宝塚歌劇団を退団後も、その歩みは止まることなく、『SPY×FAMILY』、ロンドン公演『SIX』など、作品ごとにまったく異なる顔を舞台に刻んできた和希さん。そして今、あらためて挑む“ドラマティックな世界”『ジキル&ハイド』への思いと、これまで、そしてこれからについて話を聞いた。
(取材・文:小柳照久 撮影:齋藤ジン ヘアメイク:遊佐こころ スタイリスト:村田佳保里 ネックレス、ブレスレット/グロッセ・ジャパン)
「振り切った私も、楽しんでほしい」
「これまでいろいろな役を選んできた中で、意外と出会ってこなかったタイプの役でもありますし、一観客として観たときに“すごく魅力的な役だな”と思っていたので、いつか挑戦してみたいという気持ちはありました。だから、素直に“嬉しい”という気持ちでした。光の差さない人生の中でジキルに出会い、愛や希望を見つけていく。その人生が短い時間にぎゅっと凝縮されている役だと思います」
宝塚時代から、どこか影を抱えた役や、振り切った人物を演じてきた和希さん。
「そういう意味では、ルーシーと出会うのは自然な流れだったのかもしれません」
歌は「感情が正直に出るもの」
『ジキル&ハイド』といえば、フランク・ワイルドホーンの名曲の数々が印象的だ。
「本当に大曲ばかりで、正直大変です(笑)でも、ワイルドホーンさんの曲は、感情が一番ストレートに音に出る気がするんですよね。何よりも心を大切にしたい。“綺麗に歌おう”というより、ルーシーの感情から離れないことを大事にしたいです。
最初のナンバーはショーアップされていますが、ルーシー本人にとっては“ただの毎日”。生きるためにやっているだけなんですよね。その日常が、どう変わっていくのか――そこをどう表現できるか楽しみです」

退団後は、役ごとに“声”まで違う
和希さんの宝塚退団後の出演作は、役柄の振れ幅が大きいだけでなく、発声や歌い方そのものも作品ごとに大きく異なる。取材時は稽古前だったが、普段の稽古までの準備について聞くと、こう答えてくれた。
「特別なことはしていないと思います。台本を読んで、歌う曲をしっかりボイトレで作っていく。役によって発声も全然違うので、その都度一からです。今回もボイトレの先生に必死に食らいついてやっています」
今回のルーシー役は真彩希帆さんとのダブルキャストだが、その点について聞いてみると――。
「真彩希帆ちゃんとは役者として持っているカラーもまた違うので、きっとそれぞれのルーシー像があると思います。お稽古ご一緒できるのも今から楽しみですし、私は今回この役に初めて挑戦するので、自分の中で“役としてこう存在したい”という軸をはっきり持って役を作っていきたいですね。自分がどんなルーシーを演じるのか、自分でも楽しみです。」
宝塚を退団後も、舞台はどれも楽しくて
宝塚退団後、『9 to 5』を皮切りに、クセが強く、難易度の高い役を次々と演じてきた和希さん。
「どの役も違いすぎて、“これが一番大変だった”という感覚はあまりないんです。どれも楽しくて、気づいたら必死にやっている感じでした。
『SPY×FAMILY』出演時には、“もしこの人物が実在したら、どう生きているんだろう”と考えて、そのリアルさを大切にしていました。原作もアニメも有名なので、“演者を知らない状態”で観たときに残念な思いをさせたくなかったんです。“和希そら出てたの!?”と言われるくらい、役として舞台に生きられていたなら、すごく嬉しいなと思いますね」
一方で、こんな本音も。
「宝塚と違って退団後の舞台にはショーがない分、なかなか思いきり踊る機会がなくて。だからこそ、“踊れる舞台”にもご縁があればと思っています」

日本版の前に、ロンドンで『SIX』を観劇
日本版『SIX』出演前、和希さんはすでにロンドンで本場の舞台を観ていた。そして客席の熱量、反応の大きさに圧倒されたという。
「本国の空気を知りたくて、ロンドンへ観に行ったんです。SIXの作品やキャラクターへの熱狂的なファンの方々がたくさんいらして、とんでもない盛り上がりでした。推しのキャラクターの扮装をしている人もたくさんいて、本当に愛されている作品なんだなと感じましたね。」
日本公演では、予想外の一体感を感じられたという和希さん
「日本のお客様って、もう少し静かに観てくださるイメージがあったんです。ところが幕が開くとノリノリで、ヒューヒュー歓声で盛り上げてくださって(笑)。それが本当に嬉しかったです。その温度感と一体感は、強く心に残る経験となりました。
その後、日本人キャストのロンドンでの公演にまで足を運んでくださったお客様もたくさんいらして、遠い場所なのに、そこまでして来てくださったことが、本当に嬉しかったです」
ロンドン公演『SIX』の舞台や映像を観たファンの間では、和希さんの大胆なのけ反り歌唱が話題になった。「あれ、アドリブ!?」「体幹どうなってるの!?」とざわついたあのシーンについて伺うと――。
「アドリブじゃないです。ちゃんと振付です(笑)。でも、楽しんでいただけていたなら嬉しいですね。向こうの演出や振付は、 “ここまでやるんだ!”っていうのが多くて。見せ方もすごく大胆なんですよね」
海外の舞台ならではのダイナミックさは、確実に今の和希さんの引き出しになっている。

自分の中にもある「ジキル&ハイド」
「ジキル&ハイド」にちなんで、自身の二重人格の部分についての質問にはこう答えた和希さん。
「わりと素のまま生きているので難しいですね。んー、たとえば、楽屋とか稽古場に、余計なものは持って行かない。出来るだけ物は少なく最小限。すごく整理整頓しています。いつでもすぐに出られるように(笑)。自宅もなるべく物を少なくしているんですが、ちょっと違いますね。多少散らかっても、あーめんどくさいな、まぁいっかという状態はやっぱりありますね。オンオフはかなりはっきりしていて、家ではぼーっとごろごろしています(笑)。」
これからのこと、そしてルーシーへ
最後に全国ツアーを控えている『ジキル&ハイド』 への意気込みを語ってもらった。
「今回、久しぶりに、少し重厚な世界観の作品です。何度も再演されてきた名作の新演出版です。 “この人間模様はどうなっていくんだろう”とワクワクしながら観ていただけたらと思います。私、ドラマティックな作品がすごく好きなので、ルーシーは本当に楽しみにしています。
そして、体調管理に気をつけながら、でも、あまり神経質になりすぎず、、みなさんも心元気に過ごして劇場に来てもらえたら嬉しいです。今回の“私”も、ぜひ楽しんでください」
ロンドンで感じた世界の熱、日本で受け取った客席の一体感、そして“今の自分”をまるごと抱えて挑む『ジキル&ハイド』。
今の「和希そら」を、ぜひ劇場で体感してほしい。

ミュージカル『ジキル&ハイド』
東京公演:2026年3月15日(日)~29日(日) 東京国際フォーラムホールC
大阪公演;2026年4月3日(金)~6日(月) 梅田芸術劇場メインホール
福岡公演:2026年4月11日(土)~12日(日) 福岡市民ホール 大ホール
愛知公演:2026年4月18日(土)~19日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
山形公演:2026年4月25日(土)~26日(日) やまぎん県民ホール
【スタッフ】
原作:R.L.スティーヴンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:髙平哲郎
【キャスト】
柿澤勇人/佐藤隆紀(LE VELVETS)(Wキャスト)
真彩希帆/和希そら(Wキャスト) Dream Ami/唯月ふうか(Wキャスト)
竪山隼太 章平 佐藤 誓 栗原英雄 他
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