総合エンタメ・マガジン[エンタプレス]

登場する家族はパーソナルなところをモチーフに

――新作『汗が目に入っただけ』は、「エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)」と銘打たれています。どんな作品になりそうですか?

冨坂:お葬式コメディなのですが、亡くなった母親と残された家族のハートウォーミングなコメディがひとつ柱にあり、もうひとつの柱に、「どうかしている」上演方法のシステムがある舞台です。お客さんに、楽しめる範囲で混乱してもらえたらいいなと思ってます。

――舞台の途中から、役者の方のカロリー消費量を、装着した機器でリアルタイムに測り、その数値を競うということが、物語と並行して行われると伺いました。

鈴木:とても新しいことに挑戦されるんだなと。素晴らしい!と思いましたし、私も新しいことは大好きなのですが、何度説明を聞いてもよくわからない(苦笑)。

冨坂:なんでそんなことしなきゃいけないのかと!?

鈴木:いえ、やってみたいんですよ。でもどうやったら劇場で成立するんだろうか、ものすごい大変なんじゃないだろうかとか。今はちょっと想像ができない感じです。

――演じる役どころについても教えてください。

鈴木:よくある家庭のお母さんです。急に予期せず亡くなったので、「あら、私幽霊だわ」と、気がついたら幽霊になっていて。自分のお葬式をどうするかで子どもたちがもめている……。こういうもめごとは、日本全国よくあるお話かもしれないですよね。もちろん辛い悲しいお葬式もあると思うんです。ただそこで、家族の本音が見えたり、お葬式の意外と知らないしきたりが出てくるという面白さがあるのでは、と思っています。

――冨坂さんは、なぜこの物語でいこうと思われたのですか。

冨坂:僕はこれまであまり、家族の人情っぽい話をやらずにきてしまってたんです。ただ、以前に「部活」で保奈美さんに僕の家族の話をしたら、エピソードを面白がって聞いてくださったことがあって。

鈴木:面白がって!? いえ、この淡々とした感じで、「うちの家族は変わってるんですよね」みたいに話してくださったんですよ。いい意味で距離感があるというか。

冨坂:そうかもしれないです。客観視しているというか。いつか家族の話、母親の話をやることがあったら、保奈美さんに出演していただけたらと思っていました。でもコメディになる気がしなかったんですよ。だけど、「エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)」というシステムに乗せれば、どれだけ湿っぽかろうが楽しくなるなと思い、この機会にお願いしました。

――では、冨坂さんのご家族像が多少盛り込まれているのですね。

冨坂:はい。子どもたちや元夫、そのあたりの家族構成はわりと我が家ですね。母の職業、幼稚園教諭とかも。

鈴木:幼稚園のシーンは出てこないのですが、バックボーンとしてね。

冨坂:たぶん家族の話は、自分のパーソナルな部分を使うのが、一番普遍的になる気がして。「あるある」だけでいくと、逆に誰にも響かなくなりそうな気がします。自分の経験を入れておけば、少なくともそこにひとつ存在してるので、言い訳にはなる。ただすべて我が家の話だと恥ずかしいし、面白くなかったりするので、少しずつ脚色しています。

――キャラクターは母親のほかに、長男、長女、次男、元夫と、蘭寿とむさんが演じられる幽霊が見える「葬儀社の担当らしき女性」が登場します。

鈴木:蘭寿さんには幽霊が見えるので、私が意思疎通できるのは蘭寿さんだけ(笑)。だから蘭寿さんに一番ドタバタと困っていただくことになると思います。そのうえ、カロリーの仕掛けもあるので、全力で頑張っていきます!

「どんなことも笑いに転換できたら」

――アガリスクエンターテイメントの公演と、鈴木さんが出演される公演は、冨坂さんにとってまた違うものなのでしょうか。

冨坂:そうですね。鈴木保奈美さんという存在が巨大なので、保奈美さんに何をやってもらったら一番楽しいかというところで考えるのはあります。でも、それ以外、作り方は変わりません。企画の大きなアイデアがあり、どういう風にウケるかというところへ、みんなで向かうというだけです。

――昔からこういうシチュエーションコメディがお好きだったのですか?

