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Stage INTERVIEW

『エリザベートTAKARAZUKA30th スペシャル・ガラ・コンサート』企画第一弾:10人目のトート・珠城りょうが挑む特別なコンサート

元宝塚歌劇団月組トップスターの珠城りょうさんが、日本初演から30周年を記念して開催される『エリザベートTAKARAZUKA30th スペシャル・ガラ・コンサート』に出演する。2018年に主演した月組公演のアニヴァーサリーバージョンで、再びトート役としてステージに立つ想い。共演者の宝塚OGについて、退団後もボイストレーニングを続けている自身の歌の変化など、いろいろと語ってくれた。
(取材・文/小野寺亜紀)

「初めてご一緒する方も多く、新鮮な気持ちで役に向き合いたい」

――珠城さんは2018年の月組公演『エリザベート-愛と死の輪舞-』で主役のトートを演じられました。当時を振り返るといかがですか。

トート役は自分にとってかなり挑戦だと思いながら、作品に向き合っていました。再演とはいえ、演じるからには自分なりのアプローチができればと、キャストの皆さんや小池(修一郎)先生、諸先生方といろいろディスカッションしながら作っていった記憶があります。

――珠城さんのトートは長い金髪のブロンドで、衣裳に赤系の色が取り入れられていたのが印象的でした。

そうですね。ブロンドのソバージュ、それもロングヘアというのは小池先生のご指定で、衣裳も最初にデザインを見せていただいた段階からあのスタイルでした。全身赤だったり、差し色に赤が入っている衣裳も多かったのですが、なぜその色になったのかまではわからなくて。ただ、扮装やコスチュームをお客様に喜んでいただけましたし、自分としても満足のいく仕上がりになっていたなと思います。

――当時「感情の起伏を出したい」とおっしゃっていましたが、あらためてどのようなトート像になったと思われますか?

自分の中でトートといえば「クールでかっこいい」という漠然としたイメージがありました。でも小池先生が、「トート、エリザベート、フランツの三角関係の愛の物語としてきちんと描きたい」とおっしゃって。クールなだけではエリザベートへの感情や揺らぎが見えてこないと感じ、どう表現すれば伝わるんだろう、と悩みながらお稽古していました。

そんな中で小池先生が、「死という存在はものすごいエネルギーを持っていて、この世界すべてを飲み込むほどの強大さがある。だから、クールである必要はない」と言われたんです。その言葉を聞いて、感情を出していいんだ、感情の起伏があっていいんだと腑に落ちました。そこからはトートの心情に沿って、特にブレーキをかけることなく、湧き上がる感情のままに表現していった、という感じです。

――愛希れいかさんの演じるエリザベートが、「私だけに」を歌い、どんどん自我に目覚めていくのを、珠城さんのトートはとても複雑そうな表情で見ていましたね。

トートは最初の「愛と死の輪舞」の歌のなかで、「生きたお前に愛されたいんだ」と言っているのですが、エリザベートは死を拒んで生きようとする。だからこそ、複雑な心情の揺らぎがあり、そのあたりを表現していたのだと思います。

――このたび『エリザベート』30周年のスペシャル・ガラ・コンサートに出演が決まった心境を教えてください。

こうした節目のタイミングで再び『エリザベート』という作品に関われるのは、本当に光栄です。今回お話をいただいて気づいたのですが、私が2018年にトートを演じて以降、まだ宝塚で『エリザベート』は上演されていないんですよね。30年という歴史の中で、トートを演じた人は10人だけ。あらためて非常に貴重な経験だったと感じますし、タイミングにも恵まれたのだと思います。だからこそ、当時応援してくださった方々や、今も支えてくださっているファンの皆さま、『エリザベート』という作品を愛してくださる皆さまに、このコンサートを通して感謝の気持ちをしっかりお伝えできたらと思っています。

――珠城さんがご出演されるのは「アニヴァーサリー´18月組バージョン」。大阪と名古屋で全4回の公演となります。まだお稽古が始まる前ですが、どのような舞台を届けたいですか?

トートについては、あくまで2018年での自分の解釈や、当時気づいたことを土台に作っていくつもりです。ただ、一緒に芝居をする相手が変わると、互いに影響の受け方も変わりますよね。やはり今回ならではのトートに仕上がると思いますし、私自身もそれを楽しみにしています。お客様にも今回のバージョンがどのようになるのか、ぜひ楽しみにお待ちいただけたらうれしいです。

――エリザベート役は元星組トップ娘役の夢咲ねねさん。もともと月組に在籍されていましたが、珠城さんの在団時と月組では重なっていないんですよね。

そうなんです。でもタカラヅカスペシャル(年に一度催される、組を超えたスター共演のイベント)や、退団後の舞台『8人の女たち』でご縁があり、ご一緒できるのはとても楽しみです。『8人の女たち』では、舞台上でねねさんと台詞を交わすことはそんなになかったのですが、稽古場の席が隣で、他愛もない話をし、その時間がすごく楽しかったです。

――ルドルフ役は一期下の柚香光さん。同時代にトップを務められましたね。

はい。でもコロナ禍でタカラヅカスペシャルが開催されなくなり、ご縁がほとんどなく……。ですからどんな舞台になるのか楽しみです。今回初めてご一緒する方も多いのですが、だからこその良さも感じられるはず。新鮮な気持ちで役に向き合いたいです。たくさんの方に『エリザベート』の世界観を楽しんでいただけたらうれしいです。

宝塚を退団後、特に充実感を感じるときは――

――『エリザベート』で特に好きな楽曲はありますか?

