「ゲゲ郎の異物感・掴めないところが面白かった」
――原案の映画をご覧になった感想は?
鈴木 僕は映画館では観ていないのですが、話題になってることは知っていたんです。口コミで広がっていったと聞いて、人に伝えたくなる作品ってすごいなと思っていました。出演が決まってから拝見して、テンポもいいし、ストーリーに引き込まれました。なるほどこれは人気が出るなあと。ドラマとして本当に完成されている。それをこの短時間で観せてくれた。それって舞台で心がけたいものと同じなので、舞台に向いてるなと思いました。
村井 僕もオファーをいただいてから拝見しました。作品の面白さ、セリフの面白さと同時にアニメなんだけどアニメっぽくなかったというか、すごく身近に感じられるような演技だと思って。調べるうちにインタビューなどで「実写的にアフレコしてほしい」というオーダーがあったと聞いて、人間ドラマを作ったんだなと思いました。血肉が通っているから、この映画がより完成されたものになっているんだなあと。
――役についてはいかがでしょうか。
鈴木 初見の時はイチ視聴者として楽しみたいので、あんまりゲゲ郎(鬼太郎の父)目線で観ることはなく、その後、2回観ました。そこで自分の役にフォーカスして観て、リアルに演じているからこそ浮いている瞬間があるのが魅力だなあと感じました。一人だけ一人称が「ワシ」だったり語尾が「なのじゃ」だったり、昭和30年代のお話ですが、彼は昭和でもない異物感があるんですよね。これは一体何者なのだろうなと、その掴めないところが面白かったです。
村井 水木はありがたいことにやりたいことを全部自分でしゃべってくれるので、何を目的としているのか非常にわかりやすい。戦後、復興していく時代にのしあがってやるぞと思っている。幸せになりたい思いも強い。地位なのか権力なのか金なのか。そういうものを欲していて、非常に人間くささがある。戦争というあまりにも悲惨な状況から生きて帰ってきたからにはいい人生にしたいと思うだろうし、嘘がないなあと思います。真っ直ぐですよね。
――村井さんが見て共感できるところがある?
村井 そうですね。今とは違う、昭和という時代背景があるのはもちろんですけど、でも人はみんな幸せになりたくて生まれて生きているじゃないですか。そこはとても理解できます。

――演出の中屋敷法仁さんや脚本の毛利亘宏さんとはどんなお話をしましたか?
村井 まだ何も話してないんです(取材は10月)。
鈴木 僕も良大くんも、中屋敷さんとは一緒にお仕事をしたことがないんですよ。僕はご挨拶だけしたことがあるんですけど。毛利さんはこの間会って「村井くんとの共演楽しみだね」と言っていただきました。仮台本もインタビューに向けて急いであげてくれました。
村井 昨日、仮台本をいただいたんだよね。
鈴木 まだ決定稿ではないので、このまま行くかわからないですが、読んで本当に面白かったです。今回脚本のみの参加なので、「僕の仕事はもう終わったから後は任せたよ」とおっしゃってました。
村井 僕は仮台本を読んで、舞台でも非常に原案である映画を大切にされてるなと感じました。原案の名シーン、印象的なシーンを大事にしたいという思いで書かれていると思います。
――共演が決まってから連絡を取り合ったりしましたか?
村井 僕、拡樹くんのLINEを知らないよね?
鈴木 LINEやってない。
村井 やってないの? 君、令和にいる?(笑)
鈴木 いや昭和(笑)。
村井 昭和か(笑)。
鈴木 eメールで止まってる。たぶんピッチ(PHS)なんだと思うよ。持ってるの。
村井 ピッチなのか。アイドルの断り方だね(笑)。「LINEやってないんです」「昭和なんです」って。
鈴木 本当にやってないんだよ(笑)。
村井 ま、そういうわけでお互い連絡先も知らないんです。ビジュアル撮影で久しぶりに再会しました。

――その前に、最後に会ったのは?
村井 最後は、あれだよね。うちで『ジョジョ』のゲーム(ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン)をやった時だよね。
鈴木 うん。そう。
村井 2016年とか?
