総合エンタメ・マガジン[エンタプレス]

Stage REVIEW

宝塚月組公演『G.O.A.T』レポート 月城かなと主演でおくる斬新なコンサート

2024年7月7日に宝塚歌劇団を退団する月組トップスター・月城かなとさん、トップ娘役・海乃美月さんたちが出演の「Grand concert『G.O.A.T』~Greatest Of All Time~」が、1月17日から31日まで梅田芸術劇場メインホールで上演中だ。様々なキャラクターが登場する賑やかなオープニング、スリリングなタンゴやスパニッシュ、見事なハーモニーで聴かせるアコースティックコーナーなど、創意に富んだステージの模様をレポート。
(取材・文・撮影/小野寺亜紀)

「極上の夢時間を過ごせますように」

これまで宝塚歌劇団の舞台に新風を吹き込み、『The PROM』『ANASTASIA』など宝塚以外の作品でも振付家として活躍してきた三井聡氏が、構成・演出・振付・歌詞を担当。石田昌也氏が監修・演出を担う新スタイルのコンサート。「史上最高の~」という意味のスラング「G.O.A.T」をタイトルに冠し、今夏退団が決まっている月組トップスター・月城かなとさん他、出演者35名の魅力を詰め込んだステージが、100分ノンストップで展開する。冒頭からアッと驚くマジカルな演出があり、全編メリハリのきいたお洒落で愉快なコンサートとなった。
(※以下、ネタバレあり。気になる方はご観劇後にお読みください)

開演前、場内に流れてくるメンバーの声。舞台裏の様子がうかがえるそのトークから、すでに「芝居の月組」と言われる楽しいパフォーマンスが始まっている。いよいよコンサートが開幕すると、「Magical Award Ceremony」の司会者、Mr.T(月城かなと)が早速サプライズを披露。これまでのキセキを振り返るように、「イッツ・ショータイム!」と早口で歌い出す歌詞には、過去に月城さんが携わった作品の登場人物の名前が並び、ブラック・ジャック、鳳月杏さんが演じた映画スター・俊藤龍之介など、国や時代が入り乱れての“キャラクター大集合!”的な明るいナンバーが繰り広げられる。

 

海乃さんは『今夜、ロマンス劇場で』のごとく勝気なヒロイン力で盛り上げ、月城さんも一瞬『BADDY』のポッキー巡査になったり、雪組時代に出演した『るろうに剣心』の四乃森蒼紫としてMr.剣心(風間柚乃)と立ち回りを披露したりと大活躍。これら一連の流れがうまくナンバーにまとめられているのが、なんともマジカルだ。

他にも月城ルキーニの軽妙なソロ歌唱、クールな鳳月さん中心の「ジャズマニア」、月組の代表的な2曲「顎で受けなさい」「Apasionado‼」をハードに踊りながら歌う海乃さん――というように、宝塚メドレーが見応えあるパフォーマンスで続く。最後は月城さん・海乃さんのトップコンビプレお披露目公演ともなった『Dream Chaser』の主題歌でメンバーたちの笑顔が弾け、カラフルな多幸感が劇場を包み込む。月城さんは「極上の夢時間を過ごせますように」と観客に語りかけた。

続いて、きよら羽龍さんはじめセーラー服姿の女子学生4人の歌から「月ノ塚音楽学校」の場面へ。個性豊かな学生たちの前に現れたのは、新たに赴任した「月城先生」。大人の魅力を秘めた「月城先生」はカタコトの日本語で、「ダンスにはすべてを変える力があります」と学生をタンゴに誘い出す。教室だったセットは一瞬でダンスホールのような空間へとチェンジし、セーラー服姿で機関銃を持つ女子学生の「鳳月さん」はアダルトな女性へと変身、「月城先生」と濃厚に絡む。この場面の最後には、思わず観客もニヤリとしてしまう「月城先生」のひと言が。劇場での一体感を狙った「没入型」と言える本コンサートでは、このような観客の心をグイッと捉える月城さんのパフォーマンスが満載で、深みのあるオーラに磨きがかかっていた。

礼華はるさんのソロダンスから始まる「白の衝撃」の場面は、バレエのワンシーンのように一人の男(月城)が、海乃さんたちをはじめとする女性たちに翻弄される、ドラマティックで壮大な群舞へと展開。一糸乱れぬハイスピードな振付が圧巻だ。さらに鳳月さん、風間さんたち男役陣が観客を強く刺激する場面へと続き、各シーンの振付のカラーの違いも存分に楽しめる。(「白の衝撃」では三井聡・Seishiro・原田薫さんが振付担当)

そしてそこまでの集中力をふわりと柔らげるかのようにMCコーナーが始まり、月城さん、海乃さんと日替わりメンバーが、稽古場での裏話などをほのぼのと披露し、本コンサートの白眉とも言える「Acoustic」コーナーへと移る。舞台上のカウンターチェアに月城さん、鳳月さん、風間さんが座り、まずは「Winding Road」を3人のハーモニーでしっとりと聴かせる。

 

歌唱力に優れ、声に幅がある3人ならではの伸びやかで心地いい歌声がときにアカペラでも響き渡り、観客やバンドメンバーが振るペンライトの灯りと、6つのミラーボールの光が場内を舞う。その後もソロ3曲に加え、軽妙にジャクソン5の「ABC」を披露。英語歌詞も悠々とこなす3人のクオリティーで、劇場をアコースティックな極上のライブハウス空間へと変身させた。

続いて海乃美月さんが階段で板付きとなる、ゴージャス感に満ちたスパニッシュが始まる。月城さんや鳳月さんたちも登場して盛り上がるこのシーンは、娘役の優雅さと格好良さ、男役の気品と凛々しさを際立たせる三井聡氏の振付が冴えわたっていた。

さらに海乃さん月城さんが、それぞれ思い入れのある曲をソロで歌い、二人の「Cheek to Cheek」の場面へ。月城さん・海乃さんコンビの始まりとも言える公演、『THE LAST PARTY ~S.Fitzgerald’s last day~』(2018年)のデュエットダンスで使われた曲が、ここで登場するというのは感慨深い。会話をするように楽し気に踊り歌う二人の表情は、撮影した写真のどのカットをとっても幸福感に満ちていて心洗われた。

最後はゴールド×黒の衣装に身を包んだメンバーが、未来への希望を詰め込んだ主題歌を華やかに歌い上げ、さらに月城さんが中島みゆきさんの名曲を優しく力強く熱唱。影コーラスのパワーもあいまって、場内の空気が一段と澄みわたるような感動が押し寄せた。カーテンコールで月城さんは、「ひと味違うコンサートだったな、かなり斬新だったなと思っていただけたら嬉しいです」と挨拶。大きな拍手が沸き起こった。大阪・梅田芸術劇場メインホールでのみの公演となる『G.O.A.T』。1月27日(土)12時公演&17時半公演は、全国映画館でのライブビューイング、ライブ配信がおこなわれる。

 

宝塚歌劇月組 梅田芸術劇場メインホール公演
Grand concert『G.O.A.T』~Greatest Of All Time~

2024年1月17日(水)~1月31日(水) 梅田芸術劇場メインホール

監修・演出:石田昌也
構成・演出・振付:三井聡
出演:月城かなと 海乃美月 他

公式HP  https://www.umegei.com/goat2024_kageki/

あのときの感動を、お手元に。
オモシィプレスVOL.3& VOL.17 バックナンバー
京本大我 舞台掲載号

みんなが読んだオススメ記事

人気ランキング

デイリー
マンスリー
総合
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5

RELATED

いま見ている記事と関連したオススメ記事です

PAGE TOP