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Stage INTERVIEW

『フランケンシュタイン』に3度目の挑戦。中川晃教「僕にとってミュージカルは特別なもの」

耳に残るパワフルでメロディアスな音楽、ゴシックロマンの名著をユニークな作劇と多様なキャラクターで立体化した演劇的要素など、人々を惹きつけて離さない韓国発の傑作ミュージカル『フランケンシュタイン』。2025年、新キャストも迎えて5年ぶり3度目の上演を果たす。生命創造の研究に没頭する天才科学者ビクター・フランケンシュタインと、悪党のジャックを初演から卓越した歌声や芝居心で演じてきた中川晃教さんに、役の奥深さや音楽の魅力、“ミュージカル”への想いなどを伺った。(取材・文・撮影/小野寺亜紀)

「タフさや強さをビクター・フランケンシュタインから感じる」

――中川さんは本作に初演を含め3度目の出演となります。今回役を演じるうえで、特に大切にしたいことを教えてください。

役所広司さんが主演された映画『PERFECT DAYS』ではないですけど、何気ない日常にもドラマがあるように、死体を蘇らせようとするビクター・フランケンシュタイン博士の日常にも、日々のドラマがあると思います。その一つひとつを自分の目や感覚でどう捉えるか――5年ぶりの上演では、そこを大事にしたいと思っています。

――ビクターやこの作品からは、理想を追求するあまり、大切なものを失う悲しさなども感じるのですが、中川さんはいかがですか?

ビクターにも悲しみはあるのだろうけど、あまりそういう感情に左右されない使命感や意志を持っている人間のような気がします。子どものころからずっと、人体実験に繋がるようなことをやっていて、物語のなかでは愛犬を蘇らせようとすることも描かれています。普通ではない感覚だけれど、亡くなったものともう一度会いたいと思うのは人間の性(サガ)。人は心の中に、亡くなった人やペットの面影は残っていると思いますが、もし僕が科学者だったらどうするだろう、とすごく考えます。

――ビクターを演じ続けてきた中川さんだからこその想像力ですね。

例えば僕が医者だったら、どうすれば人のためになれるだろうと考えるように、エンターテインメントの仕事に携わっていて、僕に何かできることはないか、とやっぱり考えます。自分のその精神と、繋がっているのかもしれません。彼の身に起こる出来事は、受け止めるにはあまりにもつらいことがたくさんある。でもそこで立ち止まっているわけにはいかないわけで、タフさや強さをビクターから感じます。

――ビクター・フランケンシュタイン以外に、人間同士を格闘させるギャンブル闘技場を営む悪党・ジャックも演じられます。メインキャストがそれぞれ、二役を演じる劇構造がおもしろいですね。

この作品の見どころでもありますよね。二役を演じることで、“人間とは何か”というテーマが掘り下げやすいようにつくられています。

――中川さんが演じるビクターとジャックは、新たに出演される小林亮太さんとのダブルキャスト。ビクターの親友アンリ・デュプレと、ビクターが創造した怪物の二役は、初演から続投の加藤和樹さんと、新参加の島太星さんとのダブルキャストとなります

小林さんはストイックで真面目で、自分で言うのもなんですが僕と似ているなと(笑)。島さんは初めて会ったときの印象では怪物っぽさをちょっと感じ、期待値が高まりました。新しい風を吹き込んでくださるのは、僕たちにとってすごく幸せなことです。

――加藤さんとは本作の初演が初共演で、その後もミュージカル『怪人と探偵』などで共演されていますが、中川さんにとってどんな存在ですか?

「バディ」と呼ばせてもらってますけども、相棒というよりもっと心強い存在です! 僕のボケなのかツッコミなのか分からないノリもちゃんと受けてくれて、「アッキーさん、今のはふざけてるんですね」と真に受けては、きちんと言語化してくれる。僕の方が先輩なのに、子犬のように和樹さんの足元をウロチョロして、「もう!」と言われるような、飼い主と犬のような関係性も少しあります(笑)。

でもエンターテインメントの世界に身を置いている者同士、緊張感の中でいつも闘っていることを共有できていて、だからこそじゃれ合ったり、ときにはぶつかるほど真剣に向き合ったりできるんだよね、と思える……そんな会話はしたことないですけど、そういう存在です。

(次ページへつづく)

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