鈴木 たぶんそれくらい。ごはんに行くことになってて、その前に集まってゲームをやろうって話だった気がする。
村井 僕が『ジョジョ』好きなんで、ゲームを買って「一緒にやんない?」って誘ったんです。
――そこから会ってなくて、ビジュアル撮影で再会したんですね。
鈴木 さすがに10年近く会っていなかったので、お互い変化を感じました。
村井 簡単に言うと大人になったよね。
鈴木 僕、今年40になったから。
村井 わーお。拡樹くんって俺の1個上じゃなかったっけ?
鈴木 3つ上だよ。
村井 本当? そうなんですね。
鈴木 いきなり敬語になってる(笑)。
村井 (笑)。そうかあ。40か。
鈴木 だって最初に会った時、良大くん10代だったでしょ?
村井 拡樹くんは22歳くらいだったってこと?
鈴木 『風魔の小次郎』の放送が始まった時が22歳。だから最初に会ったのは21歳だったな。
村井 その時俺は18歳だった。

「拡樹くんは役に徹するフォーカスの強さがすごい」
――ドラマ『風魔の小次郎』はお二人の初共演作品ですが、当時のお互いの印象は?
村井 拡樹くんとはオーディションで一緒だったんですよ。二人とも受かって一緒に出られることになったから、余計にうれしかった。共演者の中でも一番最初に会ってるのが拡樹くん。だから居心地の良さもあるし、やっぱり拡樹くんの持ってる柔らかい感じが楽で安心感がある。だけど熱いものも持っていて、それは一緒に舞台をやるようになってより一層わかったし、拡樹くんの人間としての魅力が年々増してくる感覚でした。
鈴木 僕の良大くんのイメージは、今と大きくは変わらないんですよね。いつまで経っても芝居に対して熱い。スキル面は当時よりすごい力をつけているけど、根の部分が変わってない。年齢関係なくずっと頼もしかったですよ。作品の中心であろうとしている姿がカッコよくて。だからこそその後『最遊記歌劇伝』で、自分が作品の中心になってどうしていいか迷った時に、良大くんの顔が浮かびました。
村井 え? そうなんだ?
鈴木 うん。あの時は先輩もいるし、自分のことを頑張ればなんとかなると思って挑んだけど、それだけじゃだめなんだという経験をして…。熱意だけじゃなくもっとやれることを探さないといけないんだと。その時に『風魔の小次郎』で良大くんがあれだけ堂々としてたのはすごいなあと思いました。
――そこから、『戦国鍋TV』で「信長と蘭丸」をやったり、舞台『弱虫ペダル』では村井さんが主人公の小野田坂道役、鈴木さんがライバル校の選手・荒北靖友役を演じたりと、共演してきましたが、お互いのことをどんな役者さんだと思ってましたか?
村井 拡樹くんは役に徹するフォーカスの強さがすごいんですよ。『戦国鍋TV』の「信蘭」で僕が信長をやっている時、僕はボケて広げないといけないんだけど、拡樹くんが蘭丸として絶対に受け止めてくれるから安心して広げられる。『ペダステ』(舞台『弱虫ペダル』)でも、僕は舞台上にいる時間が長かったからあの舞台ならではのさまざまな仕掛けやマジック的な見せ方を作っている瞬間が多かったんだけど、そういう場において、絶対に役に徹してブレない拡樹くんがいる安心感があった。そういう役作りのプロフェッショナルなところをみんなが肌で感じてるから、拡樹くんは「2.5次元の帝王」になったんだと思う。
鈴木 僕は良大くんが座長の作品にいくつも出て、その後自分がシリーズものを抱えるようになった時に、良大くんみたいな引っ張り方ができたら理想だなと思ったんですよ。それがすごく励みになりました。参加しているみんなが楽しいものを作れば、この先も続けたくなるし、みんながやりたいものでなければ続ける意味がない。『ペダステ』はまさにそういう作品でした。僕たちもやりたい。スタッフもやりたい。お客さんもやってほしい。あんなに恵まれたことはない。作るならこういうものだよなって。そういう気持ちがいつも原点にあるんです。良大くんとはスタイルは違うけど、僕もそういう座長になりたい。

――会ってなかった期間、お互いのことをどんなふうに見ていましたか?
