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Stage INTERVIEW

サスペンス劇の傑作『罠』に臨む上川隆也。「お客様にきちんと罠を仕掛けられるかが役の根幹」

「演劇界のヒッチコック」と呼ばれたフランスの劇作家ロベール・トマが、1960年に発表した傑作『罠』。本作で演出家デビューを果たした深作健太さんが、魅力的なキャストを迎えて新たにこのサスペンス劇を手掛ける。とある山荘、新婚夫婦の行方不明になった妻の捜査を依頼されるカンタン警部を演じるのは、スペクタクルな時代劇から現代劇まで自在にこなす上川隆也さん。信頼する深作健太さんとの新たな挑戦について話を聞いた。
(取材・文・撮影/小野寺亜紀)

「お芝居は闇鍋。鍋の中に放り込んで煮上がるまで味はわからない」

――最初に戯曲を読まれたときの感想から教えてください。

これまでこのお芝居を拝見したことがないからこそ、新鮮な気持ちで脚本を読ませていただきました。まず邦題でいみじくも『罠』とつけられたそのセンスが見事だと思いました。原題ではそのようなタイトルではないので、そう思って冒頭から読み返してみると、まさに幕が開いた瞬間から、お客様に向かって“罠”が仕掛けられている。そこがこれだけ長い間上演され続けている、作品の大きな力のひとつなのだと感じました。

――行方不明だった妻が戻ってくると、別人だと主張する夫。誰が嘘をついているのか謎が深まるなか、衝撃の結末へと向かうスリリングな物語ですが、上川さんが演じられるカンタン警部の印象は?

個人的な感想で申し上げてよろしいのであれば、この作品の中で一番振り幅を設けやすい人物なのでは、という印象を受けました。ほかにももちろん、様々な役作りが可能なキャラクターたちが登場しますが、カンタン警部を演じるにあたって、舞台初日までに色々とためつすがめつしていきたいと思っています。

――翻訳劇に臨む、という点ではいかがですか?

『ウーマン・イン・ブラック』という作品を、斎藤晴彦さんと務めさせていただいた経験をふくめても、数でいえば圧倒的に少なく、このように徹頭徹尾、会話劇というのも経験は少ないので、身が引き締まる思いです。翻訳劇というと、例えばシェイクスピア作品を日本の装いで演じることも珍しくないわけで、今回なら1960年スイスのシャモニーという文化を設定することもできるでしょうし、そこから大きく離れたところで演じることも可能でしょうから、ある意味自由度があるなかで、(演出の)深作さんが僕らとどのように作っていかれるのか。そこが今回の醍醐味のひとつだと思っています。

――深作さんとはこの作品について、何かお話しをされましたか?

まだ本作の顔合わせもしていない段階ですが、ご一緒するのは2回目で、深作さんの作品への携わり方を前回目の当たりにしましたので、なんの不安も抱いていません。さらに深作さんは、この『罠』という作品を何度も手掛けてらっしゃることもあり、盤石の思いです。

――前回深作さんとご一緒されたとき、信頼を寄せられた部分など教えてください。

『渇いた太陽』(2013年)というアメリカを舞台にした物語でご一緒したのですが、その作品で演じた役柄は、これまで僕がめぐり合ってきたものとはずいぶん趣の違うものだったんです。明日をもしれない放蕩家、今日の快楽(けらく)だけで生きているような快楽主義者で、そのようなキャククターは映像を通してもあまり相まみえたことがなかった。僕自身いちから始める作業でしたが、僕が役に歩み寄る度合いを深作さんがきちんと見極めたうえで受け止め、演出してくださり、だからこそ新鮮な役ににじり寄っていけました。もちろん浅丘ルリ子さんとの共同作業など、皆さんで作っていけた役柄だったと、深い思い出があります。

――今回の役柄での、ご自身の新たな挑戦というと?

60年以上も上演されている作品ですが、初めてご覧いただくお客様も少なくないなかで、きちんと罠を仕掛けられるか、というところでしょうか。それこそが根幹だと思うので、6人のキャラクターがあいなす罠の一翼をしっかり担っていきたいです。

――主演として心掛けたいことなどありましたら教えてください。

様々なお仕事に携わらせていただき、座長と呼ばれることも少なからずあるのですが、そういう作品とそうでない作品での向き合い方は、何ら変わりがないです。カンパニーのみんなでどんな作品に向き合っていくのか、その中で自分は何をやれるのか、ということが全てであって、自分がイニシアチブをとろうとか、そんな思いはさらさら抱いたことがありません(笑)。今回も同様で、みんなで膝を突き合わせ、一つの物語を深作さんの目指す方向に作り上げていきたい、という思いです。

――素敵なキャストが集まっていますが、皆さんにどういう魅力を感じていますか?

常々思うのですが、舞台も映像作品も芝居は「闇鍋」なんです。それぞれの具材は同じでも、脚本・演出というレシピが違えば鍋の中に放り込んで煮上がるまで味はわからない。それがお芝居の底知れぬ面白さだと思っています。ですから、以前ご一緒したからとか、こうなるかなという予想を立てずにいたいと思っています。どんな料理に仕上がっていくのか、スタッフ、キャストと試行錯誤を重ね、ひとつの新しい鍋を作っていきたいです。

『罠』

東京公演/2024年10月4日(金)~20日(日) よみうり大手町ホール
大阪公演/2024年11月2日(土)・3日(日・祝) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
北九州公演/2024年11月4日(月・祝) 北九州芸術劇場
高松公演/2024年11月6日(水) レクザムホール(香川県県民ホール)
岡山公演/2024年11月7日(木) 岡山芸術創造劇場 ハレノワ
愛知公演/2024年11月23日(土・祝) 東海市芸術劇場
富山公演/2024年11月25日(月) 氷見市芸術文化館

作:ロベール・トマ
翻訳:平田綾子
演出:深作健太
出演:上川隆也 藤原紀香 渡辺大 財木琢磨 藤本隆宏 凰稀かなめ
赤名竜乃介

公式HP:https://wana-ntv.jp/

あのときの感動を、お手元に。
オモシィプレスVOL.3& VOL.17 バックナンバー
京本大我 舞台掲載号

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