演出の小池修一郎さんと「“演者だけ”とは違う新たな関わりが楽しい」
――稽古が始まり、原作者の雲田はるこ先生も稽古場へいらっしゃったそうですが、何かお話をされましたか?
はい。まだ本読みの段階だったのですが、「助六として生きてくださってありがとうございます」というようなお言葉をいただき、すごくうれしかったですね。
――山崎さんは7年前に『昭和元禄落語心中』のドラマに出演され、今回のミュージカル化には企画から携わられていますね。この舞台にかける想いをまずお聞かせください。
僕はこの作品が大好きで、7年前にドラマの撮影をしながら、直感なのですが「ミュージカルに向いているんじゃないか」と思っていました。それとは別に、同じ事務所で同世代である古川雄大と明日海りおさんと3人で何か作品をつくろうよ、という話があり、3人を軸にストーリーが進んでいくのであれば、「『昭和元禄落語心中』しかない!」とご提案したのがきっかけです。
――長年ミュージカル化を温めていた作品だったのですね。
12歳からミュージカルの世界に入り、29歳までミュージカルをメインに仕事をするなかで、『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『エリザベート』『モーツァルト!』という海外の作品に出演し、自分の夢がひとつ達成できたところがあって。次のステップとして、いつか世界で上演されるような、日本生まれのオリジナルミュージカルをつくりたい、という想いがあり、ずっといい題材はないかと考えていました。
――落語とミュージカル、ジャンルの違うものを組み合わせるという、かつてないようなミュージカルになりそうです。
そうですね。ドラマのとき師匠のところに通い、9演目の古典落語を所作も含めて勉強させていただきました。1演目、台本にして20ページぐらいあったので、いろいろな映像作品を経験したなかでも苦しかったのですが、落語の勉強を続けていくうち、「これは歌だ。音楽と一緒だ」と気づいて。歌は川の流れのように、ずーっと細い糸が切れないように音楽が繋がっていくのですが、その感覚と同じく、落語を喋り出すと音楽が鳴り、語りながら歌うような、むしろ歌っているような気持ちになり、音楽と落語の親和性を感じました。だから落語から歌へ導入しても、自然にお客様に伝えられるイメージが湧いたんです。
もちろんこの作品中ずっと落語をやるわけではなく、ストーリーの中に落語シーンが織り交ぜられます。落語をきちんと見せる場面もあれば、落語から歌へ導入していくミュージカル的な部分もあり、それらがうまくひとつになり、皆さんにいい形で届けられると信じています。
――台本を読ませていただきましたが、歌詞がまた素敵ですね。これにどんな音楽が乗るのだろうとワクワクしました。
音楽、素敵ですよ! (作曲・音楽監督の)小澤時史さんの楽曲が僕は好きで、音楽監督として『ファインディング・ネバーランド』でもご一緒したのですが、お芝居から音楽への導入や、芝居を音に乗せることにすごく長けている方なんです。スーッと身体と耳に入ってくるメロディーラインで、今回の音楽も「きたー!」というぐらい魅力的。ドラマティックに作品が繋がると思います。
――やはり和の音楽の要素も入ってくるのでしょうか?
すべての楽曲ではないですが、楽器やフレーズなどに和を感じます。ほかにも軽やかな曲からバラード、壮大な曲、子ども時代の助六と菊比古(八雲)の掛け合いみたいな可愛い曲まであり、かなりの曲数が登場します。
――小池修一郎さんに演出を、というのも山崎さんがご希望されたのですか?
はい。小池先生とは『エリザベート』『モーツァルト!』などでご一緒させていただきましたが、フェスティバルホールのような大ホールでも、2階・3階席の一番後ろのお客様まで、誰ひとり置いていかないというのが先生のポリシーだと思っています。
実はこの作品をミュージカルにすると言うと、『昭和元禄――』のドラマチームからも「どうやってやるの!?」と驚かれました。3人が織りなす繊細なストーリーを、2千を超すホールで成立させるのは僕も課題だと思っていたのですが、それをクリアできるのは小池先生しかいない!と思いお願いしました。物語に抑揚をつけ、華やかなシーンも盛り込み、すべてのお客様に伝わる世界観を構築してくださっています。
――稽古場では小池さんとどのようなお話をされているのでしょうか。
僕が企画から参加していることもあり、台本の話や、「このシーンはこういう風に見せたい」などお伝えして、一緒につくっている感覚があります。小池先生はそれを柔軟に受け止めてくださって、今までの“演者だけ”とはまた違う新たな関わりがあり、すごく楽しいですね。
(次ページへ続く)
1
2