「ここまで心を許したことがないなと思うくらいに心を開いてる。家も近いんです」
――製作発表記者会見で、作品のテーマソング「Calling You」を披露されましたがいかがでしたか。
森 ど緊張しました。もう全部花總さんにお任せしちゃおうかなと(笑)。ずっと喉の調子に不安があったのですが前日になって突然「あ!大丈夫だ」って。
花總 さすが! 私も緊張しました。製作発表のタイミングで歌うのって苦手なんですよ(笑)。
森 わかる!
花總 舞台だったらお稽古をして作り上げてきて、お芝居も練り上げて初日を迎えるけれど、その前に皆様の前で披露するんですよね。まだ心の準備が自分の中でできてない中で歌わなければいけないので・・・。
森 そうなんだよねえ(笑)。作品を象徴する歌だから、舞台本番で歌う時は、会見とは違うものになると思います。
――お二人は、共演は初めてと伺いましたが、すでに息ぴったりですね!
花總 公美さんとは、『THE BEST』(帝国劇場CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』2025年2月上演)の稽古場で初めてお会いしたんです。公美さんが稽古場に入ってきたのを見て「いつお声おかけしよう」とタイミングをうかがっていました。公美さんは『レ・ミゼラブル』の本番中に、帝劇9階のお稽古場に上がってきてくださって、だから疲れきっていらっしゃったと思うんですよ。「どうしよう。いつご挨拶しよう」とど緊張しながら、「花總まりです。よろしくお願いします」とドッキドキでご挨拶させていただきました。
森 「(わざわざ)ごめんねえ。よろしくねえ」って言った気がします。慌ただしい時期だったんですよ。レミゼが終わった次の日に(『THE BEST』の)オケ合わせで。
花總 公美さんは雲の上の方でしたから、まさかこんな日が来るとは夢にも思わず。
森 こちらこそです。(『バグダッド・カフェ』で)花ちゃんと共演と聞いた時には思わず「やったー!」って。
花總 私も言いました。お会いしてから、いつ「LINEを交換してください」とお願いしようかと思っていたら、公美さんから言ってくださって。
――それであんなに息ぴったりにデュエットをされて。
森 それはもう花ちゃんが素晴らしいアシストをしてくださって。
花總 いえいえ。公美さんのお人柄のおかげです。
森 花ちゃんの声が本当に伸びるんですよ。「アーーーー(I am calling you,というサビの部分の出だしの音程で)」ってすごいきれいな声で。私はその隣で心臓が口から出るかと思って。
花總 私もですよ。ドキドキドキドキしながら歌っていました。
――『バグダッド・カフェ』はジャスミンとブレンダという二人の女性の友情の物語ですが、お二人はすぐに友達になれるタイプですか? それとも仲良くなるのに時間がかかるタイプですか?
森 今はカンパニーの中でも私は最年長のことが多いんです。自分よりも年上の先輩がいた頃が懐かしいですね。「ねえねえ。公美ちゃん。これやって」って言われてた頃です。森繁久弥さんの「生誕100年をお祝いする会」で集まった時に私が一番年下だったんですよ。樹木希林さんに「私、日本茶が飲みたいの」と言われて「わかりました!」って、履いていた8センチのヒールを脱いでお茶を取りに行ったり、(中村)メイコさんも「ロックが欲しい」って言うから「はい! ウィスキーロックで!」って(笑)。もう走り回っちゃって「私、一番年下なんだ!」って実感しました。あの時は面白かったですね。先輩たちに頼まれることが楽しかった。
花總 年長者になっちゃうと変に気を使いません?
森 そうそう。人を誘いにくい。後輩に声をかけて「行かなきゃいけないのかな」って気を使われるのが嫌だから、「自由参加です」って強調して。
花總 最近少しずつ「私が、一番上?」ってことが増えてきて、年下だった時のほうがその場にいやすかったかもと思いはじめたんですよ。
森 思いはじめましたか!
