(取材・文・撮影/小野寺亜紀)
「映像と舞台は力のベクトルが違うのが面白いです」
鈴木保奈美さんは1980年~1990年代のトレンディドラマで一世を風靡。子育てのため一時期芸能活動を控えるも、復帰後は俳優仲間とワークショップや観劇を通じて演技の研鑽をする「部活」をスタート。映像だけではなく舞台への興味が増していった。
「20代の頃は私の理解力が追いついてなかったからだと思うのですが、舞台の面白さがわからなかったんですね。40代ぐらいから色々なお芝居を観に行き、ドラマの撮影現場で舞台でも活躍されている方からお話を伺い、『面白そうだな、やってみたい』と思うようになりました」
そんななか、冨坂友さんが主宰する「アガリスクエンターテイメント」の舞台を観て、衝撃を受けたという。「台詞に一切無駄がなく、緻密に計算されていて非常にわかりやすいし、どのキャラクターも個性的かつ魅力的。『なんて面白い舞台を作る人がいるんだろう』と。そしておこがましくも、『もっといろんな人にこの面白い舞台を観てもらいたい。そこに私も出たいな』と思ったんです」。
その後、「部活」メンバーの中田顕史郎さんと、冨坂さんの作品『笑の太字』を渋谷のワインバーで上演したところ大盛況。冨坂さんも「いつか鈴木さんと新作を作りたい」と思ったという。そんな二人はまず2022年のテレビドラマ「生ドラ!東京は24時」の『シンガロング!』で初タッグ。この作品はギャラクシー賞奨励賞を受賞した。
「冨坂さんはドラマや映画、舞台など色々なものを見て熱心に研究されていて、私たち俳優に届けてくれる言葉も非常に的確。生ドラマのリハーサルではその風景を録画し、私たちに後から長文でオーダーを送られてきたのですが、それもわかりやすく面白かったです」
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