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「人間ってどんどんシンプルになっていく」

――『忠臣蔵』で雪組トップ娘役を務められた紫ともさん、新人公演で大石内蔵助を演じられた香寿たつきさんをはじめ、元雪組メンバーの方も多数出演されますが、まだキャスティングは決まっていないのでしょうか?

はい。おそらく私以外は皆さん多くの役をされるのだろうと思います。当時の懐かしいメンバーから、新しい息吹を吹き込んでくださる方までお迎えするので、お客様にとっても青春時代が鮮明によみがえるような舞台にしたいです。本当に柴田先生の作品は、赤穂浪士の妻たちなど、女性たちの見せ場もふんだんにあり、色々なシーンを思い出していただければ嬉しいです。

――杜さんは退団後の1996年に『雪の夢 華のゆめ―大石内蔵助―』で、大石内蔵助の妻、大石りくも演じられましたね。

大石りくを演じたときは、夫の心を分かりすぎる妻でした! 四十七士の名前が出てくると、もう雪組のみんなの顔が浮かんできちゃって(笑)。(『ベルサイユのばら』の)アンドレとオスカルを演じさせていただいたときも思ったのですが、内蔵助とりくの両役を演じさせていただけたのは、“ご縁”という簡単な言葉で表現していいのか分からないぐらい幸せなことでした。

――宝塚歌劇の『忠臣蔵』で好きなシーンをぜひ教えてください。

私の心に特に残っているのは、さまざまな別れのシーンです。城を明け渡すシーン、家族との別れ、お蘭との別れなど。『忠臣蔵』の美学とは、本懐を遂げるためにみんなと別れ、前へ進んでいくところだと思うのです。周りの幸せのために別れていく。人間ってどんどんシンプルになっていくんですよね。いつか訪れる最期のために、削ぎ落していくことが人生で必要だと感じます。

――それは32年経った今だからこそ感じる、ということでしょうか?

そうかもしれません。当時はそんなこと思っていなくて、ただ「切なくて好きなシーン」というふうに残っていたので。「その行動は何のために?」というところまで考えるなど、今だから分かることが多いです。

――当時の杜さんの舞台も十分深みがあり感動的で、この大石内蔵助役で現役生としては初の菊田一夫演劇賞を受賞されました。また杜さんは日本舞踊の名取でもあり、「日本物の雪組」という伝統を支える功績を残されました。改めて日本物、和ものの良さについてお聞かせください。

やはり美しさです。それは見かけだけではない、心の美しさ。日本人ならではと言いますか、利己主義ではない、愛情が根付いた“人情”という言葉が適切なのかな。日本の良さってまさに“和”だと思うんです。そしてそれは、宝塚にぴったり当てはまります。宝塚は“和”がないと成り立たない世界ですから。

――今、宝塚で和ものの演目は減ってきているように思います。

外の世界でも日本物はどんどん淘汰されてきていますよね。時代劇は、ドラマではNHKさんの大河ドラマぐらいになってきていますが、決してなくしてはいけないと思います。宝塚はオーソドックスな良さがあるから、どんどん日本物をやってもいいのに、と思います。和ものの良さは、ショーでも感じます。やはりチョンパは気持ちいいですよね!

――そうですね、ショーでも和のエッセンスが入っていると血が騒ぎます。ところで、宝塚歌劇専門チャンネル「タカラヅカ・スカイ・ステージ」の番組(『夢の音楽会』)で、雪組トップスターの朝美絢さんと『忠臣蔵』の曲をデュエットされ、「『忠臣蔵』をいつかやってください」とおっしゃっていましたね。

はい! そうやって繋がっていけばいいなと思います。後輩たちが頑張っているのは本当に頼もしいです。また、私たちOGが朗読劇として『忠臣蔵』をやることで、宝塚歌劇団さんが『忠臣蔵』の舞台の完成形をまたやってみたいと思われるかもしれないですし、OGとしても名作をよみがえらせる新たなOG公演として発展性があり、夢が広がっていくなと思います。

――最後に、2025年をどのような1年にされたいか教えてください。

さしあたりこの『忠臣蔵』の稽古から入ることになりますが、これからどうしたい、というようなことが本当に一切なくて……。公私ともに豊かな生き方をしたい、という思いがあり、再び内蔵助に出会うことで、自分自身変わる気がします。リセットというか、ある意味、第三の人生に入るなと思っています。宝塚の男役が第一の人生、その後に第二の人生があり、今人生の終幕に向かっての第三の人生が始まる、という思いです。

――ではこの公演がひとつの節目になると?

はい。節目節目にこういうものが訪れるんです。内蔵助によって私の第一の人生の幕が閉じたのですが、第三の人生が内蔵助で始まる。きっと、いいことも悪いことも含めて、色々な思いをするのではないかなと思います。舞台とはそういうものなので。頑張らないと!ですね(笑)。

朗読劇『忠臣蔵』

東京公演/2025年3月21日(金)~3月23日(日) よみうり大手町ホール
兵庫公演/2025年3月28日(金)~3月30日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

オリジナル脚本:柴田侑宏
上演脚本・演出:荻田 浩一
音楽:𠮷田優子(宝塚歌劇団)

出演:杜けあき
紫とも 香寿たつき 渚あき 成瀬こうき 彩吹真央
立ともみ 小乙女幸 朱未知留 はやせ翔馬 寿つかさ

公式HP:https://www.umegei.com/schedule/1231/

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あのときの感動を、お手元に。
オモシィプレスVOL.3& VOL.17 バックナンバー
京本大我 舞台掲載号

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