ロンドン公演の成功がもたらした新たな展開
ロンドン公演では、日本人キャストが日本語で演じるという形式ながらも、英語字幕を活用し現地観客から熱烈な支持を受けました。ウェストエンド最大級の劇場であるロンドン・コロシアム(約2,400席)を連日満席にし、約30万人を動員。観客や批評家からは「想像力豊かな舞台」「映画以上に感動的」と絶賛されました。
この成功により、舞台『千と千尋の神隠し』は日本国内だけでなく、世界的なエンターテインメント作品としての地位を確立しました。その勢いを受けて実現した上海公演は、中国でも高い人気を誇るジブリ作品への期待感と相まって、チケットが即完売。さらに17回の追加公演が決定するなど、すでに大きな注目を集めています。
上海文化広場での挑戦
上海文化広場は地下型劇場として世界最大規模を誇り、その近未来的な設計と最新設備が特徴です。約1,949席という収容能力を持つこの劇場は、舞台『千と千尋の神隠し』が持つ幻想的な世界観と完璧にマッチすると期待されています。
今回の上海公演では、日本語による上演に加え、中国語字幕が提供される予定です。また、久石譲が手掛けた映画版の名曲をオーケストラが生演奏する予定であり、中国観客にとっても特別な体験となるでしょう。
舞台版『千と千尋』は、『レ・ミゼラブル』など数々の名作を手掛けたジョン・ケアードが翻案・演出を担当。キャストには、日本国内外で高い評価を得ている橋本環奈や福地桃子らが主人公・千尋役として出演します。また、ハク役には増子敦貴(GENIC)が抜擢され、中国でも注目されています。
主演の橋本環奈は、「この作品が持つ魔法や温かさを中国のお客様にも届けたい」と意気込みを語り、一方の福地桃子も「異国の地でも、この物語が多くの人々に愛されることを願っています」とコメントしています。
舞台版ならではの魅力
映画版『千と千尋』は、その独創的な物語と美しい映像表現で2001年に公開され、第75回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞しました。その後も世界中で愛され続けています。この映画を原作とする舞台版は、映画では描き切れなかった細部まで掘り下げられた脚本や、生身の俳優による表現力豊かな演技が特徴です。
特に注目すべきはパペット(操り人形)の使用です。カオナシやハク(竜形態)など映画で印象的だったキャラクターたちが巧みにパペットとして再現され、そのリアルな動きや存在感が観客を魅了します。また、回り舞台や照明効果など、日本独自の舞台技術もふんだんに取り入れられており、観客はまるで油屋や不思議な街に迷い込んだかのような臨場感を味わうことができます。
アジアから世界へ広がるジブリ愛
日本発祥のエンターテインメント作品として、新たな形で世界中にその魅力を発信している舞台『千と千尋の神隠し』。ロンドン公演に続く上海公演は、この作品が持つ普遍的なテーマ――成長や家族愛――が国境や言語を越えて共感されることを証明する場となるにちがいありません。
この夏、中国・上海文化広場で繰り広げられるジブリワールド。その魔法と感動は、多くの観客に新たな記憶として刻まれることでしょう。
舞台 『千と千尋の神隠し』 上海公演
2025年7月14日~8月17日 上海文化広場
原作:宮﨑 駿
翻案:ジョン ・ ケアード 共同翻案:今井麻緒子
オリジナルスコア:久石 譲 演出:ジョン ・ ケアード
出演:橋本環奈/福地桃子 醍醐虎汰朗/増子敦貴(GENIC)他