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ミュージカル『ある男』製作発表会見 浦井健治・小池徹平らが世界初演への熱き想いを語る

2025年8月、東京建物 Brillia HALLで幕を開けるミュージカル『ある男』。原作は平野啓一郎の同名小説で、映画化も話題を呼んだこの傑作が、ついに世界初のオリジナルミュージカルとして生まれ変わります。5月1日に開催された製作発表会見には、主演の浦井健治さん・小池徹平さんをはじめ、濱田めぐみさん、ソニンさん、上原理生さん、上川一哉さん、知念里奈さん、鹿賀丈史さん、脚本・演出の瀬戸山美咲さん、そして原作者の平野啓一郎さんが登壇。250名の一般オーディエンスと報道陣を前に、それぞれが作品への想いを語りました。登壇者全員のコメントを紹介しながら、その熱気と期待に満ちた会見の模様をレポートします。(撮影/増田慶)

原作者・平野啓一郎「自分の思想が最も凝縮された作品」

冒頭、原作者の平野啓一郎さんがマイクを握る。
「この度は私の拙作『ある男』が、これほど素晴らしい制作陣と役者のみなさまの手によってミュージカル化されることを大変光栄に思っています。『ある男』は、僕の思想やものの考え方が最も凝縮されている作品の一つです。映画化までは想像できましたが、ミュージカル化はまったく予想していませんでした。ですが、制作陣のみなさんの“原作のコアにある価値観をミュージカルで表現したい”という真摯な思いに打たれました。今日お越しくださった皆さまは熱心なミュージカルファンだと思いますが、きっとご期待に沿う、あるいはご期待以上の作品になると僕も期待しています」

続いて、脚本・演出を手がける瀬戸山美咲さんが、創作過程の苦心と音楽への信頼について話した。
「これまで翻訳ミュージカルの台本は何度か担当しましたが、小説からミュージカルという形は初めてです。最初はストレートプレイの感覚で書き始めたのですが、“ここは歌で伝えたほうがより深く入る”と感じる場面が多く、ワークショップを重ねる中で脚本も楽曲も大きく変わりました。人間の感情が動く瞬間こそが歌うポイント。言葉だけでは表現しきれないジャンプできる部分がたくさんあるので、音楽の力を信じて台本を書いています。複雑な社会の中でどう生きるか、そのヒントがこの物語にはある。観た方にとって救いになるような作品を目指したいと思っています」

浦井健治「家族のようなカンパニーで創作の豊かさを実感」

弁護士・城戸章良役の浦井健治さんは、創作の現場で感じる手応えと、作品への覚悟をこう語る。
「原作にリスペクトを持ち、この座組だからこそできる表現を目指していきたいです。演劇は“時代を映す鏡”であり、今の時代に必要なものを描き、未来へつなげていくもの。心が動く時も動かない時も、楽曲で表現し、そうした境遇で生き抜いた人物たちを体現できるように精進したいと思います」。

“ある男”X役の小池徹平さんは、「最初にお話をいただいたとき、“あの『ある男』がミュージカルに?”と驚きました。絶対に信頼できるチームで、ワクワクが強いです。浦井さんと『デスノート THE MUSICAL』以来の共演というのも大きな喜び。本当の幸せとは何なのか、自分という人間がどんなものなのか、皆さんの心に何か一つ突き刺さるテーマがあると思います。ぜひ劇場で体感していただきたいです」と、ミュージカル化への驚きと、観客へのメッセージを熱く語った。

後藤美涼役の濱田めぐみさんは、作品のテーマ性と自身の役どころについて、
「『ある男』は、人が生きるうえで避けて通れない“自分とは何か”という問いを投げかけてくる作品です。私が演じる美涼も、夫を失い、その正体を追う中で自分自身と向き合っていきます。観てくださる方々にも、“生きる”ことの意味を改めて見つめ直していただけるような舞台になればと思います」と語った。

谷口里枝役のソニンさんは、家族の意味と役への思いを語ってくれた。
「私が演じる里枝は、Xの過去を知る重要な役どころです。家族とは何か、血のつながりだけではない“絆”についても深く考えさせられる役。観客の皆さんにも、家族の在り方について何か感じていただけたら嬉しいです」。

谷口恭一役の上原理生さんは、「国籍や名前、何をもってその人を推し量るのか、すごく突きつけられる作品です。人間ドラマや社会ドラマが緻密に描かれていて、率直にとても面白いと思いました。日本の原作でオリジナルミュージカルを上演する、その初演に呼んでいただき光栄です。皆さまのご期待をいい意味で裏切るような作品にしたいです」と、原作を読んだ衝撃と舞台化への意気込みについて語った。