「愛と死の輪舞」です。難しい曲なのですが1曲の中に物語性があり、トートの心情を表現するうえで、この曲の歌詞がとてもポイントになっています。リプライズで何度か歌うのですが、そのたびに微妙に歌詞が違っているんですよ。「トートの心情をよく表しているな」と、当時も大切に歌っていました。

――『エリザベート』の楽曲を、宝塚退団後4年以上を経て、再び届けることについてはいかがですか。

先日、歌稽古をしていただいたのですが、当時とても苦労していたところが意外にスルッと歌えるなど、自分自身すごく変化を感じています。4年の間にさまざまな現場で経験をしたことで、当時に戻るのではなく、新鮮な気持ちで楽曲と向き合い、前向きにアプローチできるのが「いいな」と感じていて。これからさらにお稽古を重ねて深めていきたいですし、今はとてもワクワクしています。

――2024年にはミュージカル『20世紀号に乗って』に出演されるなど、退団後も歌に関わられていて、歌う楽しさやおもしろさを新たに感じていらっしゃるのでしょうか。

『20世紀号に乗って』は、初めてヒロインを演じるような感覚で、これまで歌ったことのない高いキーの楽曲も多く、結構ワタワタしていたんです。でもこの作品で得たものがたくさんあって。今年はモーリー・イェストン生誕80周年記念コンサート『Life’s A Joy! Life Goes On!!』にも出演させていただき、4年間ずっとボイストレーニングを続けてきたことが今につながっていると感じています。ミュージカル作品に入っていない期間もレッスンは続けてきたので、今は“怖い”という気持ちはあまりなく、楽しみな気持ちの方が大きいです。

――モーリー・イェストンさんのコンサートでは、珠城さんのトップお披露目公演『グランドホテル』の曲を歌われていましたね。涼風真世さんとも歌われ、グランドホテルの鍵を涼風さんに渡す場面もありました

日本初演に出演されていた涼風さんと、ああいう形でコラボレーションでき、とても幸せな時間でした。花組・月組100周年の『Greatest Moment』でも同じステージには立たせていただいたのですが、これだけ近い距離で絡むのは初めて。本当にフラットで気さくで素敵な方なので、ご一緒できてうれしかったです。

――宝塚OGの方と共演する良さについて、あらためて教えてください。

皆さん、前に進んでいかれるエネルギーがすごいので、その背中を見ていて「たくましいな」と思います。先輩・後輩に関係なく素敵な方がたくさんいらっしゃるので、皆さんのエネルギーを受けながら、そのエネルギーを循環させるように舞台に立てることは、自分にとっても良いことだと感じています。

――退団後、映像から舞台まで幅広くご活躍ですが、特に充実感を感じるのはどんなときですか?

「この人とまた一緒に仕事をしたい」と思っていただいたときですね。それを言葉にしていただくとやはりすごくうれしいです。ご縁が続いて同じチームでのお仕事に入ったとき、「お久しぶりです」と現場で言える環境も、とても幸せだなと感じています。そうした一つひとつのご縁がしっかりとつながっていくことが、自分にとっての充実感や達成感になっていて。新しい出会いが増え、ご縁がさらに広がること、そういったすべてが大きな充実感になっています。

――舞台と映像とのバランスなど、今後の目標について教えてください。

今、ありがたいことに舞台も映像も出させていただいていますが、どちらかに絞るということは、絶対したくないなと思っています。どちらも本当に好きですし、舞台には舞台ならではの良さがあって、映像には映像にしかない魅力が必ずあります。だからこそ、どちらの場でも“自分”をしっかり表現できる俳優でいられたらいいなと思っています。

阪急阪神不動産presents
『エリザベートTAKARAZUKA30th スペシャル・ガラ・コンサート』

東京公演/2026年2月6日(金)~2月20日(金) 東京国際フォーラム ホールC
大阪公演/2026年2月28日(土)~3月15日(日)  梅田芸術劇場メインホール
愛知公演/2026年3月23日(月)~3月25日(水) 御園座

脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ 
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
構成・演出・訳詞:小池修一郎
演出:中村一徳
出演: 一路真輝、麻路さき、高嶺ふぶき、稔幸、香寿たつき、えまおゆう、姿月あさと、和央ようか、湖月わたる、月影瞳、彩輝なお、朝海ひかる、大空ゆうひ、瀬奈じゅん、水夏希、大鳥れい、霧矢大夢、音月桂、北翔海莉、白羽ゆり、凰稀かなめ、夢咲ねね、望海風斗、明日海りお、真風涼帆、珠城りょう、柚香光、美園さくら、星風まどか、初風緑、彩吹真央、愛月ひかる ほか
特別出演/美穂圭子・悠真倫・小桜ほのか(宝塚歌劇団)

公演HP https://www.umegei.com/elisabethgala30/

 

 

 

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