「作品を丸ごと愛してくれたら嬉しい」
若者たちの激しいたった5日間の恋を描いた、ウィリアム・シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』で、ロミオ役に挑戦する高杉真宙さん。「いろいろな方が演じてこられた役なので、お話を頂いたときはやっぱり緊張しました」と吐露。作品の魅力については、「台詞が歌のようで、本当に詩。“好き”という言葉を何十行にも膨らませ、いろいろな比喩や表現で伝えるのがシェイクスピア作品で、そこがとても魅力的だなと思います」と話す。
現代では携帯電話というツールもあり、すれ違いからくる恋愛物語は成り立ちにくくなっている。高杉さんはロミオとジュリエットのような純愛をどのように感じているのだろうか。「今はうまく連絡が取り合え、人と話す距離が近いはずですが、それが心の距離と同じ近さなのかというと、難しいですよね。シェイクスピアの時代は、連絡が取れずなかなか話せない、会えない不便さがあるからこそ、心の距離が近くなっていくのかもしれないですね」。
27歳の高杉さんの分析はとても明瞭で鋭い。そんな彼は、ロミオ役をどう深めていくのか。「まずは台詞の意味を理解するところから始めるべきだと思っています。あとは、“正直に生きる”気持ちが大切だなと。ロミオ役は『こう深める』というより、『真っ直ぐ受け止めて、真っ直ぐ放つ!』という役作りがいいのかなと思っています」。
さらにキャピュレット家とモンタギュー家の名家の争いが悲劇の根源となる今作。「とても意識しているのが、世界を小さくしないように、ということ。隣の家同士の抗争なのか、国をまたいだ抗争なのか、という自分の想像の大きさでも変わってくるなと思っていて。その世界が大きければ大きいほど、悲劇性は大きいと思っています」と、物語全体を俯瞰する目も忘れない。
そんな高杉さんはロミオのような一目惚れはしないタイプという。「根本的に一目惚れって人でも物でも全くないです。でも恋愛だけではなくいろんなことに夢中になる10代の頃の情熱は、アホなぐらい純粋なんだろうなと思います。そんなロミオにどれぐらい寄り添えるか、ということを考えながら役を作っていきたいです」と、柔らかい笑顔を見せる。
今年も映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』(前編-運命-/後編-決戦-)や、ドラマ『わたしのお嫁くん』など話題作への出演が続く。舞台のやりがいや魅力はどこに感じているのだろう。「舞台は自分の今いる位置を客観視できます。映像と舞台、それぞれにいいところがありますが、舞台は特に全身をお客様に見られますし、舞台に立っていること全てがお芝居であるべきだと思っています。だからこそ、自分のやれること、やれないことが明確に見える。ただ毎回どんな作品に出てもそうなのですが、『経験を積んだから大丈夫』と思えないんですよね」と謙遜する。
また「“人見知りやめよう”キャンペーンをやっていて」と笑う高杉さんは、下の世代のキャストと絡むことが多くなったからこそ、「ちゃんと自分から話しかけるなどして、僕が見てきた先輩たちのようになれたら。これから役者を続けていくにあたって、そういう課題が僕の中にあります」と、真摯な思いを述べる。
生の舞台で演技し、躍動する高杉さんを観たいという思いで、劇場に来る観客も多いと思うが、「僕なんか観に来なくていいですよ」と笑って言い放つ彼もまた魅力的。「もちろん僕目当てで観に来てくださっても嬉しいですが、そういう方が作品を丸ごと愛してくれたら……。僕を通じていろんな作品に出会ってもらえたら嬉しいです。だからこそ、これからもいろいろな作品や役を届けていきたいです」。
『ロミオとジュリエット』
東京公演:2023年9月13日(水)~9月24日(日) 有楽町よみうりホール
大阪公演:2023年9月29日(金)~10月1日(日) 森ノ宮ピロティホール
富山公演:2023年10月7日(土)・8日(日) 富山県民会館ホール
愛知公演:2023年10月14日(土)・15日(日) 東海市芸術劇場 大ホール
福岡公演:2023年10月21日(土)・22日(日) キャナルシティ劇場
仙台公演:2023年10月28日(土)・29日(日) 仙台電力ホール
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:井上尊晶
出演:高杉真宙 藤野涼子 矢部昌暉 新原泰佑 三浦獠太 佐伯大地
皇希 田中亨 皆藤空良 菅彩美 木村咲哉 牧野彩季 松浦慎太郎 村井友映 井上百合子
冨樫真 廣田高志 一谷真由美 松澤一之 星田英利 石井愃一
公式サイト https://2023-romeoandjuliet.com/