(取材・文・撮影/小野寺亜紀)
宝塚歌劇100周年を迎えた2014年はさまざまなイベントが開催され、当時のトップスターたちが記念イヤーを大いに盛り上げた。それから次代のスターが輝きを受け継ぎ、今年宝塚歌劇団は110周年を迎えたが、この節目に今までのOG公演とはひと味違う、新たな“スペシャル・エンターテインメント”が誕生した。構成・演出はタカラヅカレビューの真髄を知る、宝塚歌劇団の稲葉太地さん。選曲やキャスティング、振付、世界観など、心憎いまでにファン心理をくすぐる、見応えたっぷりの95分となった。
(※以下、ネタばれあり)
蘭寿とむ
1幕ノンストップ95分のスペシャルなショータイム!
両サイドと中央にセッティングされた階段を、元トップスターたちが華麗にウォーキングしてポーズ。まさにファッションショーの“ランウェイ”を想起させるオープニングで、クリエイティブなデザインの衣装に身を包み、キャストが次々に登場する。「この道だけを 私らしく 歩き続ける~」と、生バンドの演奏にのせてオリジナル曲「RUNWAY」を歌う姿には、退団後も自分らしい道を歩んできた誇りや自信が感じられ、なんとも眩しい。
夢咲ねね・朝月希和
出演は、退団して10年の蘭寿とむさんから、退団後5カ月の柚香光さんまで、元トップスターが7名、元トップ娘役の夢咲ねねさん・朝月希和さんほか、総勢26名。約8年ぶりの舞台復帰となる元花組トップの蘭寿とむさんは、ブランクを感じさせない堂々たるオーラを放ち、スタイリッシュかつ抜け感のある格好良さが、腰の振りやしぐさなど随所に溢れ出る。両隣に同じく名ダンサーの柚希礼音さん・柚香光さんを従えて届ける「I Gotcha」から、「これは宝塚歌劇の新しいショー!?」と錯覚するほどの現役感とボリュームだ。いや、当時の「タカラヅカスペシャル」でも叶わなかったであろう夢の競演。
柚希礼音・蘭寿とむ・柚香光
さらにゴージャスさを醸し出す、元宙組トップの凰稀かなめさんと元月組トップの龍真咲さんが、センターを奪い合うようにパワフルに歌う「EL Cumbanchero」。艶のある歌声が変わらない元星組トップの北翔海莉さんと元雪組トップの壮一帆さん、元雪組トップ娘役の朝月希和さんを中心とするシャンソンメドレーは、楽しい芝居仕立てになっていて、途中で元花組男役スターの瀬戸かずやさん、元星組男役スターの愛月ひかるさんも、ダンスだけではなく歌でも参加して盛り上げる。瀬戸さん、愛月さんは、男役の美学を極めただけある存在感でどのシーンも締め、今年退団したばかりの帆純まひろさんまで、キャストのみんなが活き活きと輝いているのが観ていて清々しい。
中央:瀬戸かずや・壮一帆・朝月希和・北翔海莉・愛月ひかる・天寿光希
夢咲ねねさん、朝月希和さんは今回、元娘役の可憐さよりも格好良さやコケティッシュさが際立ち、二人揃ってのダービー帽を使ったダンスシーンや、夢咲さんの「セ・マニフィーク」、朝月さんの「Fire Fever!」の迫力に驚くばかり。
凰稀かなめ・柚希礼音
元星組トップの柚希礼音さんは、深みのある低音で「アシナヨ」を聴かせ、星組で柚希さんと舞台を共にした凰稀さんが歌い継ぎ、柚希さんと夢咲さんが横で踊るシーンは、『ル・ポァゾン 愛の媚薬Ⅱ』を思い出させて胸にしみる。
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