで、皆様が紅子をつくってくださっているのを感じますし、カンパニー全員で45周年の新感線の舞台をつくっていきたいという意欲が、ひしひしと湧いている日々でございます」と、充実した表情で語った。
10年前に失踪した妻・紅子と、娘の藤(樋口日奈)を取り戻すため旅に出る、貴族の源蒼(みなもとのあお)を演じる鈴木拡樹さんは、『髑髏城の七人~Season月《下弦の月》』以来、7年ぶりの劇団☆新感線出演。稽古が始まり、当初の台本より付け足された台詞があるそうで、「自分を見て付け足してくださったんだな」と感じているという。「蒼は紅子を救いたいという思いがあり、真面目で真っ直ぐな役ですが、『旅をして疲れているから、お茶でも飲んでゆっくりするか』みたいな台詞を言う、マイペースなところも。そういうところは自分に似ているのかな」と鈴木さん。「本番までにキャラクターに寄っていくというよりも、自分自身に寄っていくのかもしれません。僕にとって挑戦であり、楽しみでもありますね」と笑顔を見せる。
また、柚香さんは記者から「退団後も男性の所作が出てきますか?」と問われ、「私生活ではたぶんそこまで出ていないと思うのですが、つい先日、立ち回りの場面があり、私は守られる立場だったのですが、ちょっと立ち方が凛々しい、自分で戦いそうだと言われまして(苦笑)。今まではこう、娘っこたちを守っていて(背中側で守る仕草をする)、守られる立場は初めてですので、つい足を踏み出しそうになりました」と話すと、会場が和やかな笑いに包まれた。
鈴木さんも稽古の打ち合わせの際、柚香さんの「守られたことが本当になくて、守る方だった」という言葉に改めて納得したという。「そういうところも素敵だなと思いました。稽古場での姿を見ていて、所作もすごくきれいだな、完璧だなと思っていたら、まだ(女性の所作は)研究中と仰っていて、そうなんだ!?」と驚いたという鈴木さん。「これから変わっていきます!」と柚香さんが明るく言うと、「さらにすごくなるそうです!」とにこやかに返していた。
いのうえさんは二人について「すごく真面目で素直」と共通するものを感じているようで、「それがいい方に転がればと思っています」と期待。演出面では客席を多用するとのことで、「お客さんにとっては、れいちゃん(柚香)とかが、バンバン客席に降りてくるのでうれしいと思います。お芝居の中で、過去と現在が行き来するところのセットチェンジも工夫するのですが、それは観てのお楽しみに」と、今回もエンターテインメントに徹した新感線ならではの舞台が堪能できそうだ。
2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演
いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語(あかおにものがたり)』
大阪公演/2025年5月13日(火)~6月1日(日) SkyシアターMBS
東京公演/2025年6月24日(火)~7月17日(木) シアターH
作:青木豪
演出:いのうえひでのり
出演:柚香光
早乙女友貴 喜矢武豊 一ノ瀬颯 樋口日奈
粟根まこと 千葉哲也
鈴木拡樹
右近健一 河野まさと 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ 礒野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 村木仁 川原正嗣 武田浩二 ほか