ストレートプレイ 安国寺恵瓊 『嗤う怪僧』
「嶺をこの座組におけるスーパースターにしたい」
――出演する役者さんたちについて教えてください。平野さんから見て、安西慎太郎さんはどんな方ですか?
そうですね。1があって、スピンオフの主演もやってもらいましたし、ほかの作品でもいくつも共演しています。彼は得意技を持っているし、あくなき探究心を持っている。器用なほうではなく、近視眼的に煮詰めるタイプではあるんですが、普段しゃべっている姿とステージ上の安西は違っています。もちろんどちらも素敵なんです。人として、オンとオフではなくグレーみたいなところも含めて、今後いろんなものを作っていけたらなと思っています。
――木ノ本嶺浩さんは?
僕は彼をこの座組におけるスーパースターにしたい。嶺は、イタリアやイギリスのオープンテラスで普通にコーヒーを飲めるタイプなんですよ。僕だったら「俺、カッコつけてこんな所でコーヒー飲んじゃってるなあ」ってなりそうなところ、普通のこととして飲める人。“オシャレ”“カッコいい”が高い。
裁判劇 小早川秀秋 『被告人 ヒデトシ』
――昭和の映画スターみたいな?
そう! そんな感じです。ちょっと豪快さもあるから。令和の「みんなで手をつないでいきましょう」みたいなムードの中でやってきたからこそ、嶺はいろんなことができるし、お笑いみたいな情けない役もできる。でも立ち返ったら本性はスターだと思うので、そこを押し通したいです。普通の人がやってたら「え?」って思うこともスターがやってたら「わぁ♡」ってなるじゃないですか。木村拓哉さんや勝新さん(勝新太郎)みたいに、スターがやったらカッコいいに変換される。嶺だったらその路線がいけるんじゃないかと思っています。
――松田岳さんはいかがでしょう?
静かなようでいて舞台上で爆発する二面性を持った人だな、くらいに思っていたんですが、『時る』シリーズを通して知ったのは、彼は野生味あふれるようでいてすごい繊細。幾何学模様のような人間なんだなってことです。表に出てくる表現に至るプロセスがいっぱいある。ゲーム機みたいだなって思うんですよ。ゲーム機のボタンって少ししかないじゃないですか。Aボタン、Bボタン、あとは方向くらい。そんなんで簡単に遊べてると思って中を開けたら無茶苦茶配電盤がある。そういうイメージ。実は構造が繊細で、その回路を僕も気をつけて取り扱わなきゃなって思うし、それをクリアした時にシンプルに見えて誰も作れない役を作ってくれる。唯一無二の存在です。
エンタメ活劇 大谷吉継 『莫逆の友』
――前川優希さんは?
一番年下なんですが、頭の回転が早くて、気が利いて、バランサーみたいなタイプ。なおかつ、ここは一番手で一発抜けたいってなったらその意図も汲み取ってやってくれる。このシリーズを通して、前川優希のポテンシャルを知らしめたいんです。でも彼もふたを開けたらすごい変人なので(笑)。
3.5次元ミュージカル 直江兼続 『ラブミュ☆北の関ケ原』
嶺に通じるものがある。“さわやか嶺”って言うのかな。恥ずかしげもなく、自分が美しい生物だと疑いを持ってない。魂の芯の部分では自分が美しいことを当たり前だと思ってる。そういう稀な人間で、その狂気性は役者にめっちゃ大切です。彼も今の時代の俳優さんなので、みんなに合わせて出過ぎないでバランサーでいようとするし、それももちろん大切だけど、突き抜けた狂気みたいなものを節々で感じます。そういうところってほかの現場では出すきっかけがないんじゃないかと思うので、このシリーズで発揮してほしい。『時る』ならいろんな役ができるし、いろんな実験もできる。わかりにくい狂気っていうか、ちゃんと見たら狂気じゃん、みたいなものを彼が出せたらいいな。それは2での僕の課題でもあります。
――そして内藤大希さんはいかがでしょうか?
内藤さんはもう、ベテランですからねえ。いつまでも「はぁい(かわいい声で)」みたいな感じですけど、彼はちゃんとベテランです。『テニミュ』だって(初出演時期が)僕より先輩ですし、ベテランだから僕から言うことは何もないんですけど、良くも悪くも素直なところを逆手に取ってどこまで行けるか。お話をすると確実に全部理解して、僕がお客さんにこう届けたいんだよね、ってところまで理解してちゃんと動いてくれるんですよ。ただそのお話し合いをしなきゃ1ミリも動いてくれないんですけどね(笑)。お話を繰り返すと、とんでもない所まで行ける。だからちゃんとしっかりとお話をしていきたいなと思っています。
グランドミュージカル 真田信之『ミュージカルNOBUYUKI!!』
――そのメンバーで作る『時る』第二弾はどんな作品にしたいですか?
1よりももっとそれぞれの作品をセパレートして行きたい。1はちょっと守りに入っちゃった部分があったから、今回はもっと色をつけたいなと思っているんです。でも稽古が始まってみないとわからないところはある。今回セットがあまり動かせないので、スピンオフの時のように音と照明などの技術面のアプローチで世界観を変えていかなきゃなと思っています。たとえばスピンオフの時に音楽チームが打楽器やギターで音を作ってくれたんですよ。時代劇とギターなんて合わなそうだけど意外と合ってた。そういう挑戦的なアプローチで世界観を分けていけたらいいなって思ってます。
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