「ずっと吸収して挑戦しつづける人でありたい」
――初演はご覧になりましたか?
劇場に観に行きました! アニメや映画も観ていたんですけど、いくちゃん(生田絵梨花)が演じるかをちゃん(宮園かをり)は無邪気で天真爛漫でしかも儚くて、そんな要素を兼ね備えられるんだってすごく強く印象に残っています。だからオーディションのお話を頂いた時には、受けてみたい!と思いました。私はこれまで生命力のあふれる役が多かったので、その経験も活かしつつ、新しい挑戦ができるかなと思いました。
オーディションはかをちゃんと椿ちゃん(澤部椿)をどっちも受けたんです。かをちゃんの歌は塩田先生(音楽監督・指揮:塩田明弘)に「落ち着いちゃってるね」って言われました。「若い時を思い出して、キラキラした高校生の役だよ」って(笑)。ちょうどその頃やっていた舞台が太い声で歌っていることが多かったんですよ。「声が重い」と言われて、レクチャーを受けて。
――でもかをちゃん役に決まったんですね。加藤さんの中にかをちゃんのカケラを…。
見つけていただくことができました。この間レコーディングをしたのですが、「だんだんかをちゃんの声になってきたね」と言っていただきました。
――今(取材は6月中旬)はどんな準備をされていますか?
ちょっとだけヴァイオリンに触っています。ヴァイオリンは『CROSS ROAD』の時に持ち方や弾き方を少しだけ教えてもらったことがあるんですが、ほぼ未経験で楽器も持っていなかったんです。でもプロデューサーさんが別の作品の千穐楽の日に楽屋に顔を出してくださって「持ってきたよ」って。それをお借りして、YouTubeを見ながら練習しています。清水美依紗ちゃんがヴァイオリンを弾けるんですけど、この間私が練習している動画を見せたら「センスあるよ。耳がいいから音程を合わせられるんだね」って褒めてくれたので、その言葉を信じて頑張ってます。
もちろん音はオケの方が出してくださるんですけど、ちゃんと弾いているように見せたい。いくちゃんの演奏シーンが素敵だったんですよ。だから私もちゃんとその曲らしく弦を押さえたり弓を動かしたりして演じたいと思って頑張っています。やることがたくさんありますね。これから歌稽古が始まりますし(※取材時は歌稽古前)。
――歌稽古ではどんなことをされるのでしょうか。
立ち稽古が始まる前に歌稽古をすることで、その歌に慣れておくことができて、立ち稽古がスムーズに進められますし、自分の苦手な部分が見つかって早めに練習できたり、この役で歌うならこういう声の出し方がいい、というのも発見できる。私はあまり確固たる自分の歌い方というものがなくて、この役として歌うためにこのサウンドを出したいと思うタイプなので、そのための準備期間だと思います。
かをちゃんの歌は音の幅が広くて動きもあるので軽やかさを大切にしていきたいです。でも公生に自分の思いをしっかりとぶつけるという面もあるから、軽やかさの中に芯が通っている歌が歌えたらと思っています。
――加藤さんはもともと歌うことが好きでしたか?
大好きでした。でもうまくはなかったです。声がハスキーで、幼い頃は高い声が出なかったんです。中学生の頃くらいで声変わりが来て、だんだん声が安定してきました。10代後半から20代前半くらいまでは揺らいでいた時期もあったんですが、声変わり後にだんだん声が高くなってきて、自分という楽器の扱い方にも習熟してきた感じです。
でも、ミュージカルをやっていきたいと思った時に今のボイストレーニングの先生に出会っていなかったら、今のようには歌えていなかったと思います。先生が私の声帯と向き合ってくださって、どうしたらこの子は声が出るんだろうと考えてくださった。そのおかげでようやく高音も歌えるようになりました。まさか『レ・ミゼラブル』のコゼットの声が出せるようになるとは想像してなかったです。
――そうやって磨き上げた歌声で、この8月に宮園かをり役を演じられます。かをりは公生を振り回しつつ、音楽の世界に連れ戻そうとしますが、どうしてそんなに一生懸命なんだろうと思いますか?
公生は自分の人生を変えてくれた人で、あの人と一緒に音楽をやるんだと心に決めて走ってきたのに、出会ったらやめていた。え?なんで?ってショックで、それで(彼女にとって)残された時間を使ったんじゃないかな。公生は本当にやめたいのかもしれない。なのにかをちゃんは勝手に引っ掻き回していくじゃないですか。実際にいたらとんでもない子だなと思うんですけど、時間が限られているからこその行動だし、それが公生の視界を色づかせていく、公生を動かしていく力になるんだと思います。
もともとかをちゃんはすごく地味な子だったんですよね。でも公生を動かすために変わっていく。ものすごく覚悟を持って近づいた。一歩踏みだす怖さを知っている上で踏みだした。そんなかをちゃんが内に秘めているもの、相手には伝えないけど抱えているものを、しっかり持った上で演じないとただの迷惑な子に見えてしまうので、そのバックボーンを大切に積み上げて演じたいです。
――ご自分にかをりに似たところはありますか?
人を振り回すという面では、自分が思っている以上に振り回してるかもしれません(笑)。最近、「梨里香はリリちゃんワールドがあるから」とか「自分の世界の中で生きてる」って言われることが多くて、自分ではよくわからないのですが、我が道を行ってるみたいです(笑)。でもあんまり自分から人に積極的に関わることはないかな。去る者追わずで、良く言えば相手の判断を尊重するタイプなので。
――加藤さんの”我が道”の先の目標は?
柔軟さを大事にしていきたいです。お芝居が好きなので、ずっと吸収して挑戦しつづける人でありたい。あまり気乗りしないこともまずやってみる。そういう姿勢を大事にしたいです。
お仕事の目標としては、タップが好きなのでタップミュージカルで主演したい。それと、同年代で踊れる人が本当にたくさんいるので、歌だけじゃなく、ダンスもお芝居も歌も全部の魅力を兼ね備えた作品をみんなで作れたらいいなと思っています。
プライベートでは自分で運転して遠出したい。動物園や植物園、ネモフィラ畑とか行ってみたいです。あと、自分がリラックスできる方法を今年中に見つけたいなと思っています。いかに素早くリラックスできるかというのが大事なんだって気がついたんですよ。だから自分の部屋をリラックス空間にすることが、今の目標です。
ミュージカル『四月は君の嘘』
東京公演 2025/8/23(土)~2025/9/5(金) 昭和女子大学瞳記念講堂
愛知公演 2025/9/12(金)~14(日) Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール
大阪公演 2025/9/19(金)~20(土) 梅田芸術劇場メインホール
富山公演 2025/10/4(土)~5(日) オーバード・ホール 大ホール
神奈川公演 2025/10/12(日)~13(月祝) 厚木市文化会館 大ホール
原作:新川直司(講談社「月刊少年マガジン」)
脚本:坂口理子
作詞・作曲:フランク・ワイルドホーン
作詞:トレイシー・ミラー/カーリー・ロビン・グリーン
編曲:ジェイソン・ハウランド
訳詞・演出:上田一豪
出演:岡宮来夢/東島 京(Wキャスト)
加藤梨里香/宮本佳林(Wキャスト)
希水しお/山本咲希(Wキャスト)
吉原雅斗/島 太星(Wキャスト)
ほか
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