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Stage INTERVIEW

『イリュージョニスト』に再び挑む海宝直人。「“表現”は永遠に完成するものではない」

ミュージカル『タイタニック』『グランドホテル』などを手掛けてきた演出家トム・サザーランド氏をはじめ、海外の一流クリエイターと実力あるキャストが集結し、日本で誕生したミュージカル『イリュージョニスト』。2021年にコンサートバージョンで行われた本作が、待望のフルバージョンで3月~4月に上演される。主役のイリュージョニスト・アイゼンハイムを演じる海宝直人さんに、作品への想いや、デビュー30周年を迎える心境などを伺った。(取材・文・撮影/小野寺亜紀)

「少年の心をずっと持ち続けているような人物」

――4年越しのフルバージョン上演に向けて、今のお気持ちからお聞かせください。

とても楽しみです。4年前は「果たしてお客様に届けられるのだろうか」という不安のなか、みんなで初日直前まで一致団結して舞台を創っていったので、今までにない集中力や、火事場の馬鹿力みたいな感覚を味わいました。

――お稽古の段階から、新型コロナウイルス感染症の影響を受けられたのですよね

海外のクリエイターチームはロンドンからリモートで参加していたり、稽古がストップすることもあり、という状況で、それだとミザンスもなかなかつくれない。「イリュージョンを含めたフルバージョンでの上演は不可能」となり、それでも「作品は届けたい!」という思いが皆さん本当に強かったので、いろいろな案を探っていきました。演出をそぎ落としてやるのか、歌だけにするのか、リーディングのような形でキャストが並んで演じるのか……。劇場に入ってからも調整を重ね、最終的にコンサートバージョンでお届けしました。結果的により演劇的な形になったと思います。

――資料映像を拝見しましたが、座って朗読するのでもなく、歌を歌うだけでもない、想像力をかきたてるようなドラマティックな演出でした。演出のトム・サザーランドさんの印象は?

とてもクレバーで洞察力のある方です。前回の稽古のとき、アイゼンハイム(海宝)とソフィ(愛希れいか)が会話するシーンで、最初に「動きは決めないからとにかくやってみて」と言われて演じてみると、「今の感覚を大事に」と、役者の感情を導くような進め方をされて、素晴らしいなと思いました。ただ、初日ギリギリまで演出を変更されるので、「この状況でも!?」と驚きましたが、作品が良くなるのは分かっているので、そこは役者たちみんなも頑張りました(笑)。

2021年コンサートバージョンより 撮影:岡千里

――初演のメインキャストが再集結し、間もなくお稽古が始まるようですね(※取材は12月後半)。

イリュージョンの仕掛けもあるので、普段より早めに、年明けから稽古が始まります。今回は余裕のあるスケジュールで、いちからフルバージョンをクリエイトできるので、ひとりで役を作っていくというより、トムさんをはじめ皆さんと一緒に、という想いが強いです。人物が複雑に絡み合う作品なので、役同士の関係性を前回よりも、もっともっと深めていけたらと思っています。

――演じられるアイゼンハイムは、どのような人物と捉えていますか?

内面に熱いもの、ある種少年の心をずっと持ち続けている人物です。幼少期にソフィと出会い、身分違いの恋をしたものの引き離され、ずっとその想いを胸に秘めながら、イリュージョニストとしての腕を磨き続けてきた。完璧主義で、自分のイリュージョンを必ず成功させたい、ソフィともう一度一緒になりたいと願っています。でも、舞台が始まる前はナーバスになり、「うまくいくんだろうか」と緊張している、人間らしいキャラクターでもあります。

――海宝さんも舞台に立つ前は緊張しますか?

すごく緊張します。やっぱり表現者は裏でとても緊張しているけれど、舞台上ではそれを見せないですよね。舞台に立つ瞬間の変化って、役者の方は多く経験されていると思います。でも、アイゼンハイムは「エンターテイナーとして、緊張するなんて信じられない」と思っているところもあり、作品のなかで彼の二面性をきちんと見せられたらと思います。

――ちなみに海宝さんがこれまで出演された舞台で、一番緊張した作品は?

基本的にいつも緊張しているのですが、「うわ、どうしよう!」と思ったのは、『ディズニー・ブロードウェイ・ヒッツ』です。日本人では僕だけがゲストで、あとはこのカンパニーの方ばかり。僕は途中から入らせていただいたのですが、お一人おひとりのスキルやチームワークが素晴らしいわけですよ! 舞台上の音声を聞いているだけで、出るのがどんどん怖くなり、「自分でいいんだろうか」と吐きそうなぐらい緊張しました(苦笑)。

――そんなご経験が! 舞台に立つと、逆に落ち着かれたりするのでしょうか?

そうですね。自分の中では役に入ることがきっかけとしてひとつ大きいので、コンサートのほうが緊張感をひきずるかもしれないです。そういう意味でも、舞台には“マジック”があるのかなと思います。

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