村井 『SPY×FAMILY』は観に行きたかったんですよねえ。拡樹くんがミュージカルやるんだと思って。あれは初ミュージカル?
鈴木 初ではない。『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』が初ミュージカルで、2個目だった。
村井 そうか。あの時「ついに 2.5次元の帝王が帝劇に出るんだ」と思って。
鈴木 飛び級すぎるよね(笑)。
村井 超飛び級で。でもそれを信じられる信頼と実績があるというのが、やっぱり拡樹くんのすごいところ。
鈴木 僕も良大くんがいろいろやっているのをチラシやSNSで見聞きはしていて、『RENT』に出演すると聞いた時は、ものすごくすっかり「ミュージカルの人になったな」って思いました。あの頃完璧にミュージカルの人でしたね。もともとダンスはやってたんだよね?
村井 高校生のころダンス部だったからね。踊れないことはなかった。
――お互いにウワサでは知っていたけど…という感じなんですね。
村井 そうですね。一緒にやるのは久々で、拡樹くんのすごいところを見られるのが本当に楽しみ。きっと何かしら変わってるだろうしね。
鈴木 うん。僕もすごく楽しみにしてる。
――最後に読者さんに向けてメッセージをお願いします!
村井 僕らが長い月日を経て共演するのは「運命の再会」だなと思いますし、同じようにゲゲ郎と水木も「運命の出会い」をします。今、そういうタイミングなんじゃないかなと思っています。演劇が好きだし『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』という作品も好きなので、いい舞台にしたいです。ぜひ劇場に体感しに来てください。
鈴木 素晴らしい作品を、僕が大好きな分野である舞台で表現できるので、舞台の魅力をまだご存知ない方にも届いてくれたらうれしいなって思います。舞台も歴史が長いので、最近では映像を駆使して素晴らしい表現方法になっていたり、そうかと思えば昔ながらのアナログの力で表現しているものもあります。そういう舞台の楽しさを存分に味わってもらえるステージになっていると思うので、ぜひ皆さん楽しんでください。
舞台「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」は2026年1月9日(金)東京・サンシャイン劇場を皮切りに、大阪、佐賀で上演される。
すずき・ひろき
1985年6月4日生まれ、大阪府出身。ドラマ『風魔の小次郎』で俳優デビュー。舞台『刀剣乱舞』シリーズ、舞台『アルキメデスの大戦』、ミュージカル『SPY×FAMILY』などに出演。最近の主な舞台に劇団☆新感線『紅鬼物語』などがある。
むらい・りょうた
1988年6月29日生まれ、東京都出身。ドラマ『風魔の小次郎』で初主演。舞台『RENT』『デスノート THE MUSICAL』やドラマ『教場』などに出演。最近の主な舞台に『この世界の片隅に』『白衛軍』『手紙2025』『ザ・ポルターガイスト』など。
[衣裳]シャツ(サルト)¥57,200/サルト Tシャツ(テクネ)¥11,000/カナル パンツ・靴/スタイリスト私物サルト info@sarto-designs.com カナル TEL 03-6661-6190
舞台「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」
東京/2026年1月9日〜 25日 サンシャイン劇場
大阪/2026年1月29日〜 2月2日
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
佐賀/2026年2月7日・8日
鳥栖市民文化会館 大ホール
原作:水木しげる
原案:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
脚本:毛利亘宏(少年社中)
演出:中屋敷法仁(柿喰う客)
音楽:川井憲次
出演:鈴木拡樹 村井良大
岡本姫奈(乃木坂46) 沢海陽子 しゅはまはるみ 岡内美喜子
コッセこういち 加藤啓 中田翔真 橋本偉成
三上市朗 良知真次 他
公式HP:https://www.kitaro-tanjo-stage.com
©映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会
主催 舞台「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会
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