「自分自身を知るためにも舞台は私にとって大切な場所なんです」
(取材・文/小野寺亜紀、撮影/望月研)
――今作の上演が決まったときのお気持ちから教えてください。
何年も前に立ち上がった企画なのですが、コロナ禍で上演が無理になってしまったと思っていたところ、この企画にすごく力があったのでしょうね。むくむくと再び立ち上がり、上演に向かうことができて、とてもありがたく幸せに思っています。
――アダム・クーパーさんとは初共演になりますね。
私は映画『雨に唄えば』がとても好きで、以前アダムさんが主演された来日公演『SINGIN’IN THE RAIN ~雨に唄えば~』を拝見したのですが、舞台の中央にいるアダムさんにスポットライトの光が全て集まり、それを全部吸収し、違う色にして客席に届けてらっしゃるのを感じて号泣しました。その後『兵士の物語』で来日されたときにサインを頂いたんです。私が「どうしてもサインが欲しい!」と思った方は何人かしかいないのですが、そのうちのお一人で、 そういう方とご一緒できることに驚きを感じます。お稽古での佇まい、作品に向かう姿勢、演じられるときの体温や熱など、ぜひ身近に肌で感じたいなと思っています。
――アダムさんはマクベスを、天海さんはマクベスと同じ軍隊の同僚で、のちに彼と結婚するレイディマクベスを演じられます。まず舞台上の言語はどうなるのでしょうか?
アダムさんは日本語も英語もお話しになります。ただ饒舌に話すかというと……。今作の中におけるマクベスは、兵士として心も身体も傷ついていて、言葉で何かを表現するというより、身体で表現するという設定。実は企画を頂いたときはマクベス役の方が決まっておらず、「どなたがおやりになるのだろう」と思っていました。その後、演出のウィル・タケットさんや制作陣の皆さんが悩み考えたうえで、アダム・クーパーさんに決まり、「こんなことがあっていいのか!」と驚き嬉しかったです。そして頂いた台本を読んで「あぁ、当然だな。それが正解だな」と。舞台をご覧いただいた方には「なるほどね」と思っていただけるはずです。
――今作は英国気鋭の若手女性作家、ジュード・クリスチャンの書き下ろしで、シェイクスピアの名作を新たな切り口で描いた作品ですが、台本を読まれての感想は?
とても面白かったです。やはり人間関係、人のあり方、想い、生活、妬み、そねみ、恨み、そういったものはシェイクスピアの時代から何ら変わっていません。それらが現代に通じる言葉で描かれ、なおかつ響きが美しい。台詞を覚えるのは大変だと思いますが、とてもワクワクする台本でした。レイディマクベスとしては駆け上がっていくつもりが、実際は落ちていっているんじゃないかと。そのギャップがすごく面白いと思いました。今の私たちにも景色が想像できるような言葉で書かれているので、観客の方にその景色が広がるようなお芝居ができたらいいなと思います。
――世界初演という点ではいかがですか。
「世界初演」という言葉は恐ろしく、緊張もありますが、比べられるものがない、というところを拠り所に頑張っていきたいです。7人のキャスト同士、たくさん話し、議論しながら、ウィル・タケットさんの指示してくださる方向へと歩んでいけたらと思います。
(次ページへつづく)
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