谷口大祐役の上川一哉さんは、若手キャストとしての決意を表明。「今を生きる我々にとって大きな問いかけがある作品だと感じました。その問いかけを丁寧に考えながら答えを見つけていけたらと思います。このメンバーの中で僕と理生君が一番年下なので、お兄さまお姉さま方に甘えながら精一杯頑張りたいです」。

城戸香織役の知念里奈さんは、「香織は城戸の妻として、彼を支えながら物語を見守る存在です。家族の中で生まれる葛藤や、夫婦の絆についても丁寧に演じたいと思います。観てくださる方々にも、家族やパートナーとの関係を考えるきっかけになれば嬉しいです」と作品への思いを語った。さらに、「実の夫(井上芳雄)が浦井くんとすごく仲良くさせていただいているので、浦井くんの妻役をやると伝えたときはちょっと複雑そうな顔をしていて(笑)。私も気まずいなと感じたのですが、今日こうして素敵な皆さんとお会いして、そんなことは気にせずにしっかり役目を果たそう!と思いました」と話すと、ミュージカルファンでいっぱいの会場がドッと湧く場面も。

小見浦憲男/小菅役の鹿賀丈史さんは、今回は二役に挑戦する。「小見浦憲男という犯罪者と、小菅というボクシングジムの会長の2役を演じます。どちらもXの正体を探る中でのキーパーソンですが、まったくの別人。小見浦は得体の知れない男で、虚実が同時に存在しているような、何が嘘で何が事実か分からない人物です。それを表現する楽曲があるのですが、これは手ごわいなと今から思っています。面白おかしく、不気味な男を演じられればと思います」と意気込みを語った。

圧巻のデュエット初披露「暗闇の中へ」

会見では、浦井健治さんと小池徹平さんによる一幕ラストのデュエットナンバー「暗闇の中へ」が初披露された。浦井さんはXの謎に迫る城戸をエネルギッシュに、小池さんはXの秘めた想いを噛み締めるように歌い上げ、会場は大きな拍手に包まれた。

会見後半の質疑応答では、キャスト陣が“ゼロから立ち上げる”オリジナルミュージカルへの想いを語った。
浦井健治さん:
「徹平くんとは10年前の『デスノート THE MUSICAL』以来の共演。お互いに成長してきた今、また一緒に舞台を作れるのは本当に嬉しい。ゼロから積み上げる現場は大変だけど、その分やりがいも大きいです」。
小池徹平さん:
「健ちゃんと共演するとき、(自身は)アルファベットの役名が続くなって。『デスノート』のときは“L”で、今回は“X”と呼ばれる役。これも何かの縁かな(笑)。健ちゃんとの共演は、僕にとっても特別なもの。信頼できる仲間と一緒に、世界に向けて発信できる作品を作りたいと思います」。
濱田めぐみさん:
「美涼として、夫の死と向き合いながらも強く生きる女性を演じます。観客の皆さんにも、それぞれの“ある男”を見つけてほしいです」。
ソニンさん:
「家族の形は一つじゃない。Xの過去を知る里枝として、観る人の心に何か残せるように演じたいです」。
上原理生さん:
「原作の持つ社会性や人間の本質を、音楽と芝居でどう表現できるか、挑戦したい」。
上川一哉さん:
「若手として、この座組からたくさん学びながら、全力で演じます」。
知念里奈さん:
「香織は物語の“静かな支え”。舞台上でも、家族を見守る温かさを大切にしたいと思います」。
鹿賀丈史さん:
「二役を演じるのは難しいけれど、役の“闇”や“謎”を楽しみながら演じたい」。
瀬戸山美咲さん:
「ワークショップを重ねる中で、キャストの皆さんの力強い表現に何度も驚かされました。音楽と芝居が一体となった“体感型”ミュージカルにしたいです」。

最後に、浦井さんはこう締めくくった。
「家族のようなカンパニーで、創作の豊かさを実感しています。ぜひ劇場でこの体感できる作品を味わってください」。
原作の持つ“問い”とミュージカルの力強い表現が交差する『ある男』。この夏、観客は“自分とは何か”という根源的なテーマと向き合うことになるだろう。

ミュージカル『ある男』は8月4日~17日東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)、23・24日広島・広島文化学園HBGホール、30・31日愛知・東海市芸術劇場 大ホール、9月6・7日福岡・福岡市民ホール 大ホール、12日~15日ま大阪・SkyシアターMBSで行われる。

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