花總 (笑)。上の方がいてくださるとすごく気が楽で。でも公美さんとは不思議といづらくなったりしないんですよね。お会いしてからまだそんなに経っていないんですけど。『THE BEST』も出演のタイミングが前半後半で分かれていたので共演していませんし。
――それでこんなに仲良くなれるのは…。
森 本当に花ちゃんのお人柄なのかなと思います。私もここまで心を許したことがないなと思うくらいに心を開いてる。
花總 ええ?
森 ほんとほんと。
花總 取材前に、どんな質問が来るのかなといろいろ想像していて、自分は意外と人見知りなのかなって気づいたんです。でも今回は頑張って自分を曝け出そうと思って。公美さんだから。
森 この間、花ちゃんのことをなんて呼ぼうかすっごい悩んでLINEをしたら、寝てたのにお返事をくれて、なんていい人なんだろうと思いました。「花か花ちゃんか、どっちでもいいです」って言われて「じゃ、恐れ入りますが、花ちゃんに決定させていただきます」って。そんなこんなで二人で夜中までLINEして。今日、花ちゃんに桃を2個もらったんですよ。私が一番好きな果物が桃だって、なんで知ってるの?
花總 ふるさと納税で桃が届いたんですよ。「あ、桃だ! 公美さんに持っていこう!」って思いました。
――出会うべくして出会ったお二人なんですね。
森 本当にそう思います。すごい人だなあって憧れていて…。宝塚のトップだった方って近寄りがたいものがあって横にいてごめんなさいみたいな気持ちになりがちなんですけど、花ちゃんだとなぜか普通に隣にいられるの。
花總 うれしい。
森 なんでだろう。昔近所のお友達だったとか何かあったのかも。わからないけど、すごく花ちゃんが好きです。頑なにかしこまって話されるとこっちも固くなってしまうけど、そんなところもなくてスッと心に入ってきて。しかも家が近いんです。
花總 今日も公美さんの家の前を通ってきました。一緒に稽古に通えますね。
――お二人が演じられるジャスミンとブレンダはどちらも夫と喧嘩をしています。お二人は、喧嘩はするほうですか? それとも我慢してしまうタイプでしょうか。
森 喧嘩はしないけど、心にためずに思ったことは全部言ってしまうほうですね。禁煙の場所でタバコを吸ってる人がいたら、ここは禁煙だよって指摘する。(花總に)喧嘩する?
花總 うーん。我慢はしますけど…でも意外と正義感が強いんですよ。前に一度、街で女の人が男の人に絡まれていたのを見かけて「嫌がってるんだからやめてください」って声をかけたことがあります。身内に話したらそんな危ないことはしちゃダメだと叱られましたが。禁煙の場所でタバコ吸ってる人がいたら、私も「ここで吸っちゃダメよ」って言いますね。
森 横入りされた時とかも黙ってられないよね。コツは周りを巻き込むこと。周囲の人に一緒に注意してもらっちゃいます。
――さすがです! 最後に『バグダッド・カフェ』を楽しみにしている皆様に、メッセージをお願いします。
森 ミニシアターから始まって去年は4Kリマスター版でも上映された素晴らしい映画。「Calling You」という名曲も生みだした『バグダッド・カフェ』がミュージカルになります。それぞれの心情をいろんなリズムの歌にのせて皆さんにお届けできればと思います。あの『バグダッド・カフェ』が第二の『バグダッド・カフェ』に変身したと思っていただけるように、心を込めて丁寧に描いていきたいです。
花總 カンパニー自体がそんなに大人数ではないからこそ、いい作品になるんじゃないかなと思っています。一人でも多くの方にシアタークリエに足を運んでいただいて、ご覧いただければうれしいです。ぜひ皆さん観に来てください!
ミュージカル『バグダッド・カフェ』は11月2日(日)~11月23日(日・祝)まで、東京・シアタークリエを皮切りに、愛知、大阪、富山にて上演される。
公式サイトhttps://www.tohostage.com/bagdad-cafe/