冨坂:はい。僕は「演劇を作りたい」「物語を書きたい」という前に、まず「コメディを作りたい」という思いが先にあって、この世界に入りました。お話と笑い、その両方ができる楽しい催しを実施するために始めて、今に至るという感じです。文化祭のようなイベントがすごく好きなんですよ。お話とウケ、文化祭の空気感、全部一緒にできるのがコメディの舞台だと思っています。

――なるほど。鈴木さんは『レイディマクベス』など、近年もいろいろな舞台に出演されていますね。

鈴木:お客様を意識するというのが舞台は一番強いです。映像だとどうしても自分の芝居のタイミングと、時差ができてしまう。でもその時差が面白いこともあります。舞台は目の前でお客様が観てくださるので、自分にとっては厳しい場ですが、大事な勉強になりますし、「楽しくて嬉しい場」ですね。

――そのなかで、コメディの舞台に立たれて感じることがあれば教えてください。

鈴木:今はつらいニュースや暗い出来事のほうが目につく世の中なので、もっと楽しいことに目を向けたい。どんなことも笑いに転換できたらいいな、ということは思います。

――冨坂さんがコメディで心がけていることは?

冨坂:コメディと銘打っている以上、劇場で笑い声が起きなければ言い訳はできないと思っています。

鈴木:だから本番が始まってからのダメ出しはすごく細かいです! 「昨日はこういう風にウケなかったから、ここはちょっと」と、A4の用紙一枚分ぐらい書かれてあって、微調整がすごいです。

冨坂:初日と千穐楽、どこを観てもらっても楽しんでもらえるのが理想ですが、お客様の前でやってみないとわからないことがありますよね。地域や会場のサイズによっても反応が違ってきたりしますし。

――では毎公演ご覧になっている?

冨坂:そうですね。

――すごいですね! あらためて鈴木さんにとって冨坂さんはどんな存在なのでしょう。

鈴木:家庭教師の先生みたいな感じです。冨坂さんがお書きになって演出されるコメディの舞台が大好きなので、そこに入れてもらって「私、どのくらい面白くできてるでしょうか?」と(笑)。

――おふたりはこれまで何度もご一緒されていますし、この舞台に続き今後もまた――。

鈴木:それはわかりません! そこは厳しいと思います。

冨坂:その緊張感はお互いありますね。

鈴木:はい!

――今日もおふたりの距離感が、どこか一線を引いてらっしゃるような?(笑)

鈴木:それは、こういう感じの方なので!

(一同笑)

冨坂:いや、僕は作家と俳優という距離感は、きちんと保ったほうがいいんだろうなと、日々思っています。

鈴木:それは私もです。ほかのドラマでご一緒する脚本家さんとも、友達のようにはならないほうがいいなと思っています。やっぱり台本上は「作家との勝負」。「このセリフ、言えるのか?」と、突きつけられている感覚があり、なれ合いすぎないほうがいいなと思っています。

冨坂:そうですね、そこは心がけつつ。でも結局はお世話になりまくってるし、甘えまくってるよな、とは思ってます(笑)。

鈴木:(笑)。

エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal(カロリー))
『汗が目に入っただけ』

東京公演/2026年4月3日(金)~4月19日(日) IMM THEATER
広島公演/2026年4月22日(水)・23日(木) 上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
大阪公演/2026年5月2日(土)・3日(日・祝) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
富山公演/2026年5月16日(土)・17日(日) 砺波市文化会館 大ホール
山形公演/2026年5月23日(土)・24日(日) やまぎん県民ホール

脚本・演出:冨坂 友
出演:鈴木保奈美 足立梨花 小越勇輝
   西野創人(コロコロチキチキペッパーズ) 蘭寿とむ 田中要次 ほか

公式サイト https://www.asegameni.jp/

 

